
工事担任者は、公衆電気通信回線と利用者の端末設備を接続するために必須となる国家資格です。
通信インフラの構築・保守を担うプロフェッショナルとして、デジタル社会の進展に伴いその重要性はますます高まっています。
これから取得を目指す方や、すでに資格をお持ちの方にとって、仕事の具体的な内容や将来性、そして技術に見合った年収水準は気になるポイントではないでしょうか。
この記事では、工事担任者の役割や取得するメリット、最新の市場動向に基づいた年収の目安を解説します。
他の技術職との比較や、キャリアアップを通じて収入を高める方法についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください
| 職種や資格 |
平均年収 |
備考 |
| ネットワークエンジニア |
433万円 |
|
| 通信工事 |
417万円 |
年収304万円~370万の層が最も多い |
| 電気工事士 |
433万円 |
|
| 技術士 |
455万円 |
|

工事担任者の仕事でできること

工事担任者の資格をお持ちの方は、有線を用いるさまざまな種類の通信仕事に携わることが可能です。
仕事は資格を要するものと、そうでないものに大きく分けられます。
それぞれどのような仕事があるか、確認していきましょう。
工事担任者の資格が必要な仕事
電気通信事業法により、公衆回線(電気通信事業者)のネットワークと利用者の端末設備を接続する工事は、原則として工事担任者の有資格者が自ら行うか、あるいは実地に監督することが法的に義務付けられています。
工事担任者の資格が求められる仕事は、以下に挙げる2つの設備をつなぐ業務です。
- 電気通信事業者により設置された電気通信回線設備
- 利用者が設置した端末設備又は自営電気通信設備
もし不適切な接続工事を行うと、電気通信事業者が運営している設備に悪影響をおよぼし、他の利用者に悪影響をもたらすおそれがあります。
工事担任者は専門的な知識と技術により、技術基準に適合した工事や、工事の監督業務を行える資格です。総務省では工事担任者の役割を、以下の3つに分けて示しています。
- 工事の実施又は実地の監督
- 端末設備の機能確認試験等
- 端末設備等を事業用ネットワークに接続するときの責任分界点における技術基準適合性の確認
工事担任者は法令に基づき通信の品質と安全を担保する重要な役割を担っており、インフラの信頼性を支える国家資格として位置づけられています。
工事担任者の資格までは求められないが、任されやすい仕事
工事担任者は、有線に関する通信工事の資格です。
このため現場では、通信工事に関するさまざまな職務を任されることでしょう。
代表的な業務を、以下に挙げました。
- プラグジャック、アダプタ式ジャック、電波などの方法による端末機器の接続
- オフィス内のLAN配線設置工事
- ルーターから先の部分で接続する機器の設置や設定
上記の仕事も、工事担任者が行える業務に挙げられます。
幅広い仕事ができることに、お気づきの方も多いのではないでしょうか。
工事担任者の資格の種類

本文工事担任者は、2021年(令和3年)の制度改正により現在の名称へ整理され、扱う回線の種類(アナログ・デジタル)や規模によって5つの区分に分けられています。
それぞれの資格で工事・監督ができる範囲が明確に定められているため、自身の業務内容に適した種別を選択することが重要です。
第二級アナログ通信
主に一般住宅などの小規模なアナログ回線工事を行うための資格です。
端末設備に収容される電気通信回線の数が「1」のものに限定されており、電話機1台の接続工事などが該当します。
かつての「AI第三種」に相当し、アナログ通信の基礎的な知識を証明するエントリー向けの区分です。
第一級アナログ通信
アナログ伝送路設備や総合デジタル通信設備(ISDNなど)において、回線数の制限なく接続工事を行える資格です。
第二級の上位資格にあたり、オフィスビルや工場などの大規模なアナログ通信環境の構築・監督を行えます。
旧名称は「AI第一種」で、アナログ関連の高度な技術を要する業務に適しています。
第二級デジタル通信
デジタル伝送路設備に端末設備等を接続する工事のうち、通信速度が「毎秒1ギガビット以下」で、主にインターネット接続に関わるものが範囲となります。
一般的な家庭や小規模オフィスのLAN環境構築に広く対応できる資格です。
旧「DD第三種」にあたり、現代のネットワーク工事において需要の高い区分です。
第一級デジタル通信
デジタル伝送路設備における接続工事を、通信速度の制限なく行える資格です。
大規模な企業ネットワークやデータセンターなど、高速・大容量のデジタル通信設備の構築に欠かせません。
旧「DD第一種」に相当し、現代の高度情報化社会を支えるデジタル通信のスペシャリストとして位置づけられています。
総合通信信
アナログ・デジタルの全範囲、および総合デジタル通信設備のすべてを網羅し、あらゆる接続工事を行える最上位資格です。
この資格1つで、小規模な電話回線から大規模な高速デジタルネットワークまで幅広く対応・監督が可能となります。
旧名称は「AI・DD総合種」で、通信業界における最高峰の資格です。
工事担任者の資格を取得するメリット

工事担任者の資格を得ることには、いくつかのメリットがあります。
ここでは4つのメリットを取り上げ、詳しく確認していきましょう。
技術力を客観的に証明できる
工事担任者の資格を得た方は、通信工事に関する技術力が客観的に認定されています。
資格を持つ方が工事を担当することで顧客に安心感を与えられることは、代表的なメリットといえるでしょう。
加えて転職する際にも、工事担任者の資格が役立つ場合があります。
企業によっては受注を有利に進めたいなどの理由があり、工事担任者の有資格者を求める場合があるためです。
客観的に証明された「資格」が転職に役立つことも、見逃せないメリットといえるでしょう。
任される仕事が増える
さきに解説したとおり、通信工事のなかには工事担任者の有資格者でないとできない仕事もあります。
資格を取ればこのような仕事もできるため、任される仕事も増えるでしょう。
加えて工事担任者は、資格を持たない方よりも高いスキルがあるとみなされます。
合格後は、より高いレベルの仕事を任されやすくなるでしょう。
やりがいのある仕事を担当するチャンスが増えることも、重要なメリットの1つです。
チャレンジできる資格が増える
他の資格を取るきっかけになることも、見逃せないメリットに挙げられます。
資格のなかには、以下に該当するものもあるためです。
- 工事担任者の資格があると、科目免除が受けられる
- 工事担任者などの資格を持つことが出願の前提である
1番の代表的な資格は、電気通信主任技術者です。
以下に挙げるいずれかの資格があれば、「システム」の科目免除を受けられます。
- 総合通信またはAI・DD総合種
- 第一級アナログ通信
- 第一級デジタル通信
- AI第一種またはAI第二種
- DD第一種またはDD第二種
- アナログ・デジタル総合種
- アナログ第一種またはアナログ第二種
- デジタル第一種またはデジタル第二種
2番の例には、日本データ通信協会が認定する「情報通信エンジニア」が挙げられます。
出願の際には、以下に挙げるいずれかの資格を持っていなければなりません。
工事担任者を持つことでチャレンジできる資格も増えることは、大きなメリットといえるでしょう。
収入が増える可能性がある
収入の増加が期待できることも、工事担任者の資格を持つメリットに挙げられます。
代表的な方法を、以下に挙げました。
| 項目 |
特徴 |
| 合格報奨金の支給 |
合格時に限り支払われる |
| 資格手当の支給 |
月々の給与にプラスして支払われる |
| 給与やボーナスのアップ |
能力向上や業績向上への寄与が認められた場合 |
工事担任者の資格が収入のアップにつながるかどうかは、企業により異なります。応募前に必ず確認しておきましょう。
工事担任者の今後の需要と将来性

現代ではWi-Fiや携帯電話回線の高速化により、有線を使わなくても快適に通信できます。
このため工事担任者の重要度は下がる一方と考える方も、いるかもしれません。
しかし工事担任者は今後も求められる、将来性のある資格です。
主な理由の1つに、安定した高速通信には、光回線に代表される有線の回線が優れていることが挙げられます。
高画質で動画を閲覧できる環境が普及しつつあることも見逃せません。
通信速度のさらなる高速化に伴い、工事担任者の需要は今後増加するものと見込まれます。
将来性のある資格といえるでしょう。
なおこれらの技術革新は、特にデジタルの分野で進んでいます。
アナログかデジタルかお悩みの方は、デジタルの資格を選ぶと良いでしょう。
工事担任者の年収は高い?低い?

工事担任者の年収は、国内の会社員全体の平均値と比較しても標準的な水準に位置しています。
ここでは、最新の統計データに基づいた具体的な年収額や、関連職種との比較について詳しく見ていきましょう。
工事担任者の年収は平均386万円
近年の採用動向や業界の給与水準を鑑みると、工事担任者を含む通信設備技術者の平均年収は約400〜500万円、平均月給は28万〜35万円程度が相場です。
数年前のデータと比較しても、5Gの普及や光回線の高度化に伴うインフラ需要の拡大、さらには深刻な技術者不足を背景に、給与水準は上昇傾向にあります。
もちろん、この金額はあくまで目安であり、勤務地が都市部である場合や大手通信事業者に所属しているケース、あるいは管理職ポストへの就任により、年収600万円以上を得ている技術者も少なくありません。
年収額は会社員全体のなかでも平均的
工事担任者の年収は、民間企業で働く正社員の平均的な年収帯に該当します。
国税庁が公表した最新の統計調査(2025年発表分)によれば、民間企業に勤める方の平均給与は478万円(前年比3.9%増)となっており、正社員に限ると平均545万円です。
工事担任者の年収帯は、日本の労働者の多くが該当するボリュームゾーン(300〜500万円)と重なっています。
「情報通信」業種全体の平均と比較すると一見低く映りますが、これは高額なコンサルタントや開発職が数値を引き上げているためです。
通信インフラの構築・保守という実務を担う技術職としては、社会全体の平均に準じた安定的な収入を確保できる職業といえるでしょう。
参照: 令和6年分民間給与実態統計調査|国税庁
他の業種・職種や他の資格との比較
工事担任者の平均年収は、他の職種や資格との違いがあるのでしょうか。
関連するIT・通信インフラ系の職種や資格と比較した、最新の給与目安は以下の通りです。
| 職種や資格 |
平均年収 |
備考 |
| 技術系(IT/通信)全体 |
469万円 |
プロジェクトマネジメント職(616万円)や先行開発職(610万円)が高水準 |
| 技術系(電気/電子/機械) |
476万円 |
プロジェクトマネジャー(707万円)やセキュリティ関連(649万円)が上位を占める。 |
| 技術系(建築/土木) |
446万円 |
プラント設計(562万円)や施工管理(472万円)などが全体を牽引 |
| 技術系(メディカル/化学/食品) |
409万円 |
職種による幅が大きく、製剤研究(601万円)や研究開発(512万円)などの専門職が上位 |
参照:平均年収ランキング(職種・職業別の平均年収/生涯賃金)【最新版】|doda
最新の調査結果では、いずれの技術系職種においても平均年収は上昇傾向にあります。
特に、工事担任者と関連の深い「IT/通信」や「電気/電子/機械」の分野では、プロジェクトマネジメントや設計・開発などの上流工程に携わることで、年収600万〜700万円台を目指せる環境が整っているといえるでしょう。
こうした背景から、工事担任者として現場経験を積みつつ、上位資格の取得や業務範囲の拡大を図ることで、着実な年収アップを目指せます。
工事担任者で年収を上げる方法

工事担任者の資格を取得した後、さらなる年収アップを実現する方法はいくつかあります。
ここからは主な4つの方法を取り上げ、年収を上げるコツを確認していきましょう。
上位の資格を取得する
工事担任者は、複数の種別に分かれています。
上位の資格を取得することでより高いスキルを証明でき、年収のアップにつなげることが可能です。
| お持ちの資格 |
上位の資格 |
| 第二級アナログ通信 |
第一級アナログ通信、総合通信 |
| 第二級デジタル通信 |
第一級デジタル通信、総合通信 |
| 第一級アナログ通信、第一級デジタル通信 |
総合通信 |
今お持ちの資格で満足せず、さらなる上位資格の取得に向けて努力を重ねましょう。
他の資格を取得する
仕事に役立つ他の資格を取得することも、年収を上げる方法に挙げられます。
業界で評価の高い資格を取れば、収入のアップにつながりやすいことはメリットといえるでしょう。
以下の資格は、代表的な例に挙げられます。
- 電気通信主任技術者
- 電気通信工事施工管理技士
- ネットワークスペシャリスト
- 技術士(電気電子部門、情報工学部門)
興味のある資格があれば、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
仕事で実績を挙げ、評価される
仕事で実績を挙げることは、年収を上げる最もスタンダードな方法です。
高いスキルをもとに実績を挙げれば、社内でも高い評価を得られ、給与のアップに結びつくというわけです。
「当社を代表する技術者」という評価を得られれば、高い給与が期待できるでしょう。
転職する
年収のアップには、転職も有効な方法の1つです。
会社はさまざまな事情により、能力に見合う給与を提示できない場合があります。
自他ともに認めるほどの高いスキルを持つ方は、転職により年収のアップが期待できるでしょう。
但し企業選びを誤ると、せっかくのスキルを活かせず高い評価を得られない、給与が下がるといった不利益をこうむるおそれがあります。
この方法で年収アップを勝ち取るためには、事前の企業研究が欠かせません。
まとめ

工事担任者は、通信インフラの構築に欠かせない将来性の高い国家資格です。
年収面でも国内正社員の平均的な水準が期待でき、専門技術を武器に安定したキャリアを築けます。
さらに、実務経験や上位資格の取得を重ねることで、より高待遇なポストを目指せる点もメリットです。
資格の保有は、技術者としての市場価値を向上させる確実な手段となるでしょう。
試験の種別や具体的な対策方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
まずは自分に合った試験の確認から始めてみてはいかがでしょうか。
