
労働安全衛生法改正に伴い、特定自主検査や資格講習が厳格化したことをご存じでしょうか。変更点を把握していなければ、労働安全衛生法違反による罰則や高額な費用賠償につながる恐れもあるため、本記事で確認しておきましょう。
この記事では、特定自主検査と技能講習の「不正防止対策」が強化されたこと、特定機械の「製造許可・検査」における民間移管について詳しく解説します。さらに、【化学物質】通知ルール(SDS:安全データシートの交付)の強化と測定の有資格者化についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。


技術進歩により高度化する「機械」と「化学物質」の安全管理

現在、デジタル化やAI活用などによって目覚ましい技術進歩が加速していることで、「機械」と「化学物質」に関する安全管理はより高度化しています。
今回の労働安全衛生法改正は、新技術の誕生に伴い設計・検査手法の高度化・専門化が必要となっている現状、さらに物質の多様化や国際的な潮流もふまえ、様々な人が安心して働くことができる職場を整えるために実施されました。
【機械①】特定自主検査と技能講習の「不正防止対策」が強化(令和8年1月1日施行)
こちらでは、特定自主検査と技能講習の「不正防止対策」が強化されたことに対して、以下2つのポイントから解説します。
- 特定自主検査の「基準遵守」義務化
- 技能講習修了証の不正発行に対するペナルティ強化
変更点を確認し、安全管理体制を整えていきましょう。
参考:厚生労働省|改正労働安全衛生法説明会~個人事業者等の安全衛生対策の推進について~
特定自主検査の「基準遵守」義務化
フォークリフトなどの一定の機械に対する特定自主検査について基準が設けられ、登録検査業者はこの基準に従って検査を行うことが義務化されました。
検査内容が告示内容に満たされていなかった場合は、法令違反といった位置付けになり、行政罰の対象になるため注意しましょう。
技能講習修了証の不正発行に対するペナルティ強化
フォークリフトの運転業務などに従事するために必要な技能講習に関して、技能講習修了証やそれと同等のものと認識するような紛らわしい書面の交付が禁止されました。
これは、技能講習を実施する民間登録機関が、不正に技能講習修了証を交付する等の事案に対する防止策であり、不正を行った場合は回収命令や欠格期間の延長が規定されています。
【機械②】特定機械の「製造許可・検査」が民間移管へ(令和8年4月1日施行)
こちらでは、特定機械の「製造許可・検査」における民間移管について、下記2つのポイントから解説します。
- 構造審査の民間移管
- 製造時等検査の対象拡大(移動式クレーン・ゴンドラ)
特定機械の取扱業務に従事する方は、ぜひ参考にしてみてください。
参考:厚生労働省|労働安全衛生法及び作業環境測定法改正の主なポイントについて、厚生労働省|改正労働安全衛生法説明会~個人事業者等の安全衛生対策の推進について~
構造審査の民間移管
ボイラーやクレーンなど、危険な作業を必要とする特定機械等においては、製造許可や製造時等検査制度、設置時・使用時の各段階における検査が義務付けられています。このなかでも、製造許可申請の審査のうち、登録を受けた民間機関であれば「設計が構造規格に適合しているかどうか」の審査を行うことが可能になりました。
もともと、民間移管は性能検査など一部検査において進められていましたが、EU諸国を含む諸外国で、専門性を持つ民間の検査機関の活用が進んでいることをふまえ、労働災害の防止・行政の効率化・民間活力の活用を促進するために今回の改正項目が施行されています。
製造時等検査の対象拡大(移動式クレーン・ゴンドラ)
特定機械等の製造時等検査において、移動式クレーン及びゴンドラであれば登録を受けた民間機関が検査を行うことが可能になります。改正前は、ボイラーや第一種圧力容器の製造時等検査における民間移管が進められていましたが、今回の改正で対象が拡大されました。
また、特定機械等の製造時等検査や性能検査、個別検定、型式検定について基準が定められ、検査・検定を実施する登録機関はこの基準に従うことが義務付けられています。
【化学物質】通知ルール(SDS)の強化と測定の有資格者化
「化学物質」における通知ルール(SDS:安全データシートの交付)の強化と測定の有資格者化における改正項目は、以下のとおりです。
- 危険性・有害性情報の通知(SDS)違反への罰則新設
- 営業秘密成分の「代替化学名等」での通知(令和8年4月1日施行)
- 個人ばく露測定の精度担保(令和8年10月1日施行)
上記3つの改正項目について解説します。
参考:厚生労働省|労働安全衛生法及び作業環境測定法改正の主なポイントについて、厚生労働省|改正労働安全衛生法説明会~個人事業者等の安全衛生対策の推進について~
危険性・有害性情報の通知(SDS)違反への罰則新設
化学物質の譲渡・提供時における危険有害性情報の通知制度(SDS)について、その履行確保をするため、通知義務違反に対する罰則が新たに設けられました。加えて、改正前は通知事項を変更した場合の再通知は努力義務とされていましたが、改正後は義務化に至りました。
こちらの改正項目の施行は、「公布後5年以内に政令で定める日から」を予定されています。
なお、上記項目を含む「化学物質」に関する改正は、事業者等による自律的な管理を基軸とする規制に向けて、安全衛生法体系の抜本的見直しが行われたことが背景とされています。
営業秘密成分の「代替化学名等」での通知(令和8年4月1日施行)
SDSに対して、化学物質の成分名に企業の営業秘密情報が含まれる場合は、有害性が相対的に低い化学物質のみ、通知事項のうち成分名について代替名等の通知が認められました。ただ、非開示できるのは成分名のみであり、人体に及ぼす作用、講ずべき措置等については対象とされていません。
代替名等での通知を行った場合、事業者は実際の成分名を含む情報についての記録・保存が義務付けられています。また、医師が診断や治療のために成分名の開示を求めた場合、当該事業者は直ちに成分名を開示することが必要です。
個人ばく露測定の精度担保(令和8年10月1日施行)
改正により、危険・有害な化学物質を取り扱う作業環境において、その場所で働く労働者が化学物質にばく露している程度を把握するために実施される「個人ばく露測定」の精度担保が実施されます。
具体的には、個人ばく露測定を作業環境測定のひとつとして位置付け、必要な講習を受講した作業環境測定士などの有資格者が、作業環境測定基準に従って行うことが義務化されました。
まとめ

この記事では、特定自主検査と技能講習の「不正防止対策」が強化されたこと、特定機械の「製造許可・検査」における民間移管などについて詳しく解説しました。
現在、労働安全衛生法改正に伴い、改めて職場の安全管理体制を強化することが求められています。
また、令和8(2026)年1月1日から段階的に施行される、「労働安全衛生法及び作業環境測定法改正の主なポイント」についても、「【2026年最新】労働安全衛生法改正の全体像と施行スケジュール総まとめ」の記事でまとめていますので、ぜひご確認ください。
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また、改正によって労働者に保護具を使用させるときは、「保護具着用管理責任者」を選任することが義務化されました。CIC日本建設情報センターでは、厚生労働省による教育実施要領に沿ったカリキュラムで「保護具着用管理責任者教育講習」を実施していますので、こちらも併せてご検討ください。
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