
「技術士」の資格は、科学技術の分野において最高位の国家資格です。技術士の専門性はさまざまな業種で求められるだけでなく、キャリアアップや転職などでも有利に働きます。
とはいえ、難関資格であることに変わりありません。資格取得後のメリットや具体的な活用方法などを事前に把握し、資格取得や転職のモチベーションにつなげることが大切です。
この記事では、技術士資格が転職活動において有利に働く理由から主な転職先、年収の傾向、転職を成功させるためのポイントまでを詳しく解説します。技術士としてのキャリアをお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。

技術士資格が転職に有利な理由

結論からお話しすると、「技術士」の資格は転職市場で高く評価されます。単なる知識の証明にとどまらず、技術者としての総合的な能力を示す指標となるためです。
まず、技術士は科学技術分野における最高位の国家資格であり、合格率は例年10%程度と非常に低いのが特徴です。そのため、取得することで高度な専門的応用能力を備えていることの客観的な証明となります。資格取得によって、他の応募者との圧倒的な差別化につながるでしょう。
また、技術士法には「信用失墜行為の禁止」や「秘密保持義務」などが定められており、資格保有者は高い技術者倫理を持っているとみなされます。コンプライアンスが重視される現代において、信頼できる人材としても評価されるでしょう。
加えて、公共事業の入札において企業の技術力評価(加点)にもつながります。技術者資格保有者を採用することは企業側にも大きなメリットがあるため、転職でも有利に働くわけです。
技術士の仕事内容
「技術士」の仕事の核心は、「科学技術に関する高度な専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価、またはこれらに関する指導」です。
具体的には、技術コンサルタントとして公共事業の整備計画策定、事前調査、設計監理などを行います。最適な工法や材料を選定し、安全かつ経済的な構造物を設計するための指導を行います。 また、企業や団体からの依頼による業務監査、裁判所や保険会社からの依頼による事故調査や鑑定など、公平中立な立場での評価も重要な業務です。さらに、企業の技術開発指導や、発展途上国への技術移転など、その活動は多岐にわたります。
技術士資格取得のメリット
最大のメリットは、転職活動における強力なアピール材料になることです。技術力、問題解決能力、倫理観を兼ね備えた人材であることを国が証明してくれます。
特に建設コンサルタント業界では事実上の必須資格であり、建設業の入札評価や専任技術者の要件も満たします。将来的な独立開業も可能で、定年に関係なく働けるのも魅力です。そして何より、最高位の国家資格を持つ技術者としての社会的地位と自信が得られるでしょう。
技術士と技術士補の違い

「技術士」を目指す上で、把握しておきたいのが技術士補です。技術士補は、技術士となるために必要な実務経験を積む期間にある技術者、第一次試験の合格者のことです。
| 項目 |
技術士 |
技術士補 |
| 資格取得までの流れ |
第一次試験合格・第二次試験の合格者 |
第一次試験合格、実務経験を積んでいる最中 |
| 保有能力 |
実務経験に裏打ちされた高度な応用能力を持つ |
技術士の指導の下で業務を補助する能力を持つ |
| 位置づけ |
高度な技術者 |
技術士を目指す者、技術士の補助者 |
転職活動において、即戦力としての評価を得るなら技術士が圧倒的に有利です。ただし技術士補であっても、難関の第一次試験を突破した基礎知識の証明になり、将来的に技術士を目指すという強い意欲をアピールできます。第一次試験であれば受験資格がないことから、挑戦しやすいのもメリットです。
技術士の主な転職先

「技術士」の主な転職先としては、以下の通りです。
- 一般企業(製造業・インフラ業界など)
- 建設コンサルタント会社
- 官公庁・地方自治体
技術士の活躍の場は多岐にわたり、高度な専門性は様々な業界で求められています。ここでは、それぞれの転職先の概要についてみていきましょう。
一般企業(製造業・インフラ業界など)
技術士として働く場合、技術士会への登録が必要となります。技術士会が公表するデータによると、登録している技術士の就職先で、最も割合が高いのは一般企業(製造業やインフラ関連企業)とのことです。
一般企業では、単なる設計・開発業務だけでなく、社内の技術コンサルタントとして、開発プロセスの改善や品質管理の高度化、安全設計の指導などを行うケースがあります。企業規模が大きいほど専門性を活かせるだけでなく、年収も高くなる傾向です。
自社の技術力を対外的にアピールしたい企業にとって、「技術士」は付加価値の高い人材となるでしょう。
建設コンサルタント会社
建設コンサルタント会社は、一般企業に次いで多い「技術士」の就職先です。この業界において技術士資格を有していると、業務の中核を担えます。
具体的には、ダムや橋梁、道路などの社会資本整備において、企画・調査・設計・施工管理・維持管理まであらゆるフェーズに関わるのが特徴です。技術士資格の有無が昇進や給料に直結することが多く、資格手当も手厚い傾向にあります。
官公庁・地方自治体
官公庁や地方自治体で、「技術系公務員」として働くのも1つの方法です。公共事業の計画立案や発注、監督業務などに携わります。
官公庁や地方自治体に勤める場合、公務員試験が必要な場合がほとんどですが、社会人採用枠などで技術士資格が評価されるケースがあります。収入面や福利厚生が充実しており、安定して長く働けるのがメリットです。ただし採用倍率は高く、十分な対策が必要となります。
技術士が転職を成功させるポイント

技術士資格を有していると転職で有利に働きますが、必ず成功するとは限りません。転職の際、ポイントを踏まえて自分の付加価値を適切に受け取ってもらう必要があります。
「技術士」が転職を成功させるためのポイントは、主に以下の4つです。
- 選択部門と転職先の関連性を重視
- 書類や面接で効果的にアピール
- 日本技術士会を活用した情報収集
- 転職エージェントの活用
それぞれの内容について詳しく解説します。
選択部門と転職先の関連性を重視
まず前提として、技術士試験の21の技術部門と、応募先企業の事業内容がマッチしていることが大切です。業務内容がマッチしていない場合、技術士資格のメリットを十分に活かせません。
例えば、「技術士」の建設部門を取得している場合、建設会社や建設コンサルタントなどが相性の良い企業となります。自分の専門分野と企業のニーズが一致していることで、資格の価値が発揮されるため、応募先で資格をどう活かせるか、具体的なイメージを伝えましょう。
書類や面接で効果的にアピール
応募先の企業の採用担当者が試験の難易度を詳しく知らないケースも珍しくありません。技術士資格をアピールする際、単に資格の有無だけでなく、合格率が低い難関試験を突破した努力や学習能力、専門知識や技術者倫理などを具体的にアピールすると効果的です。
技術士補の方も、将来「技術士」を目指す熱意や向上心を伝えることで好印象につながります。
日本技術士会を活用した情報収集
日本技術士会の研究会やワークショップに参加することも、転職の成功につながります。最新情報の収集や技術者同士の交流ができるためです。
技術士会を活用してネットワークを築くことで、転職のチャンスにつながることもあります。また、先輩技術者からのアドバイスは貴重な情報源となるため、どう転職に活かすか考えながら受け取ると良いでしょう。
転職エージェントの活用
建設業界や技術系職種に特化した転職エージェントの活用も1つの方法です。転職エージェントを活用することで、「技術士」向けの求人を豊富に持ち、資格の価値を理解したアドバイザーが強みを活かせる企業とのマッチングをサポートしてくれます。
「技術士」資格を有してはいるが、どう転職を進めたら良いかお考えの方におすすめです。
技術士資格の取得方法(試験合格~技術士会登録まで)

「技術士」として働く場合、資格を取得してから技術士会への登録が必要です。ここでは、技術士資格の取得の流れについて詳しく解説します。
第一次試験(技術士補試験)
「技術士」の第一次試験は受験資格がなく誰でも受験できる試験です。「基礎科目」「適性科目」「専門科目」の3科目(マークシート)で構成されており、合格率は約40〜50%です。
受験日から逆算し、計画的に学習することで合格する力は身につきます。ひとまずは技術士補の資格を得て、実務経験を満たして第二次試験に臨む流れがおすすめです。
第二次試験(技術士試験)
第一次試験合格後、所定の実務経験(4年〜7年)を満たした後に受験できるのが第二次試験です。試験は、記述式の筆記試験と口頭試験があり、専門知識に加えて問題解決能力や課題遂行能力が問われます。
そのため、第二次試験の合格率は約10%と非常に難しいのが特徴です。技術部門によって合格率は異なるものの、非常に難易度が高いことを把握し、対策に臨みましょう。
登録手続き
技術士試験に合格した後、日本技術士会への登録申請を行い、登録簿に記載されると「技術士」「技術士補」を名乗ることが可能です。登録後、これまでご紹介したような業界で有利に働くため、転職で有利にしたい場合は登録をご検討ください。
まとめ

この記事では、「技術士」の転職について詳しく解説しました。技術士の資格は、科学技術の分野において最高位の国家資格です。技術士の専門性はさまざまな業種で求められるだけでなく、キャリアアップや転職などでも有利に働きます。
具体的には、一般企業や建設コンサルタント、官公庁など幅広い業種で活躍可能です。技術士資格の取得は簡単ではないものの、得られるメリットを考えると積極的に挑戦することをおすすめします。
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