
本記事では、以下を参考に電気工事士の年収をまとめました。
令和5年分民間給与実態統計調査(国税庁)によると日本の平均年収は460万円であるのに対して、電気工事士の平均年収は550.9万円のため高い水準にあるといえます。(2025年3月現在における最新の情報です)
また、取得資格や働き方で電気工事士の年収は大きく異なり、年収1,000万円を超える方も中には存在します。
本記事では、電気工事士の年収データや収入を上げる方法などをご紹介するので、ぜひご参考ください。
電気工事士の年収(給料)は平均いくら?

電気工事士の平均年収は状況により異なります。より正確な年収を知るためにも、以下のカテゴリーに分けて比較します。
- 年代別
- 資格別
- 学歴別
- 雇用形態別
- 経験年数別
- 企業規模別
- 地域別
- 企業別平均年収ランキング
各項目別に年収を調べていくと、自身の状況にマッチする年収帯がわかります。それでは、詳しく見ていきましょう。
年代別|20代、30代、40代
電気工事士の平均年収は年代別で大きく異なります。
20代・30代・40代それぞれの男女合計平均年収は、以下のとおりです。
年代 |
年齢 |
平均年収 |
20代 |
20~24歳 |
354万円 |
25~29歳 |
416万円 |
30代 |
30~34歳 |
463万円 |
35~39歳 |
501万円 |
40代 |
40~44歳 |
518万円 |
45~49歳 |
585万円 |
参考:令和6年賃金構造基本統計調査
平均年収は年齢と共に上昇しています。例えば、20代前半では354万円だった年収が40代後半になると585万円になっており、約23万円もの差がついているのです。
また、電気工事士になることで、日本の平均年収である460万円を30代で越えられる可能性があることも大きなポイントでしょう。
資格別|電気工事士一種、二種
厚生労働省の職業情報提供サイト「job
tag」によると、電気工事士の平均年収は550.9万円とされています。
これは電気工事士全体の年収であり、資格の階級に応じて給与は前後するでしょう。
「第一種電気工事士」の月収は、「第二種電気工事士」の月収に比べ、およそ4~5万円の差があるといわれているため、年間では60万円ほどの差になることもあります。
取得資格によって年収が前後するのは、電気工事士の第一種と第二種で行える作業範囲量が異なるからだといえるでしょう。
資格については詳細を後述しますが、第一種取得者は大きな設備の工事にも従事可能なため、この差が平均年収にも影響を与えていると考えられます。
学歴別|高卒、大卒
電気・ガス・熱供給・水道業の高卒 / 大卒別の10人以上の企業における月収は、以下のとおりです。
学歴 |
平均月収 |
高校卒 |
18.9万円 |
専門学校 |
21.3万円 |
高専・短大卒 |
21.5万円 |
大学卒 |
24.0万円 |
大学院修士課程修了 |
26.5万円 |
参考:令和6年賃金構造基本統計調査
最終学歴が長いほど平均年収は上がっています。高卒と大卒では月額ベースで約5万円の差がついており、単純計算すると年収で約60万円もの差があります。
このデータは、電気工事士に特化したものではありません。ただし、初任給は上記が反映される可能性があります。
雇用形態別|正社員、派遣社員
電気工事士の平均年収は雇用形態別で異なります。一般労働者・短時間労働者・臨時労働者別に分けた平均年収のデータを下表にまとめました。
雇用形態 |
報酬 |
月収換算 |
一般労働者 |
平均年収547万円 |
36.7万円+年間賞与など106.4万円 |
短時間労働者 |
平均時給1,718円 |
約31.6~34.3万円(月23~25日 / 1日8時間勤務)+年間賞与など20.5万円 |
臨時労働者 |
平均時給1,857円 |
約34.1~37.1万円(月23~25日 / 1日8時間勤務) |
参考:令和6年賃金構造基本統計調査
一般労働者・短時間労働者・臨時労働者で報酬形態が変わるので、一概に年収を比較することはできません。しかし、それぞれ月収に換算すると、一般労働者正社員は約36.75万円で、派遣社員短時間労働者や臨時労働者は30万円前後となります。
このように、上記3つの雇用形態別では、一般労働者が最も高年収であると分かります。
また、一般労働者の年間賞与額は、短時間労働者に比べて高いため、高収入を目指す場合は一般労働者の枠を狙うと良いでしょう。
経験年数別
電気工事士の平均年収は経験年数で異なります。年数ごとの平均月収の推移を下表にまとめました。年間賞与とあわせて参考にしてください。
経験年数 |
平均月収 |
年間賞与(その他特別給与額) |
0年 |
22.7万円 |
52.3万円 |
1~4年 |
25.4万円 |
79.7万円 |
5~9年 |
30.2万円 |
86.8万円 |
10~14年 |
31.2万円 |
119.9万円 |
参考:令和6年賃金構造基本統計調査
上記の表を見ると、経験年数と月収との比例関係がわかります。数年経過するごとに数万円の月収アップが見込め、10年以上経過すると10万円近くの月収差が出ています。
年間賞与に関しても同様で、経験年数が多くなると年間賞与の金額は上がります(その他特別給与額参照)。5年以上で30万円近く、10年以上で50万円近くの差です。
企業規模別
電気工事士の年収は、企業規模により異なる傾向があります。規模を3つのカテゴリーに分けて、月収と賞与をそれぞれ見てみましょう。
企業規模 |
平均月収 |
年間賞与(その他特別給与額) |
10~99人 |
36.7万円 |
82.1万円 |
100~999人 |
35.1万円 |
113.3万円 |
1,000人以上 |
37.5万円 |
128.1万円 |
参考:令和6年賃金構造基本統計調査
上記の表において、年間賞与は規模企業規模が大きくなるにつれて上昇しています。
一方で、必ずしも企業規模が大きい会社であれば、月収や賞与が上がるとは限りません。100人未満の企業と1,000人以上の大企業を比較すると、賞与については大企業が上回っていますが、月収については大きな差がみられないことが分かります。
会社の規模に関しては平均年収と直接関係がないといえるでしょう。
地域別
電気工事士の平均年収は、地域別でも異なります。日本の各地域の平均年収を、高い順にまとめました。
地方 |
平均年収 |
東海 |
578.7万円 |
関西 |
571.3万円 |
中国 |
531.8万円 |
関東 |
513.2万円 |
四国 |
511.6万円 |
甲信越・北陸 |
492.7万円 |
九州・沖縄 |
495.9万円 |
北海道・東北 |
467.1万円 |
参考:令和6年賃金構造基本統計調査の都道府県別データを基に計算
平均年収は地域差による影響も大きいことがわかります。
関東と北海道・東北の平均年収は、約50万円の差があります。やはり、関東や関西・東海など、大都市がある地域の年収は比較的高いレベルにあるといえるでしょう。
企業別平均年収ランキング
電気工事士の平均年収は、企業別でも異なります。電気工事士に関連する企業の平均年収を、高い順にまとめました。
企業名 |
平均年収 |
コムシスホールディング |
918.3万円 |
ダイダン |
905.2万円 |
きんでん |
848.8万円 |
関電工 |
818.5万円 |
九電工 |
700.0万円 |
参考:各有価証券報告書(2024年6月末)
平均年収は企業ごとに大きく変化するうえ、上記ランキングに入る企業はいずれも大企業であるという特徴も見られます。
電気工事士の資格を取得して就職先を選ぶ際は、企業ごとの平均年収についてもチェックするのがポイントでしょう。
電気工事士の年収が安いと感じたら?給料を上げる方法を紹介

電気工事士が年収を上げる方法は、以下の4つです。
- 資格を取得する
- 実務経験や技能を積む
- 現場監督や親方(独立)を目指す
- 給料が高い会社に転職する
これらを実行することで、年収アップを実現できます。すぐに実践できないものもありますが、努力次第では比較的短い期間で達成できるため、ぜひ目指してみてください。 それでは、年収アップの方法の詳細を見ていきましょう。
資格を取得する
電気工事士が年収を上げる方法の1つは「資格を取得すること」です。電気工事士と関連する資格には、以下の3つがあります。
資格名 |
資格取得のメリット |
講座情報 |
第一種電気工事士 |
- 自家用電気工作物で、最大電力500キロワット未満の需要設備の電気工事に従事可能
- 一般用電気工作物の電気工事に従事可能
- 最大電力500
キロワット未満の需要設備(自家用電気工作物)を有する工場やビルなどに従事している場合、一定の条件下で電気主任技術者(許可主任技術者)として従事可能
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詳細はこちら |
電気工事施工管理技士 |
- 営業所(建設業許可を取得した営業所)ごとに専任技術者として従事可能
- 監理技術者・主任技術者として従事可能
- 営事項審査の技術力評価で有資格者1人につき5点の加算(1級電気工事施工管理技士の場合)
|
詳細はこちら |
電気通信工事施工管理技士 |
-
- 一定規模の営業所や建設現場で必要な国家資格
- 電気通信工事の実施にあたって必要な施工管理業務に従事できる
|
詳細はこちら |
電気工事士と関連した資格を取得することで年収アップが期待できます。それぞれの資格について見ていきましょう。
■第一種電気工事士
電気工事士が年収を上げる方法として「第一種電気工事士の資格取得」が挙げられます。
第一種電気工事士とは、電気工事に関連した国家資格です。電気に関するノウハウやスキルを有している技術者に認定される資格で、第二種電気工事士の上位資格に該当します。
第一種電気工事士を取得すると資格手当による年収アップが期待できます。手当は企業によってばらつきがありますが、一般的には第一種の手当は第二種の手当の150〜250%です。そのため、年収アップには第一種の取得をおすすめします。
ただし、第一種電気工事士の資格手当が5,000円で第二種の資格手当が3,000円の場合、両方取得すると資格手当が8,000円とならず、第一種の5,000円に上書きされるといった企業が多いです。
また、第一種を取得すると作業範囲の拡大による年収アップも可能です。第二種では一般用電気工作物のみ従事できるのに対して、第一種は500kW未満の自家用電気工作物にも従事できます。作業範囲が広がれば、作業報酬が増えるのは自然なことです。
資格取得する上で、実務経験が重視されるのも年収の上がる理由です。第一種電気工事士として免状を受け取るには、試験合格後に実務経験を積む必要があります。
つまり、免状取得者は現場の経験があるため、スキルが担保されています。
第一種電気工事士の試験スケジュールや通信講座に関する情報を知りたい方は「第一種電気工事士 CIC日本建設情報センター」をご覧ください。
■電気工事施工管理技士
電気工事士が年収を上げる方法として「電気工事施工管理技士の資格取得」も挙げられます。
電気工事施工管理技士は、国土交通大臣指定機関により実施されている国家試験です。
1級と2級の種別があり、1級の場合は特定建設業と一般建設業の営業所ごとの専任技術者および現場に配置する監理技術者として従事できます。
2級の場合は、一般建設業の営業所ごとの専任の技術者および建設工事での主任技術者として従事できます。
電気工事施工管理技士取得者は、建設業界関連の資格の中でも重要性が高く、ステータス性の高い資格です。実際、厚生労働省の職業情報提供サイト「job
tag」によると、電気工事施工管理技士の資格に関連する電気技術者の平均年収は688.2万円と高い水準にあります。
電気工事士の平均は550.9万円であるため、約140万円も高いです。電気関連職で年収をアップさせたい場合に、取得を目指したい資格といえます。
電気工事施工管理技士の試験スケジュールや通信講座に関する情報を知りたい方は「電気工事施工管理技士 CIC日本建設情報センター」をご覧ください。

■電気通信工事施工管理技士
電気工事士とあわせて取得したい資格に「電気通信工事施工管理技士」もあります。
電気通信工事施工管理技士は、電気工事施工管理技士同様、施工管理の資格の1つで、全国建設研修センターによって実施されています。
1級と2級に分類されており、1級の場合は特定建設業と一般建設業の営業所ごとの専任技術者および現場に配置する監理技術者として従事できます。
2級は、一般建設業の営業所ごとの専任の技術者および建設工事での主任技術者として従事できます。
電気通信工事の実施にあたって必要な施工管理業務に従事できるため、電気工事以外の仕事の幅も広げられる資格です。
電気通信工事施工管理技士の試験スケジュールや通信講座に関する情報を知りたい方は、「電気通信工事施工管理技士 CIC日本建設情報センター」をご覧ください。
実務経験や技能を積む
電気工事士が年収を上げる別の方法は「実務経験や技能の積み重ね」です。
はじめは見習いからスタートするとしても、工事経験を積んで知識や技術を身につけていくことにより、多くの仕事を任せられたり役職に就いたりできます。
より多くの仕事を任せられれば、自然と給料が上がります。あるいは役職に就くことで手当てが出る可能性もあります。
先述の通り、経験年数の多さはある程度月収やボーナスに反映します。
在籍年数が長ければそれのみで自動的に給料があがるとは限りません。ただし、経験年数に伴う現場実績の積み重ねは、少なからず良い影響を及ぼすでしょう。
給料が高い会社に転職する
電気工事士が年収を上げる方法として「給料が高い会社への転職」も選択肢に挙げられます。
転職を成功するにはそれなりのスキルや実績が求められますが、前項で説明したとおり、努力を積み重ねることで可能性は高まります。
同じ仕事の内容でも給料が上がることでモチベーションアップにもつながるため、待遇や仕事の条件とあわせて転職先を探してみるのもよいでしょう。
現場監督や親方(独立)を目指す
電気工事士が年収を上げるほかの方法は「現場監督や親方、独立を目指すこと」です。
現場監督のように立場が上になることで、年収アップを期待できます。
また親方になったり独立したりすると、自身で仕事量を調整できます。やり方しだいでは、特定の企業に在籍するよりも効率の良い仕事の仕方が可能です。
実際、年収が1,000万円を超えるケースも存在します。もちろん工事スキルのみでなく、コミュニケーション能力や営業力も求められますが、年収アップを目指す方には良い選択肢の1つです。

電気工事士の年収に関するよくある質問

ここでは、電気工事士の年収に関するよくある質問をまとめました。
電気工事士は年収1,000万円を目指せる?
電気工事士で年収1,000万円を目指す事は可能です。ただし、年収1,000万を目指せる会社は限られています。
また、年収が高い会社に転職するのみでなく、そこで役職(現場監督)を上げるよう努力する必要があります。あるいは、独立して個人収入を上げる努力が求められるでしょう。
電気工事士の一人親方は儲かる?お金持ちが多いって本当?
一人親方は「お金持ち」というイメージを持つ方は少なくありません。しかし独自調査した結果、平均年収は400~700万円との情報が多いことがわかりました。
冒頭でお伝えしたとおり、日本の平均年収は460万円(2025年3月時点の最新情報)です。
そして電気工事士の平均年収は550.9万円です。一人親方で下限の年収は400万円ほどであることを考えると、必ずしも一人親方が儲かるとは言い切れません。
年収をどこまで上げられるかどうかは、個人のスキルはもちろん営業力にもかかってきます。やり方次第では上限の700万円もしくはそれ以上の金額を稼ぐことも十分可能です。
注意点として、一人親方になると社会保険の加入や営業を自身で行うなど、年収以外の考慮すべき要素があります。総合的な観点で比較し、一人親方の方が自身にとって良いのかを判断するようおすすめします。
電気工事士の将来性は?
電気工事士は将来的にも需要の高い職業だと考えられています。
理由としては、多くの電気設備が10年前後で耐用年数を迎えるので、国内の老朽化したインフラ設備の刷新工事の需要が継続的に存在するためです。また、IT領域の技術革新に対応するための工事などの需要も今後は期待されます。
一方で昨今の日本では少子高齢化が進む影響を受けて、電気工事士も人手不足の傾向にあり、有資格者はより一層重宝されます。
まとめ

本記事では、電気工事士の年収について解説しました。ここまでの概要をまとめると以下のとおりです。
- 電気工事士の平均年収は、日本の全体平均年収より高め
- 平均年収は、年齢・資格・学歴・雇用形態・経験年数・企業規模・地域などさまざまな要素で変動する
- 平均年収を上げるためには、資格取得や経験値向上などの手段を講じると良い
現在電気工事士として働いている方や、今後に電気工事士として働く方も、年収アップを目指す場合は具体的な方法を検討しましょう。
年収が上がることで将来への安心感が得られます。また単にお金の話のみでなく、年収アップを目指すということは、取得する資格や積み上げられる実務経験を増やすことと関係します。
スキル向上や資格取得は、後々就職や転職で有利になる要素であるため、将来設計を考える上でも年収アップを視野にいれることは賢明です。