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建設現場のヒューマンエラーとは?種類・原因と災害事例から学ぶ対策

建設現場のヒューマンエラーとは?種類・原因と災害事例から学ぶ対策

公開日:2026年7月16日 更新日:2026年9月2日

建設現場のヒューマンエラーとは?種類・原因と災害事例から学ぶ対策

建設現場で起こる事故の背景には、「ヒューマンエラー」が関わっているケースが少なくありません。ヒューマンエラーは、意図しない結果を生じてしまう人間の行為のことです。

「人のミスだから仕方がない」と片づけられがちですが、実際には発生に一定の傾向があり、正しく理解すれば仕組みによって減らしていけます。とくに建設業には、重層下請構造や混在作業、日ごとに変わる作業環境といった、ほかの業種にはない固有の発生要因があります。

この記事では、ヒューマンエラーの種類と、建設業ならではの発生原因を整理して解説します。実際に起きた労働災害の事例や、現場で実践できる対策、関連する労働安全衛生法の規定までご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

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目次

ヒューマンエラーとは

ヒューマンエラーとは

ヒューマンエラーとは、意図しない結果を生じてしまう人間の行為のことです。人間の判断の誤りや思い違い、不注意や知識不足などが原因で発生します。

建設現場でヒューマンエラーを考えるうえでは、似た言葉との違いを整理しておくことが重要です。「人的ミス」「違反」「不安全行動」はいずれも近い意味で使われますが、必要な対策がそれぞれ異なるためです。

「人的ミス」「人為的ミス」との違い

ヒューマンエラーは、日本語では「人的ミス」「人為的ミス」と呼ばれることもあります。いずれも人間に起因する誤りを指す言葉で、日常的にはほぼ同じ意味で使われています。

ただし厳密には、「人的ミス」「人為的ミス」が結果として生じたミスそのものを指すのに対し、ヒューマンエラーは安全工学の用語として、そのミスが起きた過程やメカニズムまで含めて扱われるのが一般的です。

労働安全の現場で「ヒューマンエラー」という言葉が使われるときは、「誰が悪かったのか」ではなく「なぜそのミスが起きる状況になっていたのか」を分析する文脈であることが多いといえます。

「違反」と「ヒューマンエラー」は異なる

ヒューマンエラーと間違えられやすいものに「違反」があります。違反とは、ルールや手順が決まっているにもかかわらず、それを承知のうえで「やるべきことをやらない」あるいは「やってはならないことをやる」という意図的な行為のことです。

一方でヒューマンエラーは、あくまで本人が「意図していない」状態で起こるものです。この2つは原因も対策も異なるため、別のものとして考える必要があります。

たとえば「高所作業で墜落制止用器具を使わなかった」というケースでは、使用が必要な作業だと知らなかったのであればヒューマンエラー、面倒だからと省略したのであれば違反にあたります。前者は教育によって減らせますが、後者は教育だけでは減りません。

「不安全行動」との関係

建設現場の安全管理では、「不安全行動」という言葉も使われます。不安全行動とは、労働者本人または関係者の安全を阻害する可能性のある行為のことで、労働災害の原因分析でも用いられる考え方です。

ヒューマンエラーが「意図しない」ものであるのに対し、不安全行動には「危険だとわかっていながらあえて行う」ものも含まれる点が異なります。ただし実際の災害では、両者が重なって発生することも珍しくありません。

対策を考えるうえでは、この2つを分けて捉えることが重要です。知識不足によるエラーは教育で減らせますが、あえて省略する行動は教育だけでは減らないためです。後者には、ルールを守りやすい環境づくりや、そもそも省略できない仕組みの導入が必要になります。

参考:厚生労働省|職場のあんぜんサイト「不安全行動」

ヒューマンエラーに含まれないもの

ヒューマンエラーに含まれないケースもあります。代表的なのが、わざと作業手順を間違えたり、意図的に誤った情報を伝えたりする「故意」によるものです。これは悪質性が高く、場合によっては犯罪と認定されることもあります。

また、マニュアルどおりに正しく作業したにもかかわらず、マニュアル自体の誤りや機械の故障といった「モノ」が原因でミスが起きた場合も、ヒューマンエラーとは区別されます。この場合に見直すべきはマニュアルや設備そのものであり、作業員への注意喚起では再発を防げません。

ヒューマンエラーの種類

エラー

ヒューマンエラーは、いくつかの軸で分類できます。「ミスをした」で終わらせず、どの種類のエラーだったのかを分けて捉えることで、打つべき対策が具体的になります。

やり忘れと、やり間違い

ヒューマンエラーは、まず「やるべきことをやらなかった」のか「やり方を間違えた」のかで大きく2つに分けられます。

  • オミッションエラー(省略のエラー)…本来やるべき作業や確認を行わなかったことで起こるエラー
  • コミッションエラー(実行のエラー)…作業自体は行ったものの、やり方や対象、順序を間違えたことで起こるエラー

建設現場では、オミッションエラーは「開口部の養生を戻し忘れる」「点検を飛ばす」「フックを掛け忘れる」といった形で現れます。コミッションエラーは「指定と違う部材を使う」「取り決めと逆方向に旋回する」「別の系統のバルブを操作する」といったケースが該当します。

同じ「ミス」でも対策の方向は異なります。オミッションエラーにはチェックリストや作業完了確認といった「抜けを防ぐ仕組み」が有効です。一方コミッションエラーには、表示の明確化や、間違った操作を物理的にできなくする仕組みのほうが効果を発揮します。

認知・判断・行動の3段階で分ける

もう1つの分け方が、人が行動するまでの流れに沿って分類する方法です。人は「気づく → 判断する → 動く」という順で作業をしており、そのどの段階でつまずいたかによって、必要な対策が変わります。

段階 エラーの内容 建設現場での例 有効な対策の方向
認知・確認 見落とし、見間違い、聞き間違い 変更後の図面に気づかない/合図を聞き逃す 表示の見える化、合図の統一、標識の設置
判断・決定 誤った判断、リスクの過小評価 「この程度なら大丈夫」と養生を省く KY活動、リスクアセスメント、教育
行動・操作 操作ミス、手順の取り違え 逆方向へ旋回する/違う工具を使う 作業手順書、指差呼称、間違えられない仕組み

「不注意だった」で終わらせず、どの段階でつまずいたのかを分けて考えることで、打つべき手が具体的になります。認知の段階でつまずいているのに精神論で注意を促しても、同じエラーは繰り返されます。

建設現場でのヒューマンエラー早見表

建設現場で実際に起こりやすいエラーを、これまでの分類に当てはめると以下のようになります。

よくあるヒューマンエラー 種類 つまずいた段階
墜落制止用器具のフックを掛け忘れる オミッション 認知・確認
開口部の養生を外したまま戻さない オミッション 認知・確認
変更された図面に気づかず旧図面で施工する オミッション 認知・確認
玉掛けワイヤーの点検を省略する オミッション 判断・決定
クレーンを取り決めと逆方向に旋回させる コミッション 行動・操作
合図を「いつもどおり」と思い込み退避しない コミッション 判断・決定
脚立の天板に乗って作業する ※不安全行動に該当 判断・決定
短時間だからと安全措置を省略する ※不安全行動に該当 判断・決定

自社の現場で起きたヒヤリハットや災害を、この表と同じ形で整理してみてください。同じ段階のエラーが繰り返し起きている場合、その段階に対する仕組みが不足していることがわかります。

建設業に固有のヒューマンエラー発生要因

建設業に固有のヒューマンエラー発生要因

ヒューマンエラーは、本人の性格や注意力だけで起こるわけではありません。とくに建設業には、ほかの業種にはない構造的な発生要因があります。まずは、この6つを押さえておきましょう。

  • 重層下請構造による指示伝達の劣化
  • 混在作業で他社の動きが見えない
  • 作業環境が日ごとに変わる
  • 屋外環境による集中力・判断力の低下
  • 工期のしわ寄せと焦り
  • 経験レベルの二極化と入れ替わりの多さ

それぞれについて詳しくみていきましょう。

重層下請構造による指示伝達の劣化

建設現場では、元請から一次下請、二次下請へと作業が流れていきます。この過程で、指示の内容が少しずつ変質したり、伝達が遅れたりすることがあります。

元請の朝礼で共有された変更事項が、その日の午後になっても二次下請の作業員まで届いていない、といったことは実際に起こり得ます。情報が届いていない状態で行われた作業は、本人にとっては「いつもどおり」でも、結果としてエラーになるのです。

これは個人の注意力の問題ではなく、伝達経路の構造上の問題です。誰がどこまで伝えるのかを明確にし、変更事項は書面や掲示で全員が確認できる形にしておく必要があります。

混在作業で他社の動きが見えない

建設現場では、複数の業者が同じ空間で同時に作業しています。上階で鉄骨を組んでいる横で、下階では内装工事が進んでいる、といった状況が日常的です。

このとき、自社の作業手順を完璧に守っていても、他社の作業内容を把握していなければ危険を予測できません。「まさか上から物が落ちてくるとは思わなかった」というエラーは、混在作業に特有のものです。

作業間の連絡調整が不十分な現場ほど、この種の災害が起こりやすくなります。作業間連絡調整会議の場で、その日の各社の作業内容と危険箇所を共有することが有効です。

作業環境が日ごとに変わる

オフィスや工場では、作業環境が毎日ほぼ同じです。しかし建設現場は、工程の進捗に応じて足場の位置、開口部の有無、資材の置き場所、通路の動線が日々変わります。

昨日安全に通れた場所が、今日は開口部になっている。前回使えた通路が、今日は資材で塞がっている。「昨日の安全が今日の安全ではない」のが建設現場です。

経験に基づく「いつもどおり」の判断が、そのままエラーにつながる構造があります。だからこそ、その日の作業開始前に現場の状態を確認するKY活動が欠かせません。

屋外環境による集中力・判断力の低下

多くの建設作業は屋外で行われます。夏場の高温多湿な環境では、集中力と判断力が明らかに低下します。冬場の寒さは手先の感覚を鈍らせ、防寒具は視野と動きを制限します。重機や工具の騒音は、合図や警告音の聞き逃しを招きます。

こうした環境要因は、本人の努力では解消できません。休憩時間の設計、暑熱対策、合図方法の見直しといった、環境側からのアプローチが必要です。

工期のしわ寄せと焦り

天候不順や前工程の遅れは、後工程の作業時間を圧迫します。「今日中に終わらせなければ」という状況では、確認の省略や手順の飛ばしが起こりやすくなります。

現場の作業員が焦っているとき、その原因は本人ではなく工程計画にあることが少なくありません。無理のある工期は、ヒューマンエラーを構造的に生み出します。工程に遅れが生じた際は、安全措置を削らずに済む調整ができているかを確認しましょう。

経験レベルの二極化と入れ替わりの多さ

建設業では、長年の経験を持つ職人と、経験の浅い若手が同じ現場で働いています。加えて、一人親方や短期の応援作業員が日によって入れ替わることもあります。

経験の浅い作業員には知識不足によるエラーが起こりやすく、ベテランには慣れによる省略が起こりやすいという、正反対の傾向があります。さらに、入れ替わりが多い現場ではその日のルールが共有されにくく、伝達エラーのリスクが高まります。

教育の内容も、対象によって変える必要があります。新規入場者には現場固有のルールの徹底を、ベテランには「なぜその手順が必要か」の再確認を、というように分けて考えることが有効です。

安全管理の基本

作業員個人に起こりやすいヒューマンエラーの原因

ポイント

建設業に固有の要因に加えて、作業員個人の側にもエラーが起こりやすくなる条件があります。主な原因は以下の5つです。

  • 思い込み・誤認
  • 不注意
  • 知識・経験不足
  • 慣れによる気の緩み
  • 疲労・ストレス

それぞれの原因についてみていきましょう。

思い込み・誤認

過去の経験や先入観から、「この作業はいつもどおりだから大丈夫だろう」と判断してしまう思い込みや誤認によってエラーにつながります。

建設現場では、図面の変更に気づかず旧図面のまま施工する、重機のオペレーターが「いつものように合図があるはず」と考えて退避しない、といった形で現れます。工程が進むにつれて条件が変わる現場では、思い込みは特に危険です。

不注意

集中力や注意力の低下が起きるとエラーにつながります。長時間労働や単調な作業の繰り返し、周囲の騒音などが引き金になります。

建設現場では、同じ作業を長時間続ける鉄筋結束や型枠の建て込みなどで起こりやすく、また重機の稼働音が大きい環境では合図の聞き逃しにもつながります。

知識・経験不足

業務に必要な判断や対応ができないことでエラーにつながります。経験の浅い若手や、配置転換してきたばかりの作業者は、専門知識や手順を十分に把握できていないことが多いため、特に注意が必要です。

建設現場では、玉掛けや足場の組立てのように、正しい手順を知らないことが直接重大災害につながる作業が数多くあります。こうした業務の多くは、労働安全衛生法にもとづく特別教育や技能講習の受講が義務づけられています。

慣れによる気の緩み

同じ業務を長く続けるうちに、基本的な手順や確認作業を省略しがちになってエラーにつながるケースもあります。特にベテランに起こりやすいエラーです。

「これくらいは平気」「短時間だから」という判断が、墜落制止用器具の未使用や点検の省略につながります。経験が豊富なほど本人は危険を感じにくく、周囲も指摘しづらいため、対策が難しい類型といえます。

疲労・ストレス

過度な疲労やストレスが、集中力や判断力の低下につながってエラーが起こりえます。特に長時間労働や短い納期に追われる状況下では、エラーが起こりやすくなるため注意が必要です。

建設業では、繁忙期の連続勤務や、夏場の屋外作業による体力の消耗が重なることがあります。作業員の様子に変化がないか、職長が日常的に確認できる関係をつくっておくことが大切です。

ヒューマンエラーによる建設業の災害事例

ヒューマンエラーによる建設業の災害事例

ここでは、ヒューマンエラーによる建設業の災害事例をいくつか紹介します。実際の労働災害をもとに、ヒューマンエラーの危険性についてみていきましょう。

※出典:厚生労働省|建設業で実際に発生した死亡、または後遺障害を残す重篤な労働災害事例集

重機との接触による労働災害

1つ目の事例が、重機との接触による労働災害です。

当日の状況 重機が稼働する作業エリア内で、運転席を離れて書類を作成していた。誘導者の配置はなかった。
経過 ダンプがバックで接近→本人は「いつものようにクラクションの合図で止まるはず」と思い込み、危険箇所から離れなかった。そのまま轢かれて労働災害につながった。
エラーの種類 思い込みによる判断エラー(判断・決定の段階でのつまずき)
主な原因・教訓 「いつもどおり合図があるはず」という思い込み。運転中の重機の危険箇所には立ち入らせず、必要なときは誘導者を配置することが欠かせない。

クレーン作業中の荷崩れによる労働災害

2つ目の事例が、クレーン作業中の荷崩れによる労働災害です。

当日の状況 複数の鉄骨をクレーンでつり上げ旋回する作業。旋回方向のルールはあったが、オペレーターが交代したばかりだった。
経過 新しいオペレーターが旋回ルールを知らないまま逆方向へ旋回。つり荷が崩れて、作業者に激突、労働災害につながった。
エラーの種類 情報が届いていないことによる実行エラー(認知・確認の段階でのつまずき)
主な原因・教訓 決めていた作業ルールが交代者に周知されていなかったこと。担当が替わるときこそ、作業方法の共有を徹底する必要がある。

足場の組立・解体作業中の墜落による労働災害

3つ目の事例が、足場の組立・解体作業中の墜落による労働災害です。

当日の状況 高所での足場作業だったが、「すぐ終わる」「面倒だから」という認識で、墜落防止の措置がとられていなかった。
経過 墜落防止措置を省略したまま作業。途中でバランスを崩し墜落、死亡事故につながった。
エラーの種類 意図的な省略のため、厳密にはヒューマンエラーではなく不安全行動に該当
主な原因・教訓 短時間・手間を理由にした安全措置の省略。墜落制止用器具(安全帯)は、フックを単管や親綱に確実に掛けて初めて命を守れる。

3つの事例に共通すること

3つの事例に共通しているのは、いずれも個人の注意不足だけが原因ではないということです。

重機の事例では、誘導者が配置されていませんでした。クレーンの事例では、交代者への引き継ぎの仕組みがありませんでした。足場の事例では、短時間の作業でも安全措置を省略できない運用になっていませんでした。

つまり、いずれも「本人がもっと注意していれば防げた」で終わらせられる話ではなく、エラーが起きたときに事故を止める仕組みが現場になかったことが共通の背景にあります。

ヒューマンエラー対策を個人の意識の問題として扱うと、担当者が入れ替わったときに同じ災害が繰り返されます。次章では、仕組みとして取り組める対策をご紹介します。

ヒューマンエラーを防ぐための対策

ヒューマンエラーを防ぐための対策

ヒューマンエラーは、人間である以上ゼロにはできません。そのため対策は、「エラーを起こさせない」ことと「エラーが起きても事故に至らせない」ことの両面から考える必要があります。主な対策方法としては、以下の9つがあります。

  • エラーが起きても事故にしない仕組みをつくる
  • 危険予知(KY)活動を形骸化させない
  • 指差呼称を徹底する
  • ヒヤリハットを報告できる場をつくる
  • マニュアル・作業手順を整備する
  • リスクアセスメントで危険を事前に洗い出す
  • コミュニケーションを活性化する
  • 教育で知識不足によるエラーを減らす
  • 職場環境と工程を見直す

それぞれの内容について詳しく解説します。

エラーが起きても事故にしない仕組みをつくる

1つ目が、エラーが起きることを前提とした仕組みづくりです。考え方には大きく2つあります。

フールプルーフは、そもそも間違った操作ができないようにする考え方です。正しい向きでしか取り付けられない部品や、規定の手順を踏まないと起動しない機械が該当します。

フェイルセーフは、エラーや故障が起きたときに、安全な側に動くようにしておく考え方です。異常を検知すると自動的に停止する装置や、開口部に設けた手すり・幅木がこれにあたります。

建設現場でこの考え方を取り入れるなら、以下のような例が挙げられます。

  • 開口部には、養生を外しても即座に墜落しないよう手すりや安全ネットを併設する
  • 重機の作業範囲には物理的にバリケードを設置し、立ち入れなくする
  • 電源盤は施錠管理を行い、復電の判断ができる人を限定する
  • 親綱を先行して設置し、無胴綱の状態が生じないようにする

注意喚起や声かけだけに頼る対策は、忙しいときほど機能しません。物理的に間違えられない状態をつくることが、最も確実なヒューマンエラー対策です。

危険予知(KY)活動を形骸化させない

2つ目が「危険予知(KY)活動」です。KY活動とは作業前に潜在的なリスクを洗い出し、対策を共有する取り組みのことで、チーム全体として「どこにどんな危険が潜んでいるか」を共有します。建設現場では、朝礼後に作業班ごとに行うツールボックスミーティング(TBM)と組み合わせて実施されるのが一般的です。

ただしKY活動は、毎日繰り返すうちに形骸化しやすいという課題があります。前日と同じ危険項目を読み上げるだけになっていないか、全員が発言する機会があるか、その日の作業内容の変更が反映されているかを定期的に見直しましょう。

KY活動の具体的な進め方については、KYKとKYTとは?違いや建設現場での進め方を実例付きで解説で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

指差呼称を徹底する

3つ目が「指差呼称」です。確認すべき対象を指で差し、声に出して確認する方法で、目で見るだけの確認と比べて認知のエラーを減らせるとされています。

建設現場では、以下のような場面が指差呼称の対象になります。

  • 墜落制止用器具のフックを掛けたあと「フック掛けよし」
  • 重機の後進前に「後方よし」
  • 電源の遮断確認で「電源オフよし」
  • 玉掛けワイヤーの点検で「ワイヤー損傷なし」

慣れると省略されやすいため、職長が率先して行い、抜けている場面を指摘する運用が効果的です。

ヒヤリハットを報告できる場をつくる

4つ目が「ヒヤリハットの共有」です。ヒヤリハットとは、事故には至らなかったものの、危険を感じた出来事のことをいいます。「危なかった」で終わらせず記録・共有することで、同じ状況で起こり得た災害を未然に防げます。

重要なのは、報告した人が責められない仕組みにすることです。報告が個人の評価に結びつく運用では、報告そのものが上がってこなくなります。匿名で提出できる用紙やアプリを用意し、報告内容を朝礼で共有して対策につなげる流れをつくりましょう。

報告件数が多い現場ほど危険というわけではありません。むしろ、報告が上がってこない現場のほうが、危険が見えていない可能性があります。

マニュアル・作業手順を整備する

5つ目が「マニュアル・作業手順」の整備です。作業手順や注意点、よくあるミスをまとめておくことで、誰が作業しても一定の品質を保てます。

特に建設現場では、初めて従事する作業者への指導なども起こりうるものなので、分かりやすく作成しておくことが大切です。あわせて、変更があれば最新の内容に更新し、その変更を全員に確実に伝える仕組みまでを含めて設計してください。手順書が更新されていても、現場の作業員が旧版を見ていては意味がありません。

リスクアセスメントで危険を事前に洗い出す

6つ目が「リスクアセスメント」です。作業に潜む危険性や有害性を洗い出し、その重篤度と発生可能性から優先度を評価したうえで、対策を講じる手法をいいます。

KY活動が「その日の作業」を対象とするのに対し、リスクアセスメントは工事全体や作業計画の段階で危険を評価する点が異なります。両方を組み合わせることで、計画段階と実施段階の両面から備えられます。

進め方については、リスクアセスメントとは?建設現場での進め方と実例をわかりやすく解説をご覧ください。

コミュニケーションを活性化する

7つ目が「コミュニケーションの活性化」です。報告・連絡・相談を密に行うことで、指示や情報の伝達ミスを減らせます。

重層下請構造の建設現場では、誰から誰へ、いつまでに伝えるのかをあらかじめ決めておくことが特に重要です。口頭だけに頼らず、変更事項は掲示や書面で残す運用を併用しましょう。疑問や意見を言い合えるオープンな職場環境づくりも、結果的にヒューマンエラーの防止につながります。

報連相の具体的な進め方は、報連相とは?意味や重要性、現場で活かすポイントを徹底解説で解説しています。

教育で知識不足によるエラーを減らす

8つ目が「教育」です。知識不足によって起こるエラーは、適切な教育によって確実に減らせます。

現場に初めて入る作業員には、その現場固有のルール、危険箇所、緊急時の連絡方法を伝える新規入場者教育が行われます。作業員の入れ替わりが多い建設現場では、この教育の質がそのまま安全レベルに直結します。

また、危険または有害な業務については、労働安全衛生法にもとづく特別教育の受講が義務づけられています。足場の組立て等、高所作業車の運転、玉掛けなどが該当します。法令上の義務であると同時に、最も効果の高いヒューマンエラー対策の1つです。

職場環境と工程を見直す

9つ目が「職場環境と工程の見直し」です。温度・照明・騒音・作業スペースなど、身体的・精神的な負担を減らす環境を整えることもヒューマンエラーの防止につながります。

あわせて確認したいのが工程です。作業員が焦っている現場では、確認の省略が起こりやすくなります。工程に遅れが生じたときに、安全措置を削ることで帳尻を合わせる形になっていないかを見直してください。現場で働く人の意見を聞きながら随時改善を重ねることが大切です。

現場の整理整頓については、5S活動とは?建設現場での目的や進め方、実践事例をわかりやすく解説もあわせて参考にしてください。

安全管理の基本

ヒューマンエラー対策と労働安全衛生法

ポイント

ヒューマンエラー対策は、事業者の努力目標であるだけでなく、法令上の義務と結びついています。建設業に関係する主な規定は以下のとおりです。

規定 主な内容
労働安全衛生法 第59条 雇入れ時および作業内容変更時の安全衛生教育、危険有害業務に従事する労働者への特別教育
労働安全衛生法 第60条 職長等に対する安全衛生教育
労働安全衛生法 第28条の2 危険性または有害性等の調査(リスクアセスメント)と、その結果にもとづく措置
労働安全衛生法 第30条 特定元方事業者による、混在作業に関する連絡調整等の措置

これらの規定に共通しているのは、「気をつける」という個人の心がけに頼るのではなく、教育の実施、危険の事前評価、作業間の連絡調整を仕組みとして回すことを求めている点です。

本記事でご紹介した対策の多くは、法令上も求められている取り組みと重なります。自社の現場でこれらが形として運用できているかを、あらためて確認してみてください。

CIC日本建設情報センターの安全管理講習セット

CIC日本建設情報センターの安全管理講習セット

CIC日本建設情報センターでは、「安全管理の基本」講座をWeb形式で提供しています。新入社員・現場未経験者の不安と、教育担当・先輩社員の悩みを解消する内容となっており、安いコストで安全管理のリテラシーを高められるのが特徴です。

本記事でご紹介したヒューマンエラー、KY活動、リスクアセスメント、5S活動といった内容を体系的に学べます。講習の内容に関しては、以下のとおりです。

科目・範囲 講習時間
1.報連相 17分
2.ヒューマンエラー 16分
3.リスクアセスメント 21分
4.5S活動 20分
5.KYKとKYT 17分
6.建設現場で身近な保護具 13分
7.メンタルヘルス 15分
8.災害事例・災害時の対応 14分
9.季節の労働災害 17分
10.安全衛生標識 12分
合計 2時間40分

また、CIC日本建設情報センターのWeb講座は、以下の手順で受講できます。

  1. CIC日本建設情報センターのWeb講座に申し込む
  2. 入金確認後、メールでログイン情報が送付される
  3. 受講(視聴)が開始する
  4. 受講完了後、修了証を受け取る

CICの講座では顔認証システムを採用しており、受講者が画面の前にいない場合は学習が進まない仕組みです。このため、講座を修了した時点で「受講者本人がしっかりと受講を終えた」ことを証明できます。

受講方法でお悩みの場合は、ぜひCIC日本建設情報センターの講座をご検討ください。

安全管理の基本

まとめ

まとめ

ヒューマンエラーとは、意図せず生じてしまう人間の行為のことです。やり忘れによるものとやり間違いによるもの、認知・判断・行動のどの段階で起きたものかに分けて捉えることで、必要な対策が具体的に見えてきます。

建設業には、重層下請構造による伝達の劣化、混在作業、日ごとに変わる作業環境、屋外環境による能力低下といった、固有の発生要因があります。これらは個人の注意力では解消できないため、仕組みによる対策が欠かせません。

実際の災害事例が示しているのは、いずれも「エラーが起きたときに事故を止める仕組み」が現場になかったということです。KY活動やリスクアセスメント、指差呼称、ヒヤリハットの共有、そして適切な教育を組み合わせ、エラーが起きても災害に至らない現場をつくっていきましょう。

CIC日本建設情報センターでは、「安全管理の基本」講座と「建設現場入門講座 現場デビュー前(講座5本セット)」講座をWeb講座の形式で提供しています。労働災害の防止につながる重要な内容ですので、ぜひ受講をご検討ください。

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