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クレーンの運転の業務に係る特別教育の重要性と、災害事例から学ぶ作業環境と安全意識

公開日:2025年9月30日 更新日:2025年9月30日

クレーンの運転の業務に係る特別教育の重要性と、災害事例から学ぶ作業環境と安全意識

建設現場で重要な役割を担うクレーンの運転業務。労働安全衛生法により、つり上げ荷重5トン未満のクレーン運転には特別教育の受講が義務付けられています。しかし、適切な知識や技能を身につけていないと、重大な労働災害につながる危険性があります。

この記事では、クレーンの運転業務に係る特別教育の重要性について、実際の災害事例を交えながら解説します。事故の原因分析から現場での安全対策、効果的な教育方法まで詳しくご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。


CICクレーンの運転の業務に係る特別教育

目次

クレーンの運転の業務に係る特別教育の重要性

クレーンの運転の業務に係る特別教育の重要性

建設業における労働災害の中でも、クレーンに関連する事故は特に深刻な問題となっています。クレーンの運転、玉掛け、合図などの作業は高い専門性と安全意識を要求される業務であり、不適切な運転は重篤な災害を招く可能性があります。

労働安全衛生法第59条第3項および労働安全衛生規則第36条に基づき、つり上げ荷重が5トン未満のクレーンの運転の業務に従事する労働者に対しては、特別教育の実施が義務付けられています。この特別教育は、クレーンの構造や運転方法、安全な作業手順、関連法令等について理解を深め、現場での災害防止を図ることを目的としています。

クレーン関連の労働災害は建設業における重大な課題となっており、厚生労働省の統計によると、建設業での死亡災害のうち、建設機械(クレーン等)による災害が一定の割合を占めています。これらの統計からも、クレーンの運転に従事する労働者への適切な教育の必要性が明らかです。

クレーンの運転業務に関する代表的な災害事例

クレーンの運転業務に関する代表的な災害事例

事例1:「工事用ジブクレーンの解体作業中に挟まれ災害」

発生状況

山中の送電線鉄塔新設工事現場で、工事用ジブクレーンの解体作業中に発生。工事長の代理として指名された作業者Bの指揮下で解体開始。5人がジブ解体作業中、作業者Cが一人で旋回フレーム上部のAフレーム解体を実施。

事故の原因

作業者Cが単独でAフレーム解体作業を実施し、右側フレームのロックピンをハンマーで叩いて外した際、適切な支持措置を講じていなかった。また、復職後の経験不足と安全手順の軽視が重なった。

結果

重量約1.2tのAフレームが突然倒れかかり、作業者CがAフレームとの間に挟まれ亡くなった。そして、工事進行の遅延と現場の安全管理体制見直しが必要となった。

防げたポイント

Aフレーム解体時の適切な支持・固定措置の実施、復職者への十分な安全教育と作業手順確認、並びに単独作業の禁止と複数人での作業実施、作業指揮者による継続的な安全監視体制の確立があれば未然に防ぐことができた。

参考:日本クレーン協会 クレーンの災害事例

事例2:「天井クレーン点検作業中の挟まれ災害」

発生状況

工場内において、天井クレーン(つり上げ荷重6.3t)のクレーンガータ上にある横行装置用近接スイッチの点検及び調整作業を行っていた。クレーンガータ上にいた点検作業員が操作室のクレーン運転士に合図を送り、横行装置を動かしたところ、点検作業員が給電ケーブルの支柱と横行装置に挟まれた。

事故の原因

労働者が挟まるおそれのある状態で天井クレーンを動かしたこと。点検作業中の危険範囲の認識不足と、運転士と点検作業員間の安全確認体制が不十分であった。また、点検作業時の安全手順が明確に定められていなかった。

結果

点検作業員が給電ケーブルの支柱と横行装置に挟まれ、重篤な外傷を負った。工場の生産活動が一時停止し、安全管理体制の全面的な見直しが必要となった。

防げたポイント

点検作業時のクレーン運転禁止措置の徹底、挟まれ危険箇所の事前確認と立入禁止措置の実施、運転士と点検作業員間の明確な安全確認手順の確立があれば未然に防ぐことができた。

参考:「令和3年におけるクレーン等の災害発生状況」表5 死亡災害事例 No.7(厚生労働省 労働基準局 安全衛生部 安全課)

事例3:「天井クレーンによる金型片付け作業中の挟まれ災害」

発生状況

製造現場で天井クレーン(定格40t)を使用し、プレス機械の金型(重量約35t)の片付け作業中に発生。玉掛け指揮者の指示下で金型を地切りした際、金型がボルスタのロケートピン(位置決めピン)から外れて振れ動いた。

事故の原因

クレーンの誤操作が主要因と推定される。また、わずかなセンターずれ等の複合的な要因も関与した可能性がある。金型の重量が大きく、位置決めピンから外れた際の振れ止め対策が不十分であった。

結果

振れた金型と隣の工程設備との間に、玉掛け指揮者と隣工程の段取り作業者の計2名が挟まれる災害が発生。作業現場の安全管理体制の抜本的見直しが必要となった。

防げたポイント

クレーン操作者への十分な技能訓練と操作手順の徹底確認、重量物の地切り時における振れ止め対策の実施、作業エリアの立入禁止区域設定と作業者の適切な配置、並びに玉掛け作業における合図方法の標準化と複数人でのダブルチェック体制の確立があれば未然に防ぐことができた。

参考:「令和3年におけるクレーン等の災害発生状況」表5 死亡災害事例 No.15(厚生労働省 労働基準局 安全衛生部 安全課)

事故の背景・原因分析

事故の背景・原因分析

災害事例を分析すると、クレーン運転業務での挟まれ・巻き込まれ災害には以下の共通する根本的な問題が浮かび上がってきます。

1.ハード面(設備・機器)の問題

①支持・固定設備の不備:解体作業時の適切な支持措置や振れ止め装置が設置されていない。

②安全装置の機能不全:近接スイッチの不適切な配置や、重量物取扱い時の安全機構の欠如。

③作業環境の危険性:給電ケーブル支柱等の固定構造物と可動部分との間に挟まれ危険箇所の存在。

2.ソフト面(管理・手順)の問題

①作業計画・手順の不備:点検作業時のクレーン運転停止措置や、解体作業における詳細な安全手順書の未整備。

②現地確認の不足:作業開始前の危険箇所確認や、運転士と作業者間での安全確認体制の不備。

③連絡調整の不備:作業指揮者による継続的な安全監視体制の欠如や、合図方法の標準化不足。

3.人的要因の問題

①単独作業の実施:複数人での作業が必要な危険作業を一人で実施する判断ミス。

②経験不足・慣れ:復職後の安全手順軽視や、長期勤務による危険感覚の麻痺。

③不安全行動:挟まれる可能性のある危険範囲への立入りや、適切な立入禁止措置の無視。

クレーンの運転業務による災害を防ぐための現場対策と教育

クレーンの運転業務による災害を防ぐための現場対策と教育

1.作業前の準備・計画段階

災害を未然に防ぐためには、作業開始前の十分な準備と計画が最も重要です。

作業計画の策定

①詳細な作業計画書の作成とクレーン運転・玉掛け作業手順の明確化

②吊り荷の重量・形状・重心位置の事前確認と適切な玉掛け方法の検討

③作業半径・旋回範囲・立入禁止区域の設定と関係者との打合せ実施

現場環境の事前確認

①クレーン設置場所の地盤状況、架空線の有無、障害物の位置等の詳細確認

②作業エリアの照明設備、通路の確保、緊急時の避難経路の設定

③天候条件の確認と強風・降雨時の作業中止基準の明確化

④必要に応じた事前点検と改善措置の実施

2.作業実施段階での安全対策

作業中における安全対策の確実な実行が、重大災害の発生を防ぐ鍵となります。

管理体制の確立

①技能講習(特別教育)を修了したクレーン運転士と玉掛け技能講習修了者の必須配置

②適切な作業指揮者による運転操作の監視と安全指導の実施

③作業開始前の関係者全員による現地での安全点検とKY活動

④運転士・玉掛け作業者・合図者間の確実な連絡体制の確立

挟まれ・激突防止対策の徹底

①吊り荷の下および旋回範囲への作業者の立入禁止措置の徹底

②重量物取扱い時の振れ止めロープの確実な使用

③点検・整備作業時のクレーン運転禁止措置と電源遮断の実施

機械・設備の安全確認

①クレーンの始業前点検による過負荷防止装置・ブレーキ等の機能確認

②ワイヤロープの点検とスリング等玉掛け用具の損傷確認

③合図方法の統一と確実な合図の励行

④非常停止装置の動作確認と緊急時対応手順の確認

3.作業完了後の維持管理

クレーン作業完了後も継続的な点検と維持管理により、安全性を持続することが不可欠です。

作業完了時の確認

①吊り荷の確実な据付けと玉掛け用具の適切な取り外し確認

②クレーンの原位置復帰と電源遮断等の終業時点検実施

③作業エリアの整理整頓と立入禁止措置の解除確認

④作業記録の作成と安全管理状況の記録保持

定期点検体制

①法定の月例点検・年次点検の確実な実施と記録管理

②異常発見時の使用中止と必要な修理・整備を行う体制整備

③定期的な安全装置の機能確認と維持管理

4.教育・訓練の充実

災害事例から学んだ教訓を活かした実践的な教育・訓練が、安全文化の醸成につながります。

特別教育の実践的実施

①クレーンの構造・性能と安全装置の機能に関する正確な知識習得

②玉掛け作業における重心計算と適切なスリング角度の実技訓練

③合図方法の統一と緊急時の対応手順の習得

④災害事例を踏まえた危険予知能力の向上と実践的な内容での実施

技能向上と安全意識の醸成

①座学による法令知識習得と実際のクレーンを使用した実技訓練

②具体的なクレーン運転技能・玉掛け技能の習得と危険感受性の向上

③ベテラン作業者の「慣れ・慢心」防止のための継続的な安全教育

④新規入場者に対する現場特有の危険要因と安全対策の周知徹底

安全管理体制の構築

①作業指揮者による不安全行動の監視と適切な安全指導の実施

②組織としてクレーン安全管理に取り組む体制の構築と責任の明確化

③災害事例の共有と再発防止対策の水平展開による組織的学習の促進

まとめ

まとめ

「クレーンの運転の業務に係る特別教育」は、建設現場における重大災害を防ぐための重要な取組みです。過去の災害事例から明らかになったように、技術的知識の不足、不適切な作業手順、安全管理体制の不備等が複合的に作用して重篤な事故が発生しています。

これらの災害を防ぐためには、以下の取り組みが不可欠です。

  • 法令に基づく特別教育の確実な実施
  • 現場における安全対策の徹底
  • 継続的な教育・訓練の実施
  • 安全管理体制の確立等

特に、作業者一人ひとりが安全に対する高い意識を持ち、適切な知識と技能を身につけることが最も重要です。

建設業に従事する全ての関係者が協力して、クレーン関連災害の撲滅に向けた取組みを継続することにより、安全な職場環境の実現を目指していく必要があります。災害事例から学んだ教訓を活かし、同様の事故を二度と発生させないための努力が求められています。

CIC日本建設情報センターでは、法令に基づく「クレーンの運転の業務に係る特別教育」を実施しており、経験豊富な講師陣による実践的な教育プログラムを提供しています。現場での安全確保と災害防止のため、ぜひCICの特別教育の受講をご検討ください。


CICクレーンの運転の業務に係る特別教育

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