建設業における労働災害による死亡者数は、中長期的には減少傾向にあるものの、現在においても年間200〜300名以上の死亡災害が発生している状況です。労働災害を防止するためには、作業者に安全教育を受講してもらったり、現場の環境を改善したりして安全に対する意識づくりを徹底する必要があります。
この記事では、建設業での労働災害を防ぐために実施される安全教育の重要性について解説します。ほかにも、建設業の現状や無事故を支えるための環境整備についても触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
公開日:2025年6月9日 更新日:2025年6月9日
建設業における労働災害による死亡者数は、中長期的には減少傾向にあるものの、現在においても年間200〜300名以上の死亡災害が発生している状況です。労働災害を防止するためには、作業者に安全教育を受講してもらったり、現場の環境を改善したりして安全に対する意識づくりを徹底する必要があります。
この記事では、建設業での労働災害を防ぐために実施される安全教育の重要性について解説します。ほかにも、建設業の現状や無事故を支えるための環境整備についても触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
建設業における労働災害による死亡者数は、中長期的には減少傾向にあります。ただし、ここ数年は減少が鈍化しており、年間200〜300名以上の死亡災害が発生している状況です。
全産業に対して建設業の占める割合は30%以上と最も多く、建設現場の安全対策は依然として重要な課題となっています。事故の種類別にみると、墜落・転落が最も多く、次いで交通事故や飛来・落下事故が多い傾向です。
建設業では、屋根や足場、構築物などさまざまな箇所で労働災害が生じる可能性があります。作業者に対しては一人ひとり安全教育を受講する、KY活動や作業手順の順守を徹底するなど無事故を継続するための意識づくりが大切です。
建設業において労働災害は、依然として重要な課題であることがわかりました。では、実際に起こりうる労働災害にはどのようなものがあるのでしょうか。
建設業における労働災害の事例として、主に以下の種類にわけられます。
ここでは、それぞれの事例について詳しく解説します。
建設現場では、特に夏場の屋外作業において熱中症のリスクが高まります。建設業の熱中症事例として、以下のような報告があります。
▼事例1
事例 | 防水工が作業終了後、宿舎に戻ってから熱中症を発症 |
---|---|
発生状況 | 既設屋根の改修工事において、断熱防水ウレタン吹付作業後の清掃や養生を行った。薄日が差し風のある状況(最高気温 31.6 度、風速 3m 程度で午前中は日照があった)で作業を終了し、徒歩で現場近くの宿舎に戻った。その後、同僚が異変に気付き救急車で病院へ搬送した。 |
事例-47
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000609004.pdf
屋外で従事することの多い建設業では、熱中症のリスクも考慮しなければなりません。作業着手時には熱中症対策も求められるでしょう。
また、6月からは熱中症の重篤化を防止するため、「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が事業者に義務づけられます。熱中症による労働災害を防止するため、事業者は把握しておきましょう。
建設現場では、墜落・落下事故のリスクも伴います。建設業の墜落・落下事例として、以下のような報告があります。
▼事例1
事例 | 手すり先行足場の組立作業中5段目から墜落 |
---|---|
発生状況 | 被災者は護岸工事施工のための手すり先行工法による足場組立作業を行っていた。5段目の建枠を設置しようとしたところ、バランスを崩し墜落した。なお、被災者は安全帯を着用していたが、使用していなかった。 |
事例-2
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000609004.pdf
▼事例2
事例 | 養生用枠組足場を大払しする作業で、足場上から墜落 |
---|---|
発生状況 | 清掃工場解体工事における養生用枠組足場の大払し作業で、外側に防音パネルを設置したまま2段6スパンのユニットを揚重中、外側連結ピンが外れないため被災者が外しに行ったところ、最後の1本のピンが抜けてユニットが跳ね上がり、とっさに掴もうとしたが掴み損ね足場上から墜落した。被災者は安全帯を使用していなかった。 |
事例-3
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000609004.pdf
墜落・落下事故は、建設業で生じる労働災害の中で最も起こりうるものです。安全帯の未装着や情報共有ができていなかったなどが原因として挙げられるため、適切な対処方法を考える必要があります。
建設現場では、荷崩れや落下物による労働災害が生じる恐れがあります。建設業の崩落・倒壊事例として、以下のような報告があります。
▼事例1
事例 | 残置されていた受台コンクリート塊が落下し、頭部に接触 |
---|---|
発生状況 | 新設するボックスカルバートと直行する位置に既設原水管が設置されていたため、ボックスカルバートに干渉する部分は取り壊され、干渉しない部分の受台コンクリートは残置されていた。被災者は土留め施工のため、受台コンクリート直下の地盤改良体の斫り作業を行っていた。残置されていた受台コンクリート塊が支えきれず崩落し、直下で斫り作業をしていた被災者の頭部に落下し接触した。上部の受台コンクリートは地中部において目地材で縁が切れていたが、被災者はつながっていると勘違いしていた。 |
事例-21
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000609004.pdf
▼事例2
事例 | 積荷が荷崩れし、積荷の下敷きに |
---|---|
発生状況 | キャスター付きカゴ台車の返却作業において、フォークリフトを使用してトラックの荷台に台車を積込んだ後、位置を調整するため、キャスターのストッパーを外して荷を押したところ、荷が動き荷台から外れそうになった。そのため、手で押さえるため被災者は荷に近づき、荷崩れを起こした荷の下敷きになった。 |
事例-28
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000609004.pdf
崩壊・倒壊事故も、作業計画や作業手順に不備があると起こりうるものです。現場の管理体制を見直し、労働災害が生じないよう対処する必要があります。
建設業では、はさまれ・巻き込まれによる事故や感電事故なども考えなければなりません。それぞれの事例として、以下のような報告があります。
▼事例1
事例 | 旋回したドラグ・ショベルの後部とフレコンバッグの間に挟まれ |
---|---|
発生状況 | 被災者は、つかみ機を装着した 0.7㎥ドラグ・ショベルがフレコンバッグの中の土砂を取り出す作業の手元を行っていた。被災者がドラグ・ショベルの後方へ移動したときに、ドラグ・ショベルが右旋回し、ドラグ・ショベルの左後部とフレコンバッグの間に挟まれた。 |
事例-29
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000609004.pdf
▼事例2
事例 | 照明器具の配線接続作業で感電 |
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発生状況 | 被災者は同僚と2人で、天井裏で5階洗面台の照明器具の配線接続作業を行っていた。EPS 内にいた同僚は、被災者の声がしないので確認に行ったところ、被災者が倒れているのを発見した。(現認者なし。)被災者は救急車で運ばれたが、病院で死亡が確認された。 |
事例-44
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000609004.pdf
いずれも作業手順の不完全さや危険個所に触れてしまう、立ち入ってしまうことが原因で生じています。
建設業では、環境不整備による事例も生じています。それぞれの事例として、以下のような報告があります。
▼事例1
事例 | 密閉した部屋で発電機を使用して一酸化炭素中毒 |
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発生状況 | 被災者は正午の休憩に入る前に、3階の屋内非常階段に設置されている投光器用の発電機の電源を一人で切りに行った。同僚は13時の作業開始時に作業箇所の投光器の電気がついていないため、発電機の設置場所を見に行ったところ、被災者が発電機の横で倒れているのを発見した。 |
事例-49
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000609004.pdf
酸素欠乏症やばく露による労働災害も健康に影響を及ぼす可能性があります。そのため、必要に応じて安全教育を実施するなど、適切な措置が求められるでしょう。
ここまで、建設業における労働災害の発生状況や具体的な事例について解説しました。労働災害の発生を防止するためには、安全衛生教育や特別教育などの講習を受講して、正しい知識・技術力を身につけることが大切です。
建設業に従事する方が受けるべき教育・講習には以下が挙げられます。
ここからは、それぞれの内容について詳しく解説します。
安全衛生教育とは、労働者が対象の作業に着手する上で必要な知識・技術を身につけるための講習です。建設業においては、以下のような安全衛生教育があります。
安全衛生教育は、厳密にいえば受講が義務づけられているわけではありません。ただし、労働災害防止の観点から受講が強く推奨されています。対象業務の作業に着手する可能性のある方は、必ず安全衛生教育を受講しておきましょう。
特別教育は、作業現場や事業場内で行う業務の中で、労働災害発生の危険性が高いと判断された業務に対し受講が義務づけられている講習のことです。特別教育は、その業務に従事するすべての従業員に受講義務があります。
建設業においては、以下のような特別教育があります。
特別教育は受講が義務づけられているため、未受講者が作業に着手すると罰則が適用される恐れがあります。労働災害の観点からも非常に危険なので、必ず受講を終えた方のみ作業に着手しましょう。
技能講習も同様に、受講することで特定の業務に就けるようになる講習です。
特に知識が求められる業務や、危険性の高い業務に関して設定されており、受講後に「免許」を取得するケースの講習も存在します。
建設業においては、以下のような技能講習があります。
技能講習では、受講修了後に認定試験が実施されます。その認定試験に合格することで資格取得が可能です。
能力向上教育は、安全衛生業務従事者に対して実施される講習です。業務を遂行するにあたって必要な能力を向上させることを目的に実施されます。
建設業においては、能力向上教育があります。
能力向上教育は、新規で対象業務に従事する方に実施する「初任教育」、定期的に受講を推奨する「定期教育」、作業内容や設備機器の変更などに合わせて行う「随時教育」の3種類にわかれます。いずれも大切な講習なので、受講して知識・技術力をアップデートしていきましょう。
ここでは、安全教育の重要性について解説していきます。
教育不足が招く作業ミスや労働災害、現場に出る前にどんな教育が必要なのかご紹介しますので、参考にしてみてください。
建設業における労働災害の多くは、作業員の安全に配慮できていない行動や作業環境・手順に関する知識不足が原因です。
例えば、熱中症の事例では経験が浅く熱中症への認識の甘さ、墜落・転落事例では、安全帯の未使用・開口部の危険性に対する安全意識の低さ・作業手順の誤りなどが原因で労働災害につながります。
建設業を含めて現場で起こりうる労働災害は、リスクを正しく認識したり、危険性を回避するための必要な知識・行動を身につけるための講習を受講したりすることで防ぎやすくなります。特別教育や安全衛生教育などの受講は、労働災害発生を防止するために最も重要なことといえるでしょう。
現場に出る前に必要な教育は、従事する作業によって異なります。従事する作業を基準に安全衛生教育や特別教育、技能講習を確認しましょう。
例えば、フルハーネス型墜落制止用器具を使用しての高所作業や、特定の車両系建設機械の運転、足場の組立て等の作業主任者といった業務は、それぞれで講習の受講が必要です。ほかにも、新規採用者や作業内容が変更された労働者には、能力向上教育を受講してもらいましょう。
ほかにも、現場固有の危険性や作業手順を共有するための新規入場者教育や作業開始前のKY活動(危険予知活動)も、現場に出る直前に大切な行動です。作業計画・手順の周知不足、KY活動の内容不足が労働災害につながる恐れもあるため、作業者全員が現場特有のリスクを理解して安全に作業を進められるように改善しましょう。
建設業で無事故を継続するためには、日々の積み重ねが欠かせません。1日・数日単位でなく中長期的にみて、労働災害が発生しないための意識・環境づくりが求められます。
ここからは、制度・設備の整備の重要性や安全を整える意識づくりについて解説します。
建設業において、労働災害を防いで無事故の状態を続けるためには、個々の作業員の安全意識だけでなく安全を確保するための制度や設備の整備が不可欠です。
例えば、墜落防止対策としては足場の設置が原則となります。
設置が困難な場合は墜落制止用器具(安全帯)の使用が必須です。墜落制止用器具は新規格のものを使用し、フルハーネス型を基本としつつ、高さに応じた適切な型を選定する必要があります。
熱中症対策としては、熱中症予防設備の設置(クーラーボックス、扇風機等) や、遮光ネット、ドライミスト、散水などの環境改善設備が挙げられます。ほかにも、安全帯の普及に向けた取り組みとして、特定の工事や工種でハーネス型安全帯の使用を義務づけているケースがあることも挙げられます。
このように、労働災害の防止に向けた環境の整備が非常に大切です。
労働災害発生を防止するためには、制度や設備だけでなく、作業に携わるすべての人が安全を常に意識しなければなりません。意識づくりとして挙げられる活動は、「KY活動(危険予知活動)」と「作業手順・計画の確認と遵守」です。
危険予知活動では、作業開始前や作業内容の変更時、現場の状況を確認して潜む危険性を予測・評価し、対策・措置を考えます。危険予知の内容が不十分であるがゆえに労働災害につながる恐れもあるため、作業前には関係者全員で実施することが大切です。
次に、作業手順や計画の確認と遵守ですが、手順の不順守や計画の検討不足が原因で生じる労働災害を防ぐために大切とされています。日々の点検や確認を始め、危険箇所への立ち入りをしない、保護具を必ず正しく使用するなど、労働者一人ひとりの安全行動に関する意識が求められます。これらの意識づくりも兼ねて、安全衛生教育や特別教育、能力向上教育などが必要となるわけです。
この記事では、建設業での労働災害を防ぐために実施される安全教育の重要性について解説しました。
建設業における労働災害による死亡者数は、中長期的には減少傾向にあるものの、今もなお年間200〜300名以上の死亡災害が発生している状況です。全産業に対して建設業の占める割合は30%以上と最も多いため、労働災害の防止が大きな課題といえるでしょう。
労働災害を防止するためには、作業者に安全教育を受講してもらったり、現場の環境を改善したりして安全に対する意識づくりを徹底する必要があります。
CIC日本建設情報センターでは、建設業におけるさまざまな資格のWeb(オンライン)講座を提供しております。受講者がモチベーションを維持しながら効率的に学習できる内容ですので、安全教育の受講方法にお悩みの場合は、ぜひご検討ください。
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