
建設業で働く方の中で、「独立して一人親方になろうか迷っている」「一人親方と個人事業主は、何が違うのだろう」などの疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
一人親方は建設業では身近な働き方ですが、法律上の立場や制度ごとの扱いは、意外と正確に知られていません。さらに、2027年4月からは、一人親方自身にも安全衛生の義務が課される大きな法改正が控えています。Web講座などを活用して計画的かつスムーズに受講を進めることが大切です。
この記事では、一人親方の定義や労働者との違い、メリット・デメリット、独立の手続きから、2027年の法改正で何が変わるのかまでをわかりやすく解説します。現在一人親方として働いている方・これから一人親方としての働き方を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

一人親方とは?

一人親方とは、労働者を雇わずに、自分自身(と家族)だけで事業を行う事業主のことです。建設業では、大工・左官・とび職などが典型的な例で、元請や工務店から仕事を請け負って働きます。
まずは、一人親方の概要について詳しく解説します。
「一人親方」の扱いは制度によって変わる
同じ「一人親方」でも、どの制度の話をしているかによって扱いが変わる点には注意が必要です。主な制度と扱いについて以下の表を参考にしてください。
たとえば、繁忙期だけ手伝いを雇う親方は、労災保険では一人親方等でも、安全衛生法上は「事業者」として扱われることがあります。どの制度でどういう扱いになるかは、しっかりと把握しておくことが大切です。
個人事業主・一人親方・フリーランスの違い
似た言葉として「個人事業主」「フリーランス」がありますが、それぞれ視点が異なります。主な違いは、以下のとおりです。
- 個人事業主:税務上の区分。法人を設立せずに事業を行う人全般
- 一人親方:主に建設業で使われる呼称。労働者を雇わず現場で働く職人
- フリーランス:特定の組織に属さない働き方の呼称。業種を問わない
建設業の一人親方は、税務上は個人事業主であり働き方としてはフリーランスでもある、というような位置づけになります。
一人親方と労働者(従業員)の違い

以下の表は、一人親方と会社に雇われる労働者(従業員)の違いを表でまとめたものです。
最大の違いは、一人親方が「請負」で仕事を受ける事業主である点です。そのため、労働基準法や労災保険法による労働者としての保護は、原則として受けられません。特別加入などが必要となります。
国が示す一人親方の考え方

国土交通省は、「規制逃れを目的とした一人親方化」を問題視しています。社会保険料の負担を避けるためなどに、実態は雇用であるにもかかわらず一人親方として扱う行為は、認められないという方針です。
例えば、国土交通省が示す「雇用契約を結ぶべきケース」として、次のようなものが挙げられます。
- 特定の企業の業務に専属的に従事している
- 労働日や始業・終業時刻を指定されている
- 作業方法について具体的な指揮命令を受けている
- 報酬が就業した時間に応じて支払われているのに、契約上は請負としている
あわせて、「適正な一人親方」の目安として、実務経験年数が10年程度未満、またはCCUS(建設キャリアアップシステム)のレベル3相当未満の技能者が一人親方として扱われている場合は、処遇改善・技能向上の観点から、雇用契約の締結や社会保険への加入を促す考え方が示されています。
つまり、国は「一定の技能を身につけてから独立する」ことを適正な一人親方の姿と捉えているわけです。独立を考える際は、自分の経験と技能の水準も踏まえて判断しましょう。
一人親方として働くメリット・デメリット

一人親方として働くことを考えるのであれば、メリット・デメリットの把握は欠かせません。特に、デメリットの部分も踏まえて判断しなければ、独立後に思わぬ自体につながる恐れがあります。
ここでは、一人親方として働くメリット・デメリットの両方を解説します。
メリット
一人親方として働くメリットは、以下のとおりです。
- 収入が実力・成果に直結する:請け負った仕事の分だけ収入になるため、腕と実績次第で伸ばせる
- 仕事や働く時間を選べる:受ける仕事や稼働日を自分で決められる
- 人間関係の自由度が高い:会社組織の人間関係に縛られにくい
自由な働き方が実現できる観点や実力・成果が収入面に直結しやすい点が魅力といえます。自分のやり方でキャリアを積みたい方におすすめといえるでしょう。
デメリット
一方で、一人親方には以下のようなデメリットもあります。
- 収入が不安定:仕事が途切れれば収入も途絶える
- 労災・社会保険を自分で備える必要がある:労災保険は特別加入、健康保険・年金は国民健康保険・国民年金への加入が必要
- 確定申告など事務負担が大きい:経理・税務・請求をすべて自分で行う
- 安全衛生の義務を自分で負う必要がある(2027年4月〜):これまで事業者が担っていた特別教育の受講などが、一人親方自身の義務になる
とくに、最後の安全衛生義務化を一人で背負わなければいけない点は、これからの一人親方にとって見逃せない変化です。義務を果たすためにも、必要な教育をWeb講座などを活用して計画的に受けることが大切になります。
なお、年収の実態については、別記事『一人親方の年収はいくら?手取りの実態と収入を上げる方法を解説』で詳しく解説しています。
【重要】2027年4月から一人親方自身にも安全衛生の義務が課される

2025年(令和7年)5月に公布された「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」により、2027年(令和9年)4月1日から、一人親方を含む個人事業者等自身にも、安全衛生に関する義務が課されることになりました。
これまで安全衛生の義務は、原則として「事業者が労働者に対して」負うものでしたが、今回の改正は、一人親方自身が義務を負うという点で、大きな転換といえます。ここでは、安全衛生の義務化の内容についてみていきましょう。
安全衛生の義務内容
以下の表は、安全衛生の義務についてまとめたものです。
なお、事業者が定める立入禁止などの安全衛生上の事項を守る義務や、元方事業者の指示に従う義務については、2026年4月1日からすでに一人親方等にも適用されています。2027年4月の改正と合わせて、段階的に義務が広がっている点は把握しておきましょう。
対象になるのは「労働者と同じ場所で作業する場合」
安全衛生の義務は、労働者と同じ場所で作業を行う場合に課されます。労働者が一人もいない現場での単独作業は、義務の対象外です。
ただし、従業員を少人数雇っている親方や、一人法人の代表者も対象になり得ます。「自分は法人にしているから関係ない」とは限らないため、注意が必要です。
また、特別教育については、免許保有者や技能講習修了者など十分な知識・技能があると認められる場合には、科目の全部または一部を省略できるものがあります。
今から何をすべきか
施行されるまでに、進めておきたい準備は以下のとおりです。
- 自分が行う作業のうち、特別教育が必要な危険有害業務を洗い出す
- 施行前に必要な教育の受講を済ませておく
施行直前に申し込まれた場合、現場への入場期日までに受講を完了できない恐れがあります。確実にご対応いただくためにも、余裕をもって早めに受講しておくことをおすすめします。なお、受講方法としてはご自身のペースで進められるWeb講座が便利です。
Web講座の受講はCIC日本建設情報センターの講座がおすすめ

一人親方にとって、教育を受けるために現場を空けることは、そのまま収入の減少につながります。だからこそ、時間や場所を選ばずに受講できるWeb講座が有効です。
CIC日本建設情報センターは、建設・電気業界の技術者教育を長年にわたって支援してきた教育機関です。各種特別教育や安全衛生教育をWeb講座で提供しており、パソコンやスマートフォンから、現場の合間や移動中でも受講できます。法令やカリキュラムに沿った体系的な内容で、必要な知識を無理なく身につけられるのが特徴です。
2027年4月の義務化に向けて、自分に必要な教育を確認し、早めの受講をご検討ください。講座の一覧は、特別教育・安全衛生教育の講座一覧からご確認いただけます。

一人親方に関するよくある質問

ここでは、一人親方に関するよくある質問についてまとめました。
Q. 一人親方でも労災保険に入れますか。
入れます。ただし、通常の労災保険は労働者を対象とした制度のため、一人親方は「特別加入」という制度を利用します。
特別加入団体を通じて加入する仕組みで、詳しくは別記事『一人親方の労災保険とは?特別加入の費用・補償内容・加入方法と2027年義務化を解説』で解説しています。
Q. 一人親方になるのに資格は必要ですか。
一人親方になること自体に必須の資格はありません。ただし、玉掛けや車両系建設機械の運転など、特定の作業を行うには法令上の資格や技能講習の受講が必要です。
さらに2027年4月からは、危険有害業務に就く際の特別教育の受講も一人親方自身の義務になります。
Q. 従業員を雇ったら一人親方ではなくなりますか。
制度によって異なります。労災保険の特別加入では、労働者を使う日が年100日未満なら一人親方等として扱われますが、労働安全衛生法上は労働者を使用した時点で「事業者」となります。ただし、少人数を雇う親方や一人法人の代表者も2027年4月からの義務の対象になるため、備えが必要です。
まとめ

この記事では、一人親方がどういったものか概要を詳しく解説しました。一人親方とは、労働者を雇わず自分自身で事業を行う事業主であり、建設業では大工や左官、とび職などに多く見られる働き方です。
労働者とは契約形態や労災・社会保険の扱いが大きく異なり、制度ごとに「一人親方」の定義が変わるため注意しておきましょう。また、2027年4月からは、一人親方自身にも特別教育の受講などの安全衛生の義務が、罰則付きで課されるようになります。
独立を考えている方も、すでに一人親方として働いている方も、この機会に自分に必要な教育を確認し、早めに受講を進めておきましょう。
CIC日本建設情報センターでは、各種特別教育や安全衛生教育をWeb講座で提供しております。受講者がモチベーションを維持しながら、修了を目指せる内容となっております。
ぜひご検討ください。