
「独立して一人親方になれば、今より稼げるのだろうか」「売上は増えたのに、なぜか手元にお金が残らない」など、建設業で働く方の中には、このような疑問や悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。一人親方の収入は、会社員の給与とは仕組みが大きく異なるため、額面の年収だけを見ていると実態を見誤ってしまいます。
この記事では、一人親方の年収の目安と収入を上げる方法について解説します。会社員との違いについてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
【重要】2027年4月から、一人親方にも安全衛生の義務が課されます
令和9年(2027年)4月1日から、労働安全衛生法の改正により、一人親方を含む「個人事業者等」自身にも、労働者と同じ場所で作業を行う場合に、危険・有害な業務における特別教育の受講などが義務付けられます。対象となる方は、施行までに必要な教育を受けておく必要があるため、Web講座などを活用しながら余裕をもって受講しておきましょう。

一人親方の年収はいくら?

結論からお伝えすると、一人親方に特化した公的な年収統計は存在しません。建設業に関する国の統計の多くは、建設業許可を受けた業者や、会社に雇用されている労働者を対象としており、一人親方の収入を直接とらえたものではないためです。
ただし、一般的な目安として一人親方の年収は約300万円から500万円ほどといえます。あくまでも目安なので、500万円以上を狙うことも十分に可能です。
まずは、一人親方の収入の目安を知るのに最も近い公的データを紹介します。
建設業における自営業主の収入
一人親方に最も近い公的データが、総務省「就業構造基本調査」(令和4年)です。この調査では、自営業主のうち「実店舗がなく、雇人もいない自営業主又は一人社長」をフリーランスとして集計しています。建設業のフリーランスは約50万人と産業別で最も多く、一人親方の実態に近い区分です。
建設業のフリーランス(本業)の年間所得を階級別に見ると、次のとおりです。
※一人親方だけでなく一人社長なども込みのデータです。
最も多いのは300万円台の層で、全体のおよそ半数が300万円未満です。一方で、500万円以上の所得を得ている人も2割近くいます。
なお、このデータは売上ではなく、売上から必要経費を差し引いた後の「所得」を示しています。そのため、実際の年間売上は、この所得額よりも大きくなります。
また、一人親方の年収は、職種や地域、元請との関係や稼働日数、単価・技能の水準によっても異なります。実際に働く際は自分の手取りを自分で把握しておくことが大切です。
年収と手取りの違い
先ほども簡単にご紹介しましたが、年収と手取りは異なります。元請から受け取る金額から、さまざまな費用を差し引いた残りが、実際の手取りです。
会社員であれば、社会保険料の半分は会社が負担し、仕事の道具も会社が用意します。一人親方はこれらをすべて自分で負担するため、同じ額面の年収でも手取りは会社員より少なくなりやすいのが実態です。
年収と手取りの違いについては把握しておきましょう。
会社員(従業員)として働く場合との違い

中には、「一人親方と会社員(従業員)、結局どちらがよいのか」迷っている方もいるでしょう。以下の表は、会社員・一人親方の違いについてまとめたものです。
同じ就業構造基本調査で建設業の正規の職員・従業員を見ると、年間所得が500万円以上の人の割合は約34%で、フリーランス(約17%)の2倍ほどです。(いずれも税金・社会保険料を差し引く前の金額)
一人親方は、腕と実績しだいで収入を大きく伸ばせる一方、収入の安定性や保険・年金の面では会社員に劣ります。額面の年収だけでは会社員とどちらが良いか比較できないため、手取りや福利厚生の観点、自分が希望する働き方などを含めて判断することが大切です。
一人親方が年収を上げる5つの方法

一人親方が収入を上げるための方法は、主に以下の5つです。
- 対応できる作業の幅を広げる(資格・教育)
- 元請と直接取引する
- 施工品質・納期の信頼を積み上げる
- 経費と税金を適正に管理する
- 法人化を検討する
それぞれの内容について詳しく解説します。
1. 対応できる作業の幅を広げる(資格・教育)
収入を上げるうえでとくに効果が大きいのが、対応できる作業の幅を広げることです。玉掛けや車両系建設機械の運転など、資格や技能講習がなければそもそも行えない作業は少なくありません。
対応できる作業が増えれば、任される仕事の範囲が広がり、受注の機会や単価にも良い影響が期待できます。また、2027年4月からは特別教育の受講が一人親方自身の義務になるため、資格や教育は現場で働き続けるための前提条件にもなってくるでしょう。
2. 元請と直接取引する
下請のさらに下請として仕事を受けていると、間に入る業者の中間マージンが差し引かれ、同じ作業でも手元に入る金額が少なくなりがちです。元請と直接取引できれば、中間マージンがなくなる分、単価の改善が見込めます。
直接取引を増やすには、施工実績をまとめておく、工務店や地域の建設会社とのつながりをつくるなど、日頃から仕事の窓口を広げておくことが大切です。
施工品質・納期の信頼を積み上げる
一人親方の仕事は、人とのつながりから生まれることが少なくありません。丁寧な施工と納期を守る姿勢を続けていれば、同じ元請から繰り返し声がかかったり、別の現場を紹介してもらえたりする機会が増えます。
また、仕事が途切れにくくなれば稼働日数が安定し、年間の収入も安定しやすくなります。仕上がりの写真を記録しておくことで、新しい取引先に実績を伝える材料にもなるでしょう。
4. 経費と税金を適正に管理する
売上を増やすだけでなく、手元に残るお金を増やす視点も欠かせません。工具や車両費、ガソリン代など、仕事に必要な支出は経費として正しく計上しましょう。
一人親方の場合、青色申告を選べば、要件を満たすことで最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。また、小規模企業共済は掛金の全額が所得控除の対象となり、節税と将来の退職金の備えを同時に進めることが可能です。
5. 法人化を検討する
事業の所得が大きくなってきたら、法人化も選択肢の1つです。個人の所得税は所得が増えるほど税率が上がる仕組みのため、所得の規模によっては、法人にした方が税負担を抑えられる場合があります。
一方で、法人化すると社会保険への加入や決算の手続きなど、新たな負担も生じます。自分にとって有利かどうかは、税理士などの専門家に相談したうえで判断すると良いでしょう。
【重要】2027年4月から一人親方自身にも安全衛生の義務が課される

2025年(令和7年)5月に公布された「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」により、2027年(令和9年)4月1日から、一人親方を含む個人事業者等自身にも、安全衛生に関する義務が課されることになりました。
これまで安全衛生の義務は、原則として「事業者が労働者に対して」負うものでしたが、今回の改正は、一人親方自身が義務を負うという点で、大きな転換といえます。ここでは、安全衛生の義務化の内容についてみていきましょう。
安全衛生の義務内容
以下の表は、安全衛生の義務についてまとめたものです。
なお、事業者が定める立入禁止などの安全衛生上の事項を守る義務や、元方事業者の指示に従う義務については、2026年4月1日からすでに一人親方等にも適用されています。2027年4月の改正と合わせて、段階的に義務が広がっている点は把握しておきましょう。
対象になるのは「労働者と同じ場所で作業する場合」
安全衛生の義務は、労働者と同じ場所で作業を行う場合に課されます。労働者が一人もいない現場での単独作業は、義務の対象外です。
ただし、従業員を少人数雇っている親方や、一人法人の代表者も対象になり得ます。「自分は法人にしているから関係ない」とは限らないため、注意が必要です。
また、特別教育については、免許保有者や技能講習修了者など十分な知識・技能があると認められる場合には、科目の全部または一部を省略できます。
今から何をすべきか
施行されるまでに、進めておきたい準備は以下のとおりです。
- 自分が行う作業のうち、特別教育が必要な危険有害業務を洗い出す
- 施行前に必要な教育の受講を済ませておく
施行直前は受講の申し込みが集中する可能性があります。そのため、余裕をもって早めに動いておくと良いでしょう。また、受講方法としては自由度の高いWeb講座での受講をおすすめします。
Web講座の受講はCIC日本建設情報センターの講座がおすすめ

一人親方にとって、教育を受けるために現場を空けることは、そのまま収入の減少につながります。だからこそ、時間や場所を選ばずに受講できるWeb講座が有効です。
CIC日本建設情報センターは、建設・電気業界の技術者教育を長年にわたって支援してきた教育機関です。各種特別教育や安全衛生教育をWeb講座で提供しており、パソコンやスマートフォンから、現場の合間や移動中でも受講できます。法令やカリキュラムに沿った体系的な内容で、必要な知識を無理なく身につけられるのが特徴です。
2027年4月の義務化に向けて、自分に必要な教育を確認し、早めの受講をご検討ください。講座の一覧は、特別教育・安全衛生教育の講座一覧からご確認いただけます。

一人親方の年収に関するよくある質問

ここでは、一人親方の年収に関するよくある質問についてまとめました。
Q. 一人親方の平均年収はいくらですか。
一人親方に特化した公的な年収統計はありません。近いデータとして挙げられる総務省「就業構造基本調査」(令和4年)によると、建設業のフリーランスの年間所得は300万円台が最も多く、およそ半数が300万円未満です。
ただし、税金や社会保険料を差し引く前の金額のため、平均値よりも自分の手取りを把握することが大切です。
Q. 労災保険の特別加入にはいくらかかりますか。
特別加入の保険料は、選んだ給付基礎日額によって変わります。たとえば給付基礎日額10,000円の場合、年間保険料は62,050円です。また、特別加入団体の入会金や組合費がかかるため、総合的に金額をチェックしておきましょう。
Q. 会社員と一人親方はどちらがお得ですか。
一概にどちらがお得か言い切ることはできません。一人親方は収入を伸ばせる可能性がある一方、社会保険や年金、労災の備えを自分で負担する必要があります。額面の年収ではなく、手取りや将来の備えまで含めて比較・判断することが大切です。
まとめ

この記事では、一人親方の年収の目安について解説しました。一人親方の年収には公的な平均値がなく、職種や単価、稼働日数などによって大きな幅があります。また、売上から経費や税金、社会保険料などを差し引いた手取りは額面よりも少なくなります。収入を考える際は、額面ではなく手取りで判断することが大切です。
収入を上げるには、資格や教育によって対応できる作業の幅を広げることが有効です。027年4月からは特別教育の受講が一人親方自身の義務にもなるため、収入を上げるためにも、現場で働き続けるためにも、必要な教育を早めに受けておきましょう。
CIC日本建設情報センターでは、各種特別教育や安全衛生教育をWeb講座で提供しております。受講者がモチベーションを維持しながら、修了を目指せる内容となっておりますので、ぜひご検討ください。

参考:総務省統計局|令和4年就業構造基本調査
厚生労働省|特別加入制度のしおり<一人親方その他の自営業者用>
厚生労働省|改正労働安全衛生法説明会 ~個人事業者等の安全衛生対策の推進について~