
一人親方として働く方の中には、「一人親方は労災保険に入れないと聞いたけど本当?」「元請から労災保険の加入証明を出すよう言われたけどどうすればいい?」と気になる方もいるのではないでしょうか。
一人親方は通常の労災保険の対象外ですが、「特別加入」という制度を使えば、万一のケガに備えることが可能です。ただし、加入方法などの情報を踏まえた上で、適切に進める必要があります。
この記事では、一人親方の労災保険について、特別加入の仕組みや補償内容、加入方法などを解説します。現在一人親方として働いている方・これから一人親方としての働き方を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
【重要】2027年4月から、一人親方にも安全衛生の義務が課されます
令和9年(2027年)4月1日から、労働安全衛生法の改正により、一人親方を含む「個人事業者等」自身にも、労働者と同じ場所で作業を行う場合に、危険・有害な業務における特別教育の受講などが義務付けられます。対象となる方は、施行までに必要な教育を受けておく必要があるため、Web講座などを活用しながら余裕をもって受講しておきましょう。

一人親方は通常の労災保険の対象外

労災保険は、本来「労働者」の業務中や通勤中のケガ・病気に対して給付を行う制度です。一人親方は仕事を請け負う事業主であり、労働者には該当しないため、原則として通常の労災保険は適用されません。
ただし、契約の形式が「請負」であっても、働き方の実態が労働者と判断される場合は通常の労災保険が適用されることがあります。たとえば、元請から作業方法や時間について具体的な指揮命令を受け、報酬が働いた時間に応じて支払われているようなケースです。労働者にあたるかどうかは、契約書の名目ではなく働き方の実態で判断されます。
とはいえ、実態として事業主である一人親方も、労働者と同じ現場で同じ危険を伴う状態であることに変わりはありません。そこで設けられているのが「特別加入」の制度です。
一人親方の労災保険「特別加入」とは

労災保険の特別加入とは、労働者ではない人のうち、業務の実態から労働者に準じて保護することがふさわしい人に、労災保険への加入を認める制度のことです。加入は任意で、大工・左官・とび職などの建設業の一人親方が、代表的な対象者となります。
特別加入すると、業務中や通勤中の災害に対して次のような給付を受けられます。
※金額は令和7年8月1日現在のものです。
なお、特別加入者の給付は、労働者の場合と要件が異なる部分があります。たとえば休業(補償)等給付は、特別加入者の場合、所得を失ったかどうかにかかわらず、補償の対象となる業務について全部労働不能であることが要件です。
補償の範囲は加入前に確認しておきましょう。
労災保険に特別加入する方法

一人親方は、個人で労働基準監督署に直接申請しての加入はできません。「特別加入団体(一人親方団体)」を通じて加入する必要があります。
特別加入団体を事業主、一人親方を労働者とみなして労災保険を適用する仕組みで、手続きは都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体が行います。特別加入のルートは、次の2つです。
- 新たに特別加入団体をつくり、労働局長へ承認を申請する
- すでに承認を受けている団体に申し込む
一人親方の多くは、2つ目の承認を受けている団体への申し込みを利用します。加入までの流れは「団体選び → 申込 → 保険料の納付 → 加入証明の受け取り」が基本です。
加入の承認日は、申請日の翌日から30日以内で希望する日を選べます。ただし、災害が起きた後に手続きをしても、さかのぼって給付は受けられないため、現場に入る前に加入を済ませておきましょう。
また、次のような業務に一定期間従事した経験がある場合は、加入時に健康診断を受ける必要があります。
- 粉じん作業:3年以上
- 振動工具を使う業務:1年以上
- 鉛業務:6か月以上
- 有機溶剤業務:6か月以上
労災保険の特別加入にかかる費用(保険料)

労災保険の特別加入は、以下の計算式で保険料が決定します。
年間保険料 = 給付基礎日額 × 365日 × 保険料率
給付基礎日額とは、給付額を計算するもとになる金額のことです。3,500円〜25,000円の範囲から自分で選びます。また、建設の事業の一人親方の保険料率(第2種特別加入保険料率)は1,000分の17です。
たとえば給付基礎日額を10,000円にした場合、年間保険料は次のようになります。
- 算定基礎額:10,000円 × 365日 = 3,650,000円
- 年間保険料:3,650,000円 × 17/1000 = 62,050円
給付基礎日額を高くすれば、補償も手厚くなる一方で保険料も上がります。収入とのバランスを見て選びましょう。
保険料が収入に与える影響は、別記事『一人親方の年収はいくら?手取りの実態と収入を上げる方法を解説』で詳しく解説しています。
労災保険に特別加入していないとどうなる?

特別加入は任意ですが、加入していないと仕事の面で不利になることがあります。
- 現場への入場を断られる:元請は安全書類で労災保険の加入状況を確認するため、未加入だと現場に入れないケースがある
- ケガの治療費が自己負担になる:通常の労災保険が使えないため、治療費を自分で負担しなければならない
- 収入が途絶える:ケガで働けない期間の補償がなく、収入がそのまま止まる
任意とはいえ、実務上は仕事を受けるための前提条件になっているといえるでしょう。
【重要】2027年4月から一人親方自身にも安全衛生の義務が課される

2025年(令和7年)5月に公布された「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」により、2027年(令和9年)4月1日から、一人親方を含む個人事業者等自身にも、安全衛生に関する義務が課されることになりました。
これまで安全衛生の義務は、原則として「事業者が労働者に対して」負うものでしたが、今回の改正は、一人親方自身が義務を負うという点で、大きな転換といえます。ここでは、安全衛生の義務化の内容についてみていきましょう。
安全衛生の義務内容
以下の表は、安全衛生の義務についてまとめたものです。
なお、事業者が定める立入禁止などの安全衛生上の事項を守る義務や、元方事業者の指示に従う義務については、2026年4月1日からすでに一人親方等にも適用されています。2027年4月の改正と合わせて、段階的に義務が広がっている点は把握しておきましょう。
対象になるのは「労働者と同じ場所で作業する場合」
安全衛生の義務は、労働者と同じ場所で作業を行う場合に課されます。労働者が一人もいない現場での単独作業は、義務の対象外です。
ただし、従業員を少人数雇っている親方や、一人法人の代表者も対象になり得ます。「自分は法人にしているから関係ない」とは限らないため、注意が必要です。
また、特別教育については、免許保有者や技能講習修了者など十分な知識・技能があると認められる場合には、科目の全部または一部を省略できます。
今から何をすべきか
施行されるまでに、進めておきたい準備は以下のとおりです。
- 自分が行う作業のうち、特別教育が必要な危険有害業務を洗い出す
- 施行前に必要な教育の受講を済ませておく
施行直前は受講の申し込みが集中する可能性があります。そのため、余裕をもって早めに動いておくと良いでしょう。また、受講方法としては自由度の高いWeb講座での受講をおすすめします。
Web講座の受講はCIC日本建設情報センターの講座がおすすめ

一人親方にとって、教育を受けるために現場を空けることは、そのまま収入の減少につながります。だからこそ、時間や場所を選ばずに受講できるWeb講座が有効です。
CIC日本建設情報センターは、建設・電気業界の技術者教育を長年にわたって支援してきた教育機関です。各種特別教育や安全衛生教育をWeb講座で提供しており、パソコンやスマートフォンから、現場の合間や移動中でも受講できます。法令やカリキュラムに沿った体系的な内容で、必要な知識を無理なく身につけられるのが特徴です。
2027年4月の義務化に向けて、自分に必要な教育を確認し、早めの受講をご検討ください。講座の一覧は、特別教育・安全衛生教育の講座一覧からご確認いただけます。

一人親方の労災に関するよくある質問

ここでは、一人親方の労災に関するよくある質問についてまとめました。
Q. 一人親方の労災保険は必ず加入しないといけませんか。
特別加入は任意です。ただし、未加入だと元請から現場への入場を断られることがあり、ケガをした際の補償もありません。実務上は加入しておくのが一般的です。
Q. 労災保険の料金はいくらですか。
選んだ給付基礎日額によって変わります。たとえば、給付基礎日額10,000円の場合、年間保険料は62,050円です。別途、特別加入団体の入会金や組合費がかかります。
Q. 自分で労働基準監督署に申請できますか。
できません。一人親方の特別加入は、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体を通じて手続きを行う必要があります。
Q. ケガをしてから加入しても給付を受けられますか。
受けられません。災害が起きた後に手続きをしても、さかのぼって給付を受けることはできないため、現場に入る前に加入しておくことが大切です。
まとめ

この記事では、一人親方の労災について詳しく解説しました。一人親方は事業主であるため、原則として通常の労災保険は使えません。万一のケガに備えるには、特別加入団体を通じて労災保険に特別加入する必要があります。
また、2027年4月からは、一人親方自身にも特別教育の受講などの安全衛生の義務が課されます。労災保険の特別加入で万一に備えるとともに、必要な教育を早めに受講し、安全に働き続けられる準備を整えておきましょう。
CIC日本建設情報センターでは、各種特別教育や安全衛生教育をWeb講座で提供しております。受講者がモチベーションを維持しながら、修了を目指せる内容となっておりますので、ぜひご検討ください。

参考:厚生労働省|特別加入制度のしおり<一人親方その他の自営業者用>
厚生労働省|改正労働安全衛生法説明会 ~個人事業者等の安全衛生対策の推進について~