
建設業を手掛ける事業者や経営者、安全衛生のご担当者や現場監督の方の中で、「長年現場を支えてくれたベテランの職人に、これからも安全に働き続けてほしい」という方も多いのではないでしょうか。
高年齢労働者の安全対策には、国のエイジフレンドリー補助金を活用できる可能性があります。この補助金制度は、段差の解消や手すりの設置、暑熱対策の設備など、シニア職人が安全に働ける環境づくりへの投資を支援する制度です。
ただし、対象となる事業者や設備には要件があり、コースによって申請の流れも異なるため事前に情報を確認しておきましょう。
この記事では、建設業の視点からエイジフレンドリー補助金の対象設備・申請条件・注意点を解説します。ぜひ参考にしてみてください。
なぜ今、建設現場で「エイジフレンドリー補助金」が求められるのか

建設業では高齢化が進み、いまや60歳以上の職人が数多くの現場を支えています。豊富な経験と技能(スキル)は現場の大きな財産である一方で、加齢に伴う労働災害のリスクは見過ごせません。
年齢を重ねると、筋力やバランス感覚、視力といった身体機能はどうしても低下していきます。暑さを感じ取る感覚が鈍くなることもあり、これらが転倒・墜落・熱中症といった重大な労災に直結しやすくなります。実際、休業4日以上の労働災害は、高年齢層ほど発生しやすい傾向です。
「エイジフレンドリー補助金」は、建設業での労働災害を「本人の不注意」で片付けるのではなく、会社側が設備や環境を整えることで防ぐという考え方にもとづく制度です。高年齢労働者が安全に働ける「エイジフレンドリー(高齢者に優しい)」な職場づくりにかかる費用を、国が支援します。
参考:厚生労働省|エイジフレンドリー助成金
エイジフレンドリー補助金の基本要件(建設業の中小企業向け)

補助金の支援を受ける際、まずは自社が対象になるかどうかを確認しましょう。エイジフレンドリー補助金は、主に次の要件を満たす中小企業事業者が対象です。
| 主な要件
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内容
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| 労災保険への加入
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労働者災害補償保険に加入している中小企業事業者であること
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| 企業規模(建設業の場合)
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資本金3億円以下、または常時使用する労働者数が300人以下であること(いずれか一方でも可)
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| 高年齢労働者の雇用
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役員を除く満60歳以上の労働者を、常時1名以上雇用していること
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| 事業の実施期間
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1年以上、事業を実施していること
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参考:日本労働安全衛生コンサルタント会|「令和8年度エイジフレンドリー補助金」のご案内
補助率と上限額は、コースや段階によって異なります。詳しくは後述しますが、おおむね補助率5~8割、上限額はコースにより30万〜100万円が目安です。
エイジフレンドリー補助金は毎年、公募要領やコース構成が見直されるため、申請の際は必ず最新の情報をご確認ください。
建設現場で補助対象になりやすい主な取り組み・設備例

続いて、建設現場で対象になりやすい取り組みについて目的別に表でご紹介します。いずれも「高年齢労働者の労災防止・身体的負担の軽減」につながることがポイントです。
| 分類
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想定される設備・取り組みの例
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| 転倒・滑落防止(身体機能の補正)
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通路や作業場所の段差解消、防滑仕様の床材・グレーチング、階段・足場への手すり追加、踏み面のすべり止め、手すり付き作業台
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| 重作業・身体的負荷の軽減
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重量物の持ち上げを補助するアシストスーツ、階段昇降運搬具、小型運搬機器
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| 暑熱対策(熱中症予防)
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ファン付き作業服、身体を冷やす冷却ベスト、移動式スポットクーラー(排熱を屋外に逃がせるものなど条件あり)
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補助対象の要件で大切なのは、「便利だから」「新しいから」ではなく、その設備が高年齢労働者の安全にどうつながるのかを説明できることです。例えば、「転倒しやすい箇所に手すりを付ける」「暑さで判断力が鈍る前に体を冷やせるようにする」など、リスクと対策が結びついている取り組みが対象になりやすい傾向があります。
想定される設備・取り組みを中心に、そこから高年齢労働者の労災防止・身体的負担の軽減につながるか整理しておくと良いでしょう。
エイジフレンドリー補助金のコースと申請の流れ

令和8年度の場合、エイジフレンドリー補助金は目的別に以下の3つのコースで構成されています。建設現場のシニア職人対策で中心となるのは、ⅠとⅡのコースです。
| コース
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主な対象
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補助率
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上限額(消費税除く)
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| Ⅰ
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専門家総合対策コース
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専門家によるリスクアセスメントと、その結果を踏まえた設備導入・運動指導など
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第1段階:5分の4
第2段階:2分の1
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100万円(第1・第2段階の合計)
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| Ⅱ
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熱中症対策コース
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身体を冷やす装置など、熱中症予防のための設備導入
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2分の1
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100万円
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| Ⅲ
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コラボヘルスコース
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健康保持増進のための取り組み
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4分の3
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30万円
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補助率や上限額はコースごとに異なる
専門家総合対策コース(Ⅰ)は、安全衛生の専門家によるリスクアセスメント(危険性の評価)を受ける第1段階と、その提案にもとづいて設備導入などを行う第2段階の2段階で構成されます。
また、第1段階は補助率が高く設定されているのが特徴です。自社の安全管理者などがすでにリスクアセスメントを実施している場合は、第1段階を省略して第2段階から申請できる運用もあります。
ただし、上限額100万円は第1段階と第2段階の合計である点に注意が必要です。それぞれに100万円ずつ使えるわけではありません。一方の熱中症対策コース(Ⅱ)は、1段階の申請で完結するのが基本です。
申請スケジュールは年度ごとに異なる
エイジフレンドリー補助金の日程やコース構成は年度ごとに見直されます。そのため、申請の際は必ずその年度の公募要領で最新の内容をご確認ください。
例えば、令和8年度の交付申請の受付は5月20日から10月31日です。専門家総合対策コースの第1段階だけは締切が8月31日と早く設定されています。
また、どのコースでも交付決定の前に発注・購入した設備は対象外になります。「良い設備を見つけたから先に買っておこう」という判断をせず、交付決定の通知を受けてから進めましょう。
対象外になりやすいケースと注意点

申請してから「対象外だった」とならないよう、事前に認められにくいケースや注意点を把握しておくと安心です。具体的には以下の3つあります。
- 高年齢労働者の労災防止・身体機能の補正との関連を説明しにくい、汎用品や一般工具を導入する場合
- 60歳以上の労働者が直接使用・従事しない設備を導入する場合
- 交付決定前に発注・購入したもの、作業の完了前に支払ったもの
このほか、中古品や消耗品、維持管理費なども対象外とされるのが一般的です。ただし、対象・対象外の細かな線引きはコースや年度のQ&A・交付要綱で定められるため、判断に迷うものは事前に事務局へ確認するか最新のQ&Aで確かめておくと良いでしょう。
また、エイジフレンドリー補助金は予算の範囲内で運用されるため、受付期間内であっても、予算に達した時点で早期に受付を終了することがあります。活用を検討している場合は、公募開始を待って早めに準備・申請を進めることが大切です。
設備改善とあわせて進めたい安全衛生教育

高年齢労働者の労災防止は、設備を整えるだけで完結するものではありません。どれだけ環境を改善しても、現場で働く一人ひとりが危険性を理解し、正しい安全行動をとれなければ、事故のリスクは十分に下がらないためです。設備と教育によるソフト面の両輪で備えることが大切といえます。
CIC日本建設情報センターでは、建設・電気業界の技術者教育を長年にわたって支援してきた実績をもとに、「職長・安全衛生責任者教育」などををはじめとする各種教育をWeb講座で提供しています。時間や場所を選ばず受講できるため、多忙な現場でも取り入れやすいのが特徴です。
労働安全衛生に関する幅広い講座は、特別教育・安全衛生教育の一覧からご確認いただけます。受講者がモチベーションを維持しながら効率的に学習できる内容となっておりますので、ぜひ受講をご検討ください。
エイジフレンドリー補助金に関するよくある質問

ここでは、エイジフレンドリー補助金に関するよくある質問についてまとめました。
Q. 個人事業主でも使える?
労災保険に加入している中小企業事業者で、要件を満たす高年齢労働者を雇用していれば、法人か個人事業主かを問わず対象となり得ます。詳しい範囲は最新の公募要領でご確認ください。
Q. 申請前に設備を購入しても対象になる?
交付決定より前に発注・購入した経費は対象外です。まず申請し、交付決定を受けてから発注するのが原則です。
Q. 自社でリスクアセスメントを実施済みでも、専門家総合対策コースを使える?
安全管理者や衛生管理者などが自社でリスクアセスメントを実施している場合は、第1段階(専門家による評価)を省略して、第2段階の設備導入などから申請できます。なお、常時使用する労働者が10名未満の場合は、事業主が実施しても差し支えないとされています。
まとめ

この記事では、エイジフレンドリー補助金の概要についてまとめました。「エイジフレンドリー補助金」は、高年齢労働者の労災防止・身体的負担の軽減を目的とした設備投資を支援する制度です。改めて、補助金の要点についてまとめました。
- 対象は、60歳以上の労働者を常時雇用する中小企業事業者
- 段差解消や手すり、アシストスーツ、暑熱対策設備などが対象になり得る
- コースや補助率・上限額は年度で見直されるため、最新の公募要領の確認が必須
- 交付決定前の発注は対象外。予算上限による早期終了にも注意
ベテラン職人が安心して力を発揮できる現場をつくることは、労災の防止にとどまらず、人手不足対策や技能(スキル)の継承にも直結します。自社に60歳以上の労働者がいる場合は、まず現場のリスク箇所(転倒・熱中症など)を洗い出し、設備の改善と安全衛生教育の両面から準備を進めていきましょう。
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