近年、法改正が相次ぎ、2022年4月からは事前調査結果の報告が、2023年10月からは有資格者による調査が完全義務化されました。これにより、解体・改修工事に関わるすべての方々が、この問題を「知らなかった」では済まされない状況になりました。
本記事では、皆様が抱える「コスト、手間、法的リスク」といった現実的な課題に答え、調査が「不要」になる具体的な条件から資格、費用、そして重い罰則まで、実務に即して解説していきます。
公開日:2025年12月1日 更新日:2025年12月1日

近年、法改正が相次ぎ、2022年4月からは事前調査結果の報告が、2023年10月からは有資格者による調査が完全義務化されました。これにより、解体・改修工事に関わるすべての方々が、この問題を「知らなかった」では済まされない状況になりました。
本記事では、皆様が抱える「コスト、手間、法的リスク」といった現実的な課題に答え、調査が「不要」になる具体的な条件から資格、費用、そして重い罰則まで、実務に即して解説していきます。

多くの方が思うのは、「自分の工事は調査が必要なのだろうか?」という点でしょう。結論から言うと、アスベスト事前調査は原則として全ての解体・改修工事で必要です。しかし、例外もあります。ここでは、調査が不要となる条件と、よくある誤解について解説します。
以下のいずれかの条件を満たす場合に限り、事前調査は不要となります。
ケース1:2006年(平成18年)9月1日以降に着工した建物である
ケース2:アスベストが含まれていないことが明らかな建材「のみ」の工事
ケース3:ごく「軽微な作業」である
ケース4:既存の建材を損傷させない作業
実務で最も多い誤解が、「届出(報告)が不要な規模の工事だから、調査も不要だ」というものです。これは大きな間違いです。
つまり、「報告不要」の工事であっても、事前調査は原則として実施しなければなりません。この違いを理解しないまま工事を進めると、意図せず法令違反を犯すことになります。
「コンクリートの壁だからアスベストは無いはず」と自己判断するのも非常に危険です。コンクリート自体にアスベストが含まれる可能性は低いですが、問題は別の場所に潜んでいます。

事前調査は、以下のいずれかの有資格者でなければ、行うことはできません。また、資格の種類によって調査できる範囲も決まっています。
もし、資格を持たない者が調査を行った場合、それは法的に有効な調査とは見なされず、罰則の対象となります。

アスベストの調査が必要となった場合の、アスベスト事前調査から行政への報告までは、主に以下の流れで進みます。
Step 1:専門家(調査会社)への依頼
有資格者が在籍する調査会社に相談します。この時設計図書など建物の情報があるとスムーズです。
Step 2:書面調査と現地目視調査
調査者が設計図書等を確認し、現地で建材の種類や状態を目で見て確認します。
Step 3:分析調査(必要な場合のみ)
含有の有無が不明な建材は、「含有あり」とみなすか、サンプルを採取して分析するかを選択します。
Step 4:調査結果報告書の作成
調査会社が法的な要件を満たした報告書を作成します。この報告書は3年間の保存義務があります。
Step 5:行政への電子報告 (必要な場合のみ)
一定規模以上(解体80㎡以上、改修100万円以上など)の工事の場合、元請業者は「石綿事前調査結果報告システム」で労働基準監督署と地方自治体の両方に調査結果を報告します。

アスベスト対策で最も気になるのが費用です。調査費用は建物の規模や調査内容によって大きく変動します。
調査費用は主に、「書面・目視調査費」「分析調査費」「報告書作成費」で構成されます。
書面・目視調査費: 3万円 ~ 10万円 / 1案件(建物の規模、部屋数、図面の有無で変動)
分析調査費
報告書作成費: 2万円 ~ 5万円 / 1案件(写真、図面、分析証明書を含む)
国や多くの地方自治体は、調査・除去費用に補助金制度を設けています。ただし、活用には注意点があります。
レベル1のみの補助が殆ど: 国の補助制度がレベル1建材であるため、多くの自治体も同様の補助制度となっています。レベル2や3に対応する自治体は稀です。
調査や着工前に申請: 補助金は、調査や工事に着手する前に申請し、交付決定を受ける必要があります。事後の申請は認められないため、計画の早い段階で相談することが不可欠です。
対象建材や補助率、上限額は自治体によって大きく異なるため、必ずお住まいの市区町村の窓口(建築指導課など)に確認しましょう。

「少しぐらいなら…」などと軽い気持ちで事前調査を怠ることは、取り返しのつかない事態を招く可能性があります。
作業員や周囲の住民が知らないうちに飛散したアスベストを吸い込み、数十年後に中皮腫や肺がんといった深刻な病気を発症する可能性があります。安易な判断が未来に深刻な健康被害をもたらす事態は、断固として避けなければなりません。
法律違反には厳しい罰則が定められています。
罰則の対象となるのは、主に工事の元請業者ですが、自主施工者(建物の所有者自身が工事を行う場合)も含まれます。
リスクは罰金だけではありません。
事前調査は、これらのリスクを未然に防ぐための、いわば「保険」のようなものなのです。

アスベスト事前調査は、今や全ての解体・改修工事において避けては通れない、法的かつ社会的な責務です。
これらの課題を乗り越え、安全な工事を実現するために最も重要なことは、信頼できる専門家に早期に相談することです。法規制に関する正確な知識はもちろん、調査から報告、補助金の活用まで、あらゆる側面からあなたをサポートいたします。
「アスベスト調査が必要か分からず悩んでいるけど、専門家に頼めば有償だろうし、信頼のおける専門家にはつてがないし。」
という方には、「石綿の窓口」がサポートします。
相談や見積もりは無料で行っておりますので、まずは専門家に相談して疑問を解消したい、というお声に対応いたします。その後調査が必要となった場合でも、対策までをワンストップでサポート可能です。
是非お気軽にお声掛けください。