
建設業界で培った技術や資格取得で得た知識を、より安定した環境で発揮したいとお考えの方も多いのではないでしょうか。
建設職公務員は、国や地方自治体において建設・建築分野の専門知識を活かし、公共施設の整備や都市計画、建築行政などを担当する技術系公務員のことです。公務員となるため、安定したキャリアを築けます。
この記事では、建設職公務員の仕事内容から年収、試験の種類と対策方法、さらに取得しておくと有利な関連資格まで解説します。民間企業との違いや、公務員ならではのやりがいについても触れていますので、建設職公務員を目指す方はぜひ参考にしてください。



建設職公務員とは

建設職公務員とは、国や地方自治体において建設・建築分野の専門知識を活かし、公共施設の整備や都市計画、建築行政などを担当する技術系公務員のことです。民間企業とは異なり、公共の利益を第一に考えながら、地域社会の基盤となるインフラや施設の計画・管理に携わります。
まずは、国家公務員試験と地方公務員の違いや建設職公務員の仕事内容についてみていきましょう.
国家公務員と地方公務員の主な違い
以下の表は、国家公務員と地方公務員の主な違いについてまとめたものです。
| 項目 |
国家公務員 |
地方公務員 |
| 主な勤務先 |
国土交通省・財務省など |
都道府県庁・市区町村役場 |
| プロジェクト規模 |
国家規模・全国的な政策 |
地域密着型・自治体管轄内 |
| 転勤の範囲 |
全国規模 |
管轄内のみ |
表を見ると、プロジェクトの規模や転勤の範囲などで大きな違いがあることが分かります。ただ、どちらも共通して安全な建築物の建設を監督したり、災害に強い地域づくりのための防災計画を策定したりと、公共設備を守るための重要な役割を担っています。
建設職公務員の主な仕事内容
建設職公務員の仕事をまとめると、主に以下の5つです。
建設職公務員は、数年ごとに異動があり、さまざまな業務を経験します。代表的な業務は以下の5つです。
| 業務分野 |
概要 |
| 公共施設の設計・工事管理 |
・国や自治体が保有する建築物(庁舎、学校、病院など)の新築・改修時の設計や工事管理を担当する
・現地調査、設計図面のチェック、工事費の積算、入札、施工管理、完成後の維持管理まで、一連の流れを担当する
|
| 都市計画・まちづくり |
・10年、20年先を見据えた地域の計画を策定し、土地利用や道路整備、景観や市街地開発などの実現を目指す
・コンパクトシティ構想など、まちづくりの根幹に関わる大規模な業務のため、土木職と協力して進められることが多い分野
|
| 建築行政・法令管理 |
・建築基準法に基づく建築確認審査や、都市計画法に基づく開発許可審査を行う
・建築物が建築計画の通りにできているかチェックし、違法建築を取り締まる
・建築物の耐震化支援や省エネ化、バリアフリー化の促進なども担う
|
| 住宅政策 |
・空き家対策や公営住宅の整備・管理を行う
・補助制度や相談窓口を設けるなどの空き家対策、公営住宅のバリアフリー化や環境整備、災害時の応急仮設住宅の設置などを担う
|
| 災害復旧・防災業務 |
・被災施設の調査や応急的な復旧作業の計画・実施に従事
・災害に強い地域づくりのための防災計画の策定や耐震改修工事の推進も担当する
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一言で建設職公務員と表しても業務内容はさまざまです。建設職公務員を目指す上で、どんな業務を担うのかは事前にチェックしておきましょう。
建設職公務員のメリットとやりがい

建設職公務員のメリット・やりがいをまとめると主に以下の3つです。
- 公務員ならではの安定性
- 社会貢献を実感しやすい
- 専門性を活かしやすい
それぞれの内容について詳しく解説します。
1. 公務員ならではの安定性
1つ目のメリットは、安定した収入と雇用体系です。公務員は景気の影響を受けにくく、給与が安定して支給され、リストラの心配もほとんどありません。
退職金や年金制度も充実しており、長期的なキャリアビジョンを描きやすい環境にあります。大手ゼネコンのような長時間労働や頻繁な転勤が少なく、ワークライフバランスを取りやすい点もメリットです。
2. 社会貢献を実感しやすい
2つ目のメリットは、公共施設の設計や管理を通じて地域社会に直接貢献できることです。
完成した公共施設は何十年も地域に残り、多くの人々の生活を支える基盤となります。地域の都市計画や災害復旧など、社会の課題解決に携わる機会も多いため、社会貢献・達成感を実感しやすい点が魅力です。
3. 専門性を活かしやすい
3つ目のメリットは、専門性を活かしやすい点です。大学で学んだ建設・建築の知識を直接活用できるため、特定分野の専門家としてキャリアを築けます。
また、キャリアを通じて、公共施設の設計・工事管理・都市計画・建築行政・住宅政策・災害復旧など、多様な業務も経験できます。常に新しい経験・これまで得てきた知識のアップデートによって専門性を高め視野を広げられる点が大きなメリットです。
建設職公務員の年収

一般的に建設職公務員の給与は、事務職と同じ給与体系が適用されます。試験区分は異なるものの、配属後はともに「一般行政職」に含まれるためです。
ここでは、建設職公務員の年収や民間企業と比較した情報についてご紹介します。
給与体系と年収の目安
国家公務員の平均年収は約708万円で、行政職俸給表が適用される職員の平均は約690万円が目安となります。地方公務員(一般行政職)の給与は自治体によって差が大きいですが、平均年収は約647万円です。
公務員は定期的な昇給制度があり、長期的に見ると収入の安定性が高いことが特徴です。景気の影響を受けにくく、給与が安定して支給される点が大きな魅力となっています。
民間企業との比較
建設職公務員は、民間企業に比べて初任給が低めに設定されているケースもありますが、定期的な昇給制度が整っているため、長期的に安定した収入が得やすいのが特徴です。一方、大手ゼネコンなどは高収入が期待できる反面、長時間労働や頻繁な転勤が問題となる傾向があります。
その点、公務員では労働時間が比較的安定しており、ワークライフバランスを重視した働き方が可能です。福利厚生においても公務員は優れており、充実した休暇制度や育児支援、新たなキャリア形成のための研修制度などが整っています。
退職金や年金制度が充実している点も、公務員ならではの安心感といえるでしょう。
建設職公務員になるための試験対策

ここからは、実際に建設職公務員を目指す上での試験対策をご紹介します。国家公務員試験または各自治体の建築区分の試験を受験する上で必要な情報を把握しておきましょう。
受験資格と年齢制限
試験には国家公務員試験では30歳まで、地方公務員試験では多くの自治体で30歳から35歳程度の年齢制限があります。最近は受験者を広く確保するため、年齢制限を35歳まで引き上げる自治体も増えていますが、年齢の上限がある点は注意しておきましょう。
また、受験資格として建築士などの資格は必須ではありませんが、大学や専門学校で建築学や土木工学を専攻しておくと有利です。
試験内容と対策
公務員試験の筆記は、一般教養科目(数的処理、文章理解、人文・自然・社会科学、時事)と専門科目(構造力学、建築計画、建築施工、建築法規、都市計画など)に分類されます。
大学で学ぶ内容と類似しているものの、公務員試験特有の対策が必要です。過去問を繰り返し解いて出題傾向を把握し、苦手科目は克服、得意科目はさらに伸ばすことで効率的に合格する力が身につくでしょう。
建設職公務員に役立つ関連資格

建設職公務員では、建設系の関連資格を保有しておくことで仕事に役立ちます。受験資格として資格は必須ではないものの、業務に直接活かせることなども考えると、資格取得は前向きに考えておいたほうがよいでしょう。
建設職公務員に役立つ関連資格は、以下の通りです。
それぞれの資格について概要を詳しく解説します。
施工管理技士(建築・土木・電気工事など)
施工管理技士は、施工管理業務で重宝される国家資格です。建築施工管理技士・土木施工管理技士・電気工事施工管理技士など、分野別に資格が存在します。公共工事の監理業務で専門性を発揮でき、民間企業での実務経験を活かして取得することも可能です。



技術士
技術士は、建設分野における最高峰の国家資格で、高度な専門知識と実務能力の証明となります。都市計画や大規模プロジェクトでの信頼性向上に役立ち、キャリアアップにも効果的です。

その他(宅地建物取引士・コンクリート技士・消防設備士など)
宅地建物取引士は住宅政策業務で活用できる資格で、コンクリート技士は公共建築の品質管理に有効な資格です。また、消防設備士は公共施設の防災設備管理に役立ちます。中でも甲種第4類や乙種第6類が需要・人気の高い区分です。
このほか、建設職公務員の業務に直接活かせる国家資格である建築士もおすすめです。公共建築物の設計業務では、建築士の資格が必須となる場合があります。資格を取得することで業務の幅が広がり、より専門性の高い業務に携われるようになります。
これらの資格を取得することで、建設職公務員としての専門性をさらに高められるでしょう。


まとめ

この記事では、建設職公務員がどういった仕事なのか解説しました。建設職公務員は、公共施設の設計・管理、都市計画、建築行政、住宅政策、災害復旧など、多岐にわたる業務を通じて地域社会に貢献できる仕事です。
安定した雇用と待遇、ワークライフバランスの取りやすさに加え、専門性を活かして社会の発展に直接関われるやりがいがあります。公務員試験では専門科目と教養科目の両方の対策が必要ですが、建築士や施工管理技士などの関連資格を取得しておくことで、業務の幅を広げることができます。
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