
私たちが毎日見上げる高層ビルや、安心して暮らすためのマンション、そして街を彩る商業施設。これらの建物はすべて、頑丈な「骨組み」の上に成り立っています。この骨組みを作る工程こそが、建築の最も重要な部分を占める「躯体工事」です。
躯体工事は、建物の安全性を根底から支える、いわば建築の心臓部。どんなに美しい内装や外装も、この骨組みがしっかりしていなければ意味がありません。しかし、多くの人が目にすることがないため、その重要性や具体的な内容について知る機会は少ないかもしれません。
この記事では、躯体工事がどのようなものか、その基礎知識から具体的な工法まで、分かりやすく解説します。また、建設業界における躯体工事の重要性や、この知識を活かして活躍できる仕事や資格についても詳しくご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

躯体工事とは

躯体工事とは、建物の主要な構造部分、つまり「骨組み」を造り上げる一連の工程を指します。鉄筋コンクリートや鉄骨、木材などを用いて、建物の土台となる基礎から、柱・梁・床・屋根といった骨格を形成する作業です。
躯体工事は、建物の安全性を直接的に左右するため、最も慎重かつ正確な作業が求められます。地震や台風などの自然災害に耐えうる頑丈な構造体を作り上げることが、躯体工事の最大の目的です。
また、躯体工事の作業は「躯体施工」とも呼ばれます。現場では、設計図通りにコンクリートを流し込んだり、鉄骨を組み上げたりする作業が進められ、この段階が完了すると建物の全体像がはっきりと見えてくるようになります。
躯体工事の基礎知識

躯体工事は、使用する材料によってさまざまな種類に分けられます。それぞれの工法には、異なる特徴と注意点があります。
鉄筋コンクリート造(RC造)
鉄筋コンクリート造は、鉄筋とコンクリートを組み合わせた工法です。鉄筋の引っ張る力に対する強さと、コンクリートの圧縮力に対する強さを利用し、高い強度と耐久性を実現します。マンションや高層ビルなど、多くの建物で採用されています。
型枠を組んで鉄筋を配置し、そこにコンクリートを流し込んで固めるという手順が一般的です。コンクリートが完全に固まるまで時間を要するため、工期は比較的長くなります。
鉄骨造(S造)
鉄骨造は、H形鋼などの鋼材を柱や梁として使用する工法です。鉄骨は強度が高く軽量であるため、柱の間隔を大きく取ることが可能になり、広々とした開放的な空間を確保しやすくなります。主に工場や体育館、大規模商業施設などで用いられる工法です。
現場では、あらかじめ工場で加工された鉄骨部材をクレーンで吊り上げ、ボルトや溶接で組み上げていきます。鉄筋コンクリート造に比べて、工期が短縮できる点がメリットです。
木造
住宅や小規模な建物で多く用いられる工法です。軽量で加工がしやすく、断熱性や調湿性に優れています。日本の風土に適した工法として、古くから親しまれてきました。最近では、集成材やCLT(直交集成板)といった新しい木質材料の開発により、中高層の建築物にも木造が採用されるケースが増えています。
建設業界における躯体工事の重要性

躯体工事は、建設プロジェクト全体の成功を左右する工程と言っても過言ではありません。建設業界では、主に以下の3点において重要視されています。
安全性の確保
建物の安全性を保証する上では、躯体工事の品質が最も重要です。地震や強風に耐えるための強度や耐久性は、この段階で決まります。「設計図通りに正確な施工が行われているか」「材料の品質は適切か」など、徹底した管理が求められます。
工期とコストへの影響
躯体工事は建設全体の工期の中で最も長い期間を占めることが多く、遅れが発生するとプロジェクト全体の遅延に直結します。また、コンクリートや鉄骨の材料費、作業員の労務費もプロジェクトコストの大部分を占めます。プロジェクトの成功において、効率的な施工計画と厳格なコスト管理が大切です。
環境への配慮
躯体工事では多くの資材が使われ、廃材も発生します。現代の建設現場では、資材の無駄をなくしリサイクルを推進するなど、環境負荷を最小限に抑える取り組みも重要視されています。
躯体工事の知識が活かせる仕事

躯体工事に関する専門知識は、建設業界の幅広い職種で高く評価されます。
施工管理技士
工事現場全体の指揮・監督を行う仕事です。躯体工事の工程管理・品質管理・安全管理・原価管理など、多岐にわたる業務を担当します。躯体工事の各工法や材料に関する深い知識が不可欠であり、プロジェクトを成功に導く上で中心的な役割を担います。
構造設計者
建物の骨組みを設計する専門家です。地震や風などの外部の力に対して、建物がどのように耐えるかを計算し、最適な構造計画を立てます。躯体工事の知識は、実現可能な設計を行う上で必須のスキルです。
CADオペレーター
建築設計者の指示に基づき、CADソフトを使って詳細な図面を作成する仕事です。躯体工事の図面は非常に複雑であり、鉄筋の配置や鉄骨の接合部など、専門的な知識が求められます。
建設機械オペレーター
クレーンやショベルカーなどの建設機械を操作し、躯体工事の現場で作業を行います。機械の操作技術はもちろん、現場の状況を理解し、他の作業員と連携しながら効率的に作業を進める能力が重要です。
躯体工事の知識が必要になる資格

躯体工事に関する知識を体系的に学び、専門家としてのキャリアを築く上で、資格は非常に役立ちます。ここでは、特におすすめの資格を3つご紹介します。
建築施工管理技士
建設現場で工事全体の指揮・監督を行う国家資格です。特に1級は、大規模な建築工事の主任技術者や監理技術者になるために必須の資格となります。試験では、躯体工事の各工法や、コンクリート、鉄骨などの材料に関する専門知識が問われます。
しかし、膨大な試験範囲を一人で網羅し、最新の出題傾向を掴むのは難しいでしょう。CIC日本建設情報センターの「建築施工管理技士」対策講座では、経験豊富なプロの講師が合格への最短ルートを示し、学習を徹底的にサポートします。独学に不安がある方や効率的に学習したい方は、ぜひチェックしてみてください。

コンクリート技士・主任技士
コンクリートの製造・品質管理・施工に関する専門知識を証明する資格です。躯体工事の品質は、コンクリートの良し悪しに大きく左右されます。この資格を持つことで、高品質な躯体を造り上げる専門家として、現場で信頼される存在となるでしょう。
鉄骨製作管理技術者
鉄骨造の建物の骨組みを製作する際に、その品質を管理する専門家です。鉄骨の溶接や加工に関する知識が問われ、鉄骨造の躯体工事に携わる上で重要とされます。
おすすめの勉強方法

躯体工事に関する知識は、座学だけでなく、現場での経験も重要です。しかし、まずは以下の方法で基礎を固めることが合格への近道となるでしょう。
図面を読み解く力を養う
躯体工事は、設計図を正確に読み解くことから始まります。まずは、建築図面の記号や表現方法を学び、簡単な図面から読み解く練習をしましょう。工事の全体像を把握する力が身につきます。
現場の写真や動画でイメージを掴む
躯体工事は、柱や梁が複雑に組み合わさる三次元的な作業です。二次元の設計図だけでは、実際の作業をイメージするのが難しい場合があります。
そこで有効なのが、実際の建設現場の写真や動画を活用することです。インターネット上には、鉄筋の配筋作業や型枠の組み立て、コンクリートの打設といった各工程の様子を解説した動画が数多くあります。これらを視聴することで、専門用語や工法が具体的にどういうものか、視覚的に理解を深められるでしょう。
オンライン学習で効率的に学ぶ
躯体工事の学習は専門用語や複雑な工法が多いため、独学だけではつまずくことがあります。そこで、効率的に知識が習得できるオンライン学習がおすすめです。
オンライン講座では、躯体工事の各工法や鉄筋・型枠の組み立て方法など、専門家が映像で分かりやすく解説します。二次元の図面だけでは理解が難しい三次元的な構造も、映像教材で視覚的に把握できるのが大きなメリットです。
忙しい社会人でも、通勤時間や休憩時間といったわずかなスキマ時間を活用して、自分のペースで学習を進められます。疑問点があれば、講師に直接質問できるサポート体制が整っている講座も多く、独学で抱える不安を解消しながら、着実に合格を目指せるでしょう。
まとめ

今回は、建物の骨組みを造り上げる躯体工事について解説しました。躯体工事は、建物の安全性を根底から支える最も重要な工程です。この専門知識を身につけることは、キャリアを豊かにするだけでなく、社会に貢献する大きな力となるでしょう。
躯体工事の専門家として活躍するためには、建築施工管理技士の資格取得がおすすめです。最短ルートで合格を目指したい方は、ぜひCIC日本建設情報センターの対策講座をチェックしてみてください。
