
建設業界において、「採用したばかりの若手が辞めてしまった」「そもそも若者からの応募が来ない」と悩んでいる方も多いことでしょう。2024年問題への対応や熟練技能者の引退が重なる中、次世代を担う若手の確保は、企業の存続を左右する課題の一つです。
しかし、若者が建設業を離れる理由は、「仕事がハードだから」だけではありません。そこには、企業側が考えている離職原因と、若者が抱く本音との間にある「ギャップ」が隠れています。
本記事では、建設業界の離職理由ランキングを始め、Z世代・α世代と呼ばれる若者たちが何を求めているのか、そして早期離職を防ぐために現場がどう変わるべきかを徹底解説します。採用ミスマッチを最小限に抑え、大手求人サイトよりも効率的に「定着する人材」を確保する方法もご紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

建設業における若者離れの実態

建設業界において、「若手不足」はもはや耳慣れた言葉かもしれません。しかし、その実態は年々深刻さを増しています。かつては日本の成長を支える花形産業でしたが、現在は全産業の中でも特に高齢化が著しい業界の一つとなっています。
建設業に従事する3人に1人が55歳以上
国土交通省が令和6年に行った調査によれば、建設業に従事する者のうち55歳以上の割合は約36.7%、60歳以上の技能者は25.8%を占めており、高齢化が進行しています。10年後にはその大半が引退することが見込まれる一方で、29歳以下の若年層は約11.7%に留まっており、若手の確保や育成が喫緊の課題とされています。
注目すべきは、単に入職者が少ないだけでなく、「せっかく入った若者がすぐに辞めてしまう」という点です。新規高卒者の3年以内離職率は、他産業の平均が3割程度であるのに対し、建設業では約4割から5割に達するケースも珍しくありません。
若手の流出を食い止めない限り、どれだけ採用コストをかけても、組織の若返りが進まないのが現状です。
参考:最近の建設産業行政について|国土交通省
離職理由ランキングTOP5

若者が建設業を去る本当の理由を知るためには、企業側が抱く「仕事がきつかったのだろう」という想定を一度横に置く必要があります。国土交通省の調査では、企業が考える原因と離職者の本音には大きな乖離があり、特に若手は仕事内容そのもの以上に「待遇や環境の不透明さ」を重く見ていることが分かっています。
参考:建設業の働き方として 目指していくべき方向性 (参考資料)|国土交通省
第1位:雇用が不安定である
技能労働者の約6割が日給制を採用していると言われており、天候や現場の状況によって月々の給与が変動することに不安を感じる若者が多いです。将来の貯蓄やライフプランが立てにくい「日雇い的」なイメージが、長期就業を阻む壁となっています。
第2位:遠方の作業場が多い
建設業の性質上、現場への直行直帰は避けられませんが、移動時間の長さが実質的な拘束時間の増加につながっています。朝が極端に早くなり、夜のプライベートな時間が削られることが、ワークライフバランスを重視する世代にとってストレスにつながっています。
第3位:休みが取りづらい
工期遵守が優先される現場では、土曜出勤や祝日稼働が常態化しているケースが少なくありません。週休2日が当たり前の環境で育った若者にとって、友人や家族と予定が合わせにくい環境は、離職を決意させる決定的な要因となり得ます。
第4位:労働に対して賃金が低い
建設業の平均年収は決して低くありませんが、異常な暑さや寒さ、肉体的な消耗度を考慮した「割に合わなさ」を指摘する声が目立ちます。特に、日々の道具代や消耗品が自己負担となっている場合、手取り額の少なさに不満が募りやすくなります。
第5位:作業に危険が伴う
安全管理は徹底されているものの、やはり命に関わる事故のリスクが身近にあることは、精神的な負担となります。特に「指差し確認」などの動作の意味を正しく教わらないまま、形式的なルールとして押し付けられると、現場に対する恐怖心や不信感が増幅してしまいます。
建設業にも大きな影響を与えた2024年問題

「2024年問題」とは、働き方改革関連法に基づき残業規制が厳格化されたことに伴い発生する「諸問題」を指します。
原則として「月45時間・年360時間」の上限が適用され、これを超えると企業に罰則が科されるため、従来の「終わるまで帰らない」「休日返上で工期を間に合わせる」という手法は法的に不可能となりました。そのため、従来のやり方では現場を維持できない状況に直面しています。
残業規制による「実質的な人手不足」の深刻化
働き方改革関連法の適用により、一人あたりの労働時間が制限されたことで、これまでと同じ人数のスタッフでは現場が回らなくなるケースも増えています。働く時間が削られた分、これまで以上の人員を確保するか、あるいは作業の効率を劇的に高めなければ、工期の遅延は避けられません。
若手採用に直結する「ホワイト化」の波
多くの若手求職者は、「2024年問題」にどう対応しているかで企業を評価しています。法令を守り、適切な労働時間で運営している企業に人材が集中する一方で、2024年問題に対応できていない企業は、労働基準法を守っていない「ブラック企業」としてSNS等で拡散されるリスクすら抱えています。
「週休2日(4週8休)制」導入の動き
建設業界においても、現場を土日閉所とする「週休2日」の導入が活発化しています。労働時間が法律で縛られ、休日も確保しなければならない状況下では、若手の早期戦力化や生産性の向上が急務とされています。
求められる教育制度の見直し

建設現場で長年続いてきた「背中を見て覚えろ」という指導法は、現在の若手育成において、かえって離職を招く要因となっています。労働時間に制限がある現代では、経験年数に頼るのではなく、誰が教えても同じ成果が出る「体系的な教育制度」の構築が重要です。
例えば、熟練技術者の勘や経験を、若手がいつでも確認できる形に落とし込むことが有効です。作業手順を写真付きの資料にまとめたり、重要なポイントを数分の短編動画にまとめたりして、体系的な学習教材を整備しましょう。現場で何度も同じ質問をする心理的負担が減り、若手の理解度と作業スピードの向上が期待できます。
Z世代・α世代の特徴とコミュニケーション術

1990年代半ばから2010年代序盤に生まれた「Z世代」や、2010年代序盤以降に生まれた「α(アルファ)世代」は、これまでの世代とは仕事に対する価値観が大きく異なります。これからの現場を支える若年層には、従来の指導法を押し付けるのではなく、各世代の特性に合わせたコミュニケーションが求められます。
効率と「タイパ(タイムパフォーマンス)」を重視する
現代の若手層は、限られた時間で最大限の成果を出す「タイパ」を重視する傾向にあります。「何となく現場に長くいる」ことを美徳とせず、無駄な待ち時間や非効率な作業に強いストレスを感じることが少なくありません。
指示を出す際は、「その作業が全体の工期の中でどう役立つのか」など、あらかじめ明確に伝えることが重要です。
論理的な指導による「納得感」の醸成
若手社員の育成においては、作業の「やり方」だけでなく「なぜその作業が必要なのか」という目的を説明することが重要です。根性論や曖昧な指示ではなく、作業の根拠を論理的に解説するよう意識してみましょう。
若手が納得感を持って業務に取り組めるだけでなく、自律的な判断力を養い、指示待ちの状態を防ぐことにもつながります。
心理的安全性を確保するコミュニケーション
若手の定着には、組織の中で自分の考えやミスを気兼ねなく発言できる状態、いわゆる「心理的安全性」の確保が不可欠です。現場に安心感があることで、トラブルの早期発見やスムーズな技術継承が可能になります。
例えば、日々の作業の中で「できたこと」をこまめに認める声かけが効果的です。「前より準備が早くなったな」「今の片付けは助かったぞ」といった些細な一言でも構いません。自分の仕事を見てくれているという実感が、ミスや悩みを一人で抱え込まずに相談できる風通しの良い職場を作ります。
DX活用での業務効率化と残業時間削減

DX活用による業務効率化は、2024年問題への有力な対策です。
事務所に戻って行っていた日報作成や写真整理を、タブレットを使ってその場で完結させるだけでも、移動時間や残業時間を大幅に減らせます。クラウドで最新の図面や工程をリアルタイムで共有すれば、確認待ちや手戻りといった現場の無駄も最小限で済みます。
デジタル化で生まれた時間のゆとりを、若手への丁寧な教育や、無理のない施工体制の実現に充てていく形が理想的です。
注意すべきハラスメント

若手の離職を防ぐには、現場でのハラスメント対策を徹底し、安心できる環境を整えることが重要です。特に指導のつもりで行う言動が、現代では許容されないケースも増えています。
具体的には、以下の点に注意を払いましょう。
- 大声での威圧的な命令
- 人格を否定するような暴言
- 私生活への過度な干渉
- 飲み会や行事への強制参加
現場特有の厳しい叱咤激励は、今の若手には通用しません。精神的な苦痛を与える言動は、早期離職の引き金になり得ます。安全管理上の注意は、感情を切り離して冷静に伝える工夫が求められます。
また、休日の過ごし方を確認したり、酒席を無理に勧めたりする行為も、プライベートを重視する若手層には大きな負担です。相手の立場を尊重した接し方を心がけ、風通しの良い組織作りを目指しましょう。
早期離職を軽減させる採用術

「誰でも良いから早く採用したい」と焦る気持ちもあるかもしれませんが、闇雲に採用しても、結果としてミスマッチを招き、早期退職の引き金になります。
定着率を高めるためには、採用の入り口で自社に合う人材・合わない人材を見極める視点を持つことが重要です。まずは、過去にすぐ辞めてしまった人の傾向を振り返り、自社の環境でストレスを感じやすいタイプや、価値観が合わない特徴を整理して選考に活かす工夫が必要です。
また、企業理念・福利厚生・実際の業務内容・勤務実態などはリアルに伝え、入社後のギャップをなくしましょう。良い面ばかりを強調せず、現場の厳しい側面や残業の状況なども包み隠さず開示することで、納得感を持った人材の確保につながります。
質の高いマッチングを実現し、長く活躍する組織作りを目指すなら、「建設キャリア転職」の活用がおすすめです。専任のキャリアアドバイザーが求職者の強みや経験を丁寧に聞き取り、現場の実態を正しく伝えた上でマッチングを行います。採用の質を改善し、現場の定着率を向上させたい場合は、業界に特化した「建設キャリア転職」にご相談ください。
まとめ

若者の建設業離れを「時代の流れ」として諦めないためにも、まずは離職の背景にある本音を正しく理解する姿勢が求められます。雇用への不安やワークライフバランスの課題といった、若手が直面している現実に向き合い、自社ができる改善から着実に進めていくことが大切です。
また、採用段階でのミスマッチを防ぎ、自社に合う人材を効率よく確保するためには、業界に特化した外部の知見を頼ることも有効です。教育事業で27年の実績を持つCIC日本建設情報センターのネットワークを活かした「建設キャリア転職」は、大手求人サイトにはない精度の高いマッチングで、確かな人材確保をサポートします。
早期離職を防ぎ、長く活躍してくれる人材との出会いをお探しの方は、ぜひ「建設キャリア転職」へご相談ください。
