
建設業界では、時間外労働の上限規制(2024年問題)への対応や、熟練技能者の世代交代など、組織のあり方を見直す場面が増えています。こうした変化の中で、従業員のスキルアップや新たな人材の確保を検討する際、コスト面での負担を軽減できるのが厚生労働省の各種助成金です。
2026年現在は、DX(デジタルトランスフォーメーション)やリスキリングを支援するコースが拡充されており、これらを活用することで教育コストを抑えながら、現場の生産性を高めるための教育を実施しやすくなっています。
本記事では、建設業で活用できる人材育成・確保に関する助成金の種類、受給要件、最新の申請方法について解説します。

建設業における助成金とは

建設業の人材育成における助成金とは、国や自治体が、労働者の技能向上や雇用環境の改善に取り組む事業主に対して提供する支援金です。主な財源として雇用保険料が充てられるケースが多いものの、施策の目的や時期によっては一般会計(税金)やその他の基金が活用されることもあります。
建設業向けの助成金は、一般業種よりも助成率や上限額が優遇されているケースが多いのが特徴です。融資とは異なり、原則として返済の必要がないため、教育投資や環境整備の計画を立てる際の有効なリソースとなります。
助成対象のトレンドはDXを加速させるITスキル

近年、助成対象として注目されているのが「建設DX」に対応するためのITスキル習得です。従来の技能講習だけでなく、デジタル技術と現場を融合させる教育に手厚い支援が用意されています。
- BIM/CIMの操作スキルの習得
- ドローンを用いた測量・点検技術
- ICT建機の操作や施工管理システムの導入研修
- 現場のペーパーレス化を推進するリテラシー教育
これらの高度な訓練は、後述する「事業展開等リスキリング支援コース」などで高い助成率が設定されており、自社のデジタル化に合わせた教育を実施しやすくなっています。
建設業がまず狙うべきは「人材開発支援助成金」

人材育成(Off-JTやOJT)にかかる費用を抑えたい場合、まず検討の候補に挙がるのが「人材開発支援助成金」です。建設業独自のコースと、全業種共通のコースから自社の目的に合ったものを選択します。
主要なコースの概要は以下の通りです。
| コース名 |
概要 |
年間上限額 |
| 建設労働者技能実習コース |
技能講習や特別教育の費用と賃金を助成 |
500万円 |
| 建設労働者認定訓練コース |
認定職業訓練校での訓練経費や賃金を助成 |
1,000万円 |
| 人材育成支援コース |
未経験者へのOJTや専門的なOff-JTをサポート |
1,000万円 |
| 事業展開等リスキリング支援コース |
DX推進や新事業展開に伴う高度な訓練を支援 |
1億円 |
| 人への投資促進コース |
ITスキル習得や教育訓練休暇制度の導入を支援 |
2,500万円 |
各コースの要件や助成金額について、それぞれ詳しく解説します。
参考:人材開発支援助成金|厚生労働省
建設労働者技能実習コース
現場で即戦力として動くために必要な「技能講習」や「特別教育」の受講を支援する、建設業にとって最も身近なコースです。
| 主な対象訓練 |
玉掛け、小型移動式クレーン、高所作業車、アーク溶接、足場の組立てなどの法定講習 |
| 助成内容 |
経費助成:受講料の70%〜75%(20人以下の事業所は75%)
賃金助成:受講者1人1日あたり7,600円〜8,550円
|
新入社員にまとめて資格を取らせる際や、ベテランに上位資格を取得させる際に有効です。1つの技能実習につき1人10万円が上限(経費助成)となりますが、年間では最大500万円まで活用可能です。
建設労働者認定訓練コース
都道府県知事の認定を受けた「認定職業訓練校」に通わせ、体系的な技術を学ばせる場合に活用できます。
| 主な対象訓練 |
職業能力開発校等で実施される、1年以上の長期訓練や専門的な短期訓練(建設関連に限る) |
| 助成内容 |
経費助成:運営団体への補助金対象経費の約1/6。
賃金助成:受講者1人1日あたり3,800円
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自社で教育マニュアルが整っていない場合でも、外部の専門機関でプロの職人としての基礎をじっくり教育できる点が魅力です。中長期的な視点で「多能工」や「現場責任者」を育成したい場合に適しています。
人材育成支援コース
職務に関連した専門的な知識・技能を習得させる訓練(10時間以上)を対象とした汎用性の高いコースです。
| 主な対象訓練 |
45歳未満の正社員に対するOff-JT(座学等)や、有期雇用から正社員への転換を目指す訓練。 |
| 助成内容 |
経費助成:訓練費用の45%(中小企業)
賃金助成:1時間あたり800円
|
建設業に特化していない一般的なCADソフトの操作研修や、マネジメント研修など、現場技能以外のスキルアップにも使いやすいのが特徴です。OJT(現場実習)と組み合わせた「実習併用職業訓練」として申請すれば、現場教育の工数も助成対象になります。
事業展開等リスキリング支援コース
新規事業への進出や、DX化、カーボンニュートラル対応など、時代の変化に合わせた「大きな転換」を伴う教育を強力にバックアップします。
| 主な対象訓練 |
ドローン操縦、BIM/CIMを用いた3次元設計、ICT建機の操作、新工法の導入に伴う高度な研修 |
| 助成内容 |
経費助成:訓練費用の75%(中小企業)
賃金助成:1時間あたり1,000円
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1事業所あたり1年度で上限1億円という、潤沢な助成限度額が設定されているのが最大の特徴です。例えば、「これまでの施工だけでなく、ドローン測量も内製化したい」といった事業のデジタル化を図る際、高額な外部研修をわずか25%の自己負担で実施できます。
人への投資促進コース
ITスキルの習得や、従業員の自発的な学習意欲をサポートする、現代的な教育支援コースです。
| 主な対象訓練 |
高度デジタル人材訓練、大学院での教育訓練、サブスクリプション型の定額制訓練 |
| 助成内容 |
訓練内容に応じて経費の45%〜75%を助成 |
建設業界でも需要が高まっている「定額制eラーニング(サブスク)」が対象です。1人1ヶ月あたり2万円という上限はありますが、社員全員にいつでもITリテラシーやビジネススキルを学べる環境を提供したい場合に、コストを抑えて導入できるメリットがあります。
採用には「人材確保等支援助成金(建設分野)」

育成だけでなく、採用環境の整備に注力したい場合には「人材確保等支援助成金」が有効です。若年者(35歳未満)や女性の採用、または建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入を促進するためのコースがあります。
- 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース: インターンシップの実施や、魅力発信のための啓発活動にかかる経費を助成(上限200万円)
- 建設キャリアアップシステム等活用促進コース: CCUSに登録し、レベルアップした技能者の賃金を5%以上増額した場合に助成(上限160万円)
中小建設事業主の場合、対象経費の3/5(60%)が助成されます。制度を整えることで、採用のしやすさと定着率の向上の両面をサポートする仕組みです。
参考:人材確保等支援助成金|厚生労働省
助成金受給の注意点

助成金を活用するにあたっては、以下の実務上のポイントに注意が必要です。
キャッシュフローを確認しておく
助成金は原則として「後払い」です。企業が一旦、訓練費用や賃金を全額支払い、事業完了後に申請を行ってから数ヶ月後に振り込まれます。そのため、事前に資金計画を立てておく必要があります。
支給要件を遵守する
以下の状況がある場合、不支給となる可能性があります。
- 雇用保険の未加入や、労働保険料の滞納
- 残業代の未払いや不当解雇など、労働関係法令の違反
- 計画届の提出遅れ(多くのコースで訓練開始の1ヶ月前までに提出が必要)
また、多くのコースでは訓練開始の1ヶ月前までに「計画届」の提出が必要です。事後申請は原則認められないため注意しましょう。
助成金を活用した人材採用と育成

助成金の活用によってコストの問題は解消できますが、「投資(教育)する価値のある人材」をどう確保するかという点も重要です。
どれほど手厚い助成金があっても、早期離職や学習意欲の低い人材への投資は、結果として組織の成長につながりません。場当たり的な採用は掲載費がかさむだけでなく、ミスマッチによる損失リスクも伴います。
「質の高い人材」を確保するためには、建設業界に特化したエージェントである「建設キャリア転職」の活用がおすすめです。業界を熟知したプロが貴社の要件に合致し、かつ意欲の高い人材を厳選して紹介するため、採用のミスマッチを最小限に抑え、教育投資の費用対効果を高められます。
まとめ

建設業の助成金活用は、コストを抑え次世代の現場体制を整える有効な手段です。特に2026年現在はDXやリスキリングへの支援が手厚く、自社の戦略に合わせた選択が重要となります。このメリットを最大化するには、教育効果を吸収できる「質の高い人材」の確保が欠かせません。
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