
2023年10月以降、建物の解体・改修工事を行う際は、有資格者によるアスベスト調査が法的義務となりました。
違反したときは30万円以下の罰金が科されるため、すべての建設・解体業者にとって避けて通れない課題です。
この法改正は、アスベストによる深刻な健康被害を防ぐために実施されました。過去に大量に使用されたアスベスト含有建材が解体時期を迎える今、専門知識を持つ建築物石綿含有建材調査者による正確な調査が欠かせません。
とはいえ、現場では「自社の工事は調査対象なのか」「費用はどれくらいかかるのか」「どこに依頼すればいいのか」といった疑問を抱える方も多いでしょう。
本記事では、アスベスト建材調査の法的要件から実務手順、費用相場まで、建設・解体業者が押さえておくべき重要なポイントを分かりやすく解説します。

アスベスト建材調査が義務化|対象工事と資格要件

2023年10月の法改正により、アスベスト調査の実施要件が大きく変わりました。
まずは、どのような工事で調査が必要になるのか、そして誰が調査を実施できるのかを正確に理解しておきましょう。
すべての解体・改修工事で調査が必要
建物の解体工事や改修工事を行う際は、築年数や工事規模に関わらず、すべての建物でアスベスト調査が必要です。
2006年9月以降に着工した建物なら、設計図書などの書面調査で「アスベスト不使用」を確認できれば現地調査は省略できますが、それ以前の建物は現地での目視調査やサンプリング分析が必要となります。
また、解体工事で床面積80㎡以上、改修工事で請負金額100万円以上のときは、調査結果を労働基準監督署と都道府県に電子報告することが義務付けられています。
調査は有資格者のみ|違反時の罰則
アスベスト調査を実施できるのは有資格者のみです。
建築物の調査には「建築物石綿含有建材調査者」(特定建築物、一般建築物、一戸建て等の3種類)が必要です。
さらに、2026年1月1日からは煙突や配管などの工作物についても「工作物石綿事前調査者」の資格保有者による調査が義務化されます。
無資格者が調査を実施した場合、事業者に対して30万円以下の罰金が科される可能性があるのでくれぐれも注意しましょう。


レベル別|アスベスト建材の種類

アスベスト含有建材は、発じん性の高さによってレベル1から3に分類されています。
各レベルでどのような建材が使われているのか、使用箇所と合わせて確認していきましょう。
【レベル1】発じん性:著しく高い
吹付けアスベストや吹付けロックウールが該当します。
鉄骨造建築物の梁や柱の耐火被覆材、機械室の天井、エレベーター昇降路などでよく見られます。綿状や繊維状の外観をしており、手で触れると繊維が付着するほど発じん性が高いのが特徴です。
調査では、これらの吹付け材が使用されている可能性のある箇所を見落とさないよう、重点的に確認していく必要があります。
【レベル2】発じん性:高い
配管保温材、けい酸カルシウム保温材、耐火被覆材といった建材が該当します。
ボイラー周辺の配管、空調ダクト、煙突などに使われているケースが多く見られます。層状や板状の構造をしているため、外観だけでは判断が難しく、サンプリングによる分析が必要になることも少なくありません。
特に配管まわりや設備機器周辺は見落としやすいため、丁寧な調査が求められます。
【レベル3】発じん性:比較的低い
スレートボード、ビニル床タイル、窯業系サイディング、けい酸カルシウム板などの成形板がこのレベルに分類されます。
外壁、屋根、床、天井など、建物の広い範囲で使用されているのが特徴です。硬質で固形化された板状の建材なので、通常の状態では飛散リスクは低いものの、解体や改修の際には適切な処理が欠かせません。
使用箇所が広範囲にわたるため、建材の種類と製造時期をしっかり確認することが調査のポイントになります。
アスベスト調査の実務手順と所要期間

アスベスト調査は、書面調査から始まり、現地調査、サンプリング、報告書作成まで、複数のステップを経て完了します。
各段階で専門的な知識と経験が求められるため、どのような流れで進むのかを事前に把握しておくことが重要です。
書面調査から現地調査まで
まず最初に行うのが書面調査です。設計図書や竣工図、建材のリストなどを確認し、アスベスト含有建材の使用有無を判断します。
2006年9月以降に着工した建物で、書面上でアスベスト不使用が確認できれば、この段階で調査が完了することもあります。所要期間は1〜2日程度です。
次に、有資格者による現地での目視調査を行います。
建物内部を実際に確認しながら、吹付け材や保温材などの状態を詳しく調べ、写真記録を残していきます。建材の種類や劣化状況を見極めるには、専門的な知識と経験が欠かせません。
現地調査には半日から1日程度かかります。
サンプリングと報告書作成
目視だけでは判断が難しい建材については、サンプリングを行い、専門機関で分析を依頼します。
採取した検体を分析し、アスベストの含有有無や含有率を正確に判定するプロセスです。通常の分析では3〜7日程度かかりますが、特急対応が可能な機関であれば1〜2日で結果が出ることもあります。
分析結果が出たら、厚生労働省が定める規定様式に沿って報告書を作成します。調査結果のまとめ、写真の整理、石綿事前調査結果報告システムへの電子申請など、細かな作業が必要です。報告書の作成から電子申請までには1〜3日程度を要します。
これらすべてを合わせると、調査完了までには一般的に1〜2週間程度の期間がかかります。
弊社の「石綿の窓口」では、調査報告書を分析結果の翌営業日にスピーディーに納品いたします。

調査費用の相場と削減方法

アスベスト調査にかかる費用は、建物の規模や検体数によって変動します。費用の内訳を理解し、コストを抑えるポイントを押さえておきましょう。
費用の内訳と相場感
アスベスト調査の費用は、主に書面調査、現地調査、検体分析、報告書作成の4つの要素で構成されています。
書面調査の費用は2万円から5万円程度、検体分析は1検体あたり1.5万円から5万円程度が相場です。報告書作成の費用は、調査費用に含まれているケースと別途請求されるケースがあるため、見積もり時に確認しておくことが大切です。
これらを合計すると、一般的なアスベスト調査の総額は7万円から13万円以上になります。
建物の規模が大きいときや、検体数が多い場合は、さらに費用が上がることもあります。
費用を抑える方法
調査費用を抑えるには、いくつかの方法があります。
まず、判断が難しい建材について、分析をせずにアスベスト含有とみなして処理する「みなし判定」を活用する方法です。分析費用と期間を削減できますが、除去費用が割高になることもあるため、専門家と相談しながら判断することをおすすめします。
また、自治体によってはアスベスト調査費用や除去費用の補助金制度を設けているところもあります。
工事を始める前に、地域の制度を確認しておくとよいでしょう。
まとめ

2023年10月以降、アスベスト調査は有資格者による実施が法的義務となり、すべての建設・解体業者が対応を迫られています。
本記事で解説したように、調査が必要な工事の範囲、レベル別の建材分類、具体的な実務手順、費用相場など、押さえるべきポイントは多岐にわたります。
調査は書面調査、現地調査、サンプリング、報告書作成と複数のステップがあり、それぞれに専門知識と経験が求められます。一般的な費用相場は7万円から13万円程度で、完了までには1〜2週間程度かかるため、工程管理も含めて慎重な対応が必要です。
こうした煩雑な調査業務を専門家に一括して任せることで、建設業者は本業に専念しながら確実に法令を遵守できます。
CIC日本建設情報センターの「石綿の窓口」では、厚生労働省登録講習機関として27年の実績を活かし、調査・分析・報告書作成までワンストップで対応しています。
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