
アスベスト(石綿)が含まれた建材の解体・除去工事を行う現場では、作業員の安全と環境保護のため、法律に基づいた厳格な管理体制が必要となります。その中心的な役割を担うのが、「石綿作業主任者」です。
石綿作業主任者として働くためには、「石綿作業主任者技能講習」を修了し、資格を取得しなければなりません。
この記事では、技能講習の内容や取得の難易度、そして「建築物石綿含有建材調査者」や「 石綿取扱作業従事者特別教育 」といった他のアスベスト関連資格との違いについて解説します。また、自社で主任者を確保することが難しい場合の対応策についてもご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。


石綿作業主任者技能講習とは

「石綿作業主任者技能講習」は、アスベスト含有建材の除去作業において、作業員を指揮・監督するために必要な知識と技術を習得するための講習です。この資格は、作業の安全性を確保するための現場の最高責任者の役割を果たします。
現場での具体的な役割と責任
石綿作業主任者の役割は、作業が安全かつ法令に沿って進められるように、現場を管理・統括することです。具体的な職務は多岐にわたります。
- 作業計画の指揮:作業方法・手順・時間配分など、事前に作成された計画通りに作業員を指揮する。
- 保護具の着用確認:作業員が呼吸用保護具や保護衣などを正しく着用しているか、常時監視する。
- 飛散防止措置の確認:粉じんの発散を抑えるための湿潤化措置や隔離養生が適切に実施されているかを確認する。
- 関係者との連絡調整:発注者や元請け責任者、労働基準監督署など、関係機関との連絡や報告を行う。
主任者の適切な判断と行動が、作業員の健康と周辺環境の安全を左右するため、責任が重い資格と言えます。
労働安全衛生法に基づく必置資格
石綿作業主任者は、労働安全衛生法に基づいて、アスベスト含有建材の除去作業を行う事業者に設置が義務付けられている「必置資格」です。
石綿等(アスベストの含有量が0.1重量%を超える建材など)を取り扱う作業に従事する労働者が10人以上の場合、事業者は石綿作業主任者を選任する義務があります。また、10人未満でも、技能講習修了者を作業の指揮・監督にあたらせる必要があります。
違反時の罰則
石綿作業主任者を選任せずにアスベスト除去作業を実施したり、選任した主任者に適切な職務を行わせなかったりした事業者は、労働安全衛生法の違反として罰則の対象となります。
罰則には、6ヶ月以下の懲役、または50万円以下の罰金などが科される可能性があり、企業の社会的信用を失うことにもつながります。
建築物石綿含有建材調査者、特別教育、石綿作業主任者の違い

アスベスト関連の資格にはいくつか種類があり、それぞれの役割と必要な場面が明確に異なります。
| 資格名 |
目的とする役割 |
必要な知識 |
設置/受講義務 |
| 石綿作業主任者 |
除去現場の指揮・監督(現場の最高責任者) |
安全な除去方法、保護措置、法令 |
作業現場での選任義務 |
| 建築物石綿含有建材調査者 |
工事前の事前調査(アスベストの有無の特定) |
建材の特定、図面読解、法令、分析知識 |
事前調査を行う場合の必須資格 |
| 石綿取扱作業従事者(特別教育) |
除去作業への従事(作業員) |
アスベストの基礎知識、保護具の使用法、危険性 |
除去作業に従事する際の受講義務 |
それぞれの資格の主な違いは、アスベスト対策の「どの段階」で「どのような責任」を負うかという点です。
- 作業主任者:アスベスト除去工事を行っている最中に、現場の安全を管理する。
- 調査者:工事が始まる前に、建物にアスベストが含まれているかを調査する。
- 特別教育:作業主任者の指示の下で、実際に除去作業に従事する作業員が最低限の知識を得るために受講する。
三者はそれぞれ異なる役割と責任を持ち、アスベスト対策において欠かせない存在です。


受講資格と必要な実務経験

「石綿作業主任者技能講習」は、受講するための前提条件が比較的緩やかです。
講習の受講資格は満18歳以上であることのみで、学歴や実務経験は一切問われません。建設現場での経験がない方や、事務職の方でも受講が可能です。
技能講習を修了し、修了試験に合格すれば、誰でも石綿作業主任者として選任される資格を得られます。このため、キャリアアップや現場での役割拡大を目指す方にとって、挑戦しやすい資格と言えるでしょう。
石綿作業主任者技能講習の内容(カリキュラム)

石綿作業主任者技能講習は、原則として2日間にわたって実施されます。この期間に、アスベストを安全に取り扱うための専門的な知識を幅広く学びます。
講習科目は、主に以下の4つに分けられ、合計で11時間の受講が義務付けられています。
| 講習科目 |
講習時間 |
内容の概要 |
| 健康障害 |
1時間 |
アスベストの有害性、吸入による健康被害(中皮腫、肺がんなど)の知識を学ぶ。 |
| 作業環境の改善 |
4時間 |
粉じんの発散防止、作業場の隔離、除じん装置、換気装置などの管理方法を学ぶ。 |
| 作業方法 |
4時間 |
除去作業の手順、保護具(マスク、保護衣)の正しい使用方法、湿潤化の方法など、実務的な内容を習得する。 |
| 関係法令 |
2時間 |
労働安全衛生法や石綿障害予防規則など、石綿作業主任者が知るべき法規と罰則について学ぶ。 |
石綿作業主任者技能講習の試験難易度

石綿作業主任者技能講習では、講習の最後に修了試験(筆記)が実施されます。しかし、難易度はそれほど高くありません。
試験は、講習で学んだ内容の理解度を確認する目的で行われます。出題形式は選択式(マークシート方式)で、講師が重要だと強調したポイントや配布されたテキストの内容をしっかりと復習すれば、十分に合格が可能です。
合格率は公表されていませんが、一般的に高い合格率で推移しており、資格取得を諦めるほどの難しい試験ではありません。講習内容を真剣に受講し、要点を押さえて臨めば、ほぼ合格できると考えて問題ないでしょう。

資格取得のメリットと費用・日程

ここでは、資格を取得することで得られるメリットと、講習にかかる費用・日程の目安を見ていきましょう。
資格取得のメリット
石綿作業主任者の資格を取得することには、現場で働く方や事業者にとって大きなメリットがあります。
- アスベスト除去作業を行う際の法律上の要件を満たし、罰則リスクを回避できる
- 現場での指揮・監督権限を持つことになり、資格手当の支給や昇進につながるキャリアアップが可能
- 有資格者として現場の安全を確保できるため、企業や個人の信頼性が高まる
費用と日程の目安
受講機関や地域によって費用は変動しますが、数日間の講習を受けるだけで現場の安全を担う重要な国家資格を得られるため、コストパフォーマンスは高いと言えます。
| 受講費用 |
1.5万~2.5万円程度(機関によって異なる) |
| 講習期間 |
2日間(合計11時間) |
| 開催場所 |
都道府県労働局長に登録された機関が全国で開催 |
石綿作業主任者はアウトソーシングも可能

アスベスト除去工事の際に、自社のメンバーの中から石綿作業主任者を選任することが難しい場合、外部の専門業者に依頼する(アウトソーシング)ことも可能です。
自社メンバーから石綿作業主任者を専任するのと比較して、専門業者へ外注するメリットは以下の通りです。
- 社員に講習を受講させるための時間と費用(受講料、日当など)が発生しない
- アスベスト専門の業者は法令や作業基準に関する知識が豊富で、現場での監督を確実に遂行できる
- 急な工事や予期せぬアスベスト発見時にも、迅速かつ柔軟に対応できる
特に、アスベスト除去作業が頻繁に発生しない事業者にとっては、その都度、信頼できる外部の専門家に主任者として現場を委託する方が、効率的で安全性が高いケースが多いでしょう。
まとめ

「石綿作業主任者技能講習」は、アスベスト除去工事の安全管理を担う重要な国家資格です。受講資格に実務経験は不要で、2日間の講習と修了試験に合格すれば取得できます。
資格を取得することで、法令順守はもちろん、現場でのキャリアアップにも直結します。
一方で、自社で主任者を立てることが難しい場合や、初めてのアスベスト工事で不安がある場合は、外部の専門家に調査から作業主任者の選任まで、一括してアウトソーシングすることを検討してみましょう。
CIC日本建設情報センターの「石綿の窓口」では、アスベストの調査・分析から行政報告、そして協力会社の紹介までワンストップでサポートを実施しております。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

