
建設現場や建築物の維持・管理などに従事される方で欠かせない知識がアスベストに関するものです。アスベスト(石綿)とは天然の繊維状鉱物のことで、優れた耐火性・断熱性から建築材料として使用されてきました。
アスベストが全面的に禁止されるより前に建てられた建築物には、吹付けアスベストが使用されている可能性があり、劣化や損傷がある場合は早急な対策が必要です。また、健康被害の観点から有資格者による調査が義務づけられており、無資格者はアスベスト調査に従事できません。
この記事では、吹付けアスベストについて詳しく解説します。なぜ危険なのか、どんな種類があるのか、どのように調査を進めるのがよいのかなどをご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

吹付けアスベスト(石綿)とは

アスベスト(石綿)は天然の繊維状鉱物で、その優れた耐火性・断熱性から建築材料として使用されてきました。吹付けアスベストは、アスベストにセメントなどの結合材と水を加えて混合し、吹付け機を用いて施工されたものです。
アスベスト含有建材は、解体時の発じん性(危険度)によってレベルが区分されています。以下の表は、建材の種類とレベルの関係性をまとめたものです。
| レベル |
建材の種類 |
主な使用箇所 |
| レベル1 |
石綿含有吹付け材 |
鉄骨梁・柱の耐火被覆・天井・壁の吸音・断熱 |
| レベル2 |
アスベスト含有断熱材・保温材・耐火被覆材 |
配管の保温材・煙突の断熱材・屋根裏の断熱材 |
| レベル3 |
そのほかの石綿含有建材(成形板など) |
天井板・壁板・床材・外壁材 |
吹付けアスベストは、特に飛散性のリスクが高いとされるレベル1に分類されます。レベル3やレベル2よりも、さらに適切な処置が求められるほど危険性を伴う建材です。
吹付けアスベストが危険な理由

アスベスト繊維は非常に微細であり、吸い込むことで以下のような重大な健康被害を引き起こす可能性があります。
- 石綿肺(じん肺の一種):肺組織が線維化する疾患
- 肺がん:肺に発生する悪性腫瘍
- 悪性中皮腫:胸膜や腹膜に発生する悪性腫瘍
参考:独立行政法人 環境再生保全機構「アスベスト(石綿)による健康障害のメカニズム」
アスベストを吸い込むことで生じる疾患は、非常に長い潜伏期間を有します。10年以上の潜伏期間があるとされており、数十年後に発症するケースが問題視されている傾向です。
そのため、飛散リスクの高いレベル1に分類される吹付けアスベストは、より慎重かつ適切に取り扱わなければなりません。調査の流れに関しては後述しますので、ぜひ参考にしてみてください。
吹付けアスベストの種類と特徴

吹付けアスベストは、レベル1に分類されるほど飛散リスクが高いことが分かりましたが、具体的にはどんな種類があるのでしょうか。主な種類は、以下のとおりです。
- 吹付け石綿
- 吹付けロックウール(石綿含有)
- 吹付けひる石(バーミキュライト)
ここでは、それぞれの特徴について詳しく解説します。
吹付け石綿
吹付け石綿は、1956年頃~1975年頃まで使用され、石綿含有率は60〜70%と非常に高い建材です。クリソタイル(白石綿)、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)などが使用されており、外見は綿状で柔らかく、青色・灰色・白色・茶色などの色を呈しています。
吹付けロックウール(石綿含有)
1975年に吹付け石綿が禁止された後、代替材として使用された建材です。1990年頃までは石綿を5%以下で混ぜて使用された歴史を有します。
外見は吹付け石綿と類似しており、目視だけでは判別が困難な場合が多いため、有資格者による専門的な調査が必要です。
吹付けひる石(バーミキュライト)
吹付けひる石は、ひる石(バーミキュライト)にアスベストを混合して施工した建材です。
表面は平坦ではなく、骨材の間に小さなすき間が見られており、断熱・吸音目的で使用されていました。
黄金色で光沢がある雲母状の鉱物が確認できる可能性もあり、結露の可能性がある室の天井や、音の反射を防止する必要のある天井に施工されていることが多い建材です。
吹付けアスベストが使用されている場所

吹付けアスベストが使用されがちな場所をまとめると以下のとおりです。
- 鉄骨造建築物:鉄骨の梁や柱、鉄板床などの耐火被覆材
- 鉄筋コンクリート造(SRC造)の建築物:空調機械室、ボイラー室、昇降機の機械室、駐車場の天井や壁など
建築物の種類によってどんな場所で使用されがちか異なります。調査を実施する際は、使用されやすい場所も知識として身に付けておくことが大切です。
吹付けアスベストの見分け方

吹付けアスベストにおけるアスベスト含有の見分け方として、主に以下の3つがあります。
- 建築年代から推測
- 設計図書や建材メーカーの情報を確認
- 【必須】有資格者による分析調査
それぞれの内容について詳しく解説します。
建築年代から推測
吹付けの建材にアスベストが含有されているかどうかの見極めとして、建築物の年代から判断する方法があります。年代を確認することで、アスベストが積極的に活用されていた時代かどうかを推測できるためです。
例えば、吹付け石綿は、1956年頃~1975年頃まで使用されています。吹付けロックウールも同様、1990年頃までは石綿を5%以下で混ぜて使用されていました。逆に言えば、禁止されて以降の建築物には含まれていないということです。
もちろん、吹付けアスベスト以外の建材におけるアスベストの含有に関しても調査が義務づけられていますが、まずは建築確認の申請書や竣工図から建築年代を確認し、アスベスト含有の可能性をイメージしておくと良いでしょう。
設計図書の情報を確認
建物の設計図書で建材の商品名や製造年代を確認することでも、吹付け材にアスベストが含有されているかどうかを特定しやすくなります。例えば、国土交通省の「石綿含有建材データベース」などを利用することで、商品名や型番・品番から確認可能です。
後述するように、有資格者による分析調査は必要不可欠ですが、可能な範囲で含有の可能性は確認しておくと良いでしょう。
【必須】有資格者による分析調査
2022年4月の法改正以降、一定規模以上の建築物における解体・改修工事では、建築物石綿含有建材調査者などの有資格者による事前調査が義務付けられました。そのため、上記の方法以外にも、現場でサンプルを採取、専門機関で分析することでアスベストの含有を確実に判定できます。
吹付けアスベストに関しても例外ではありません。有資格者による現場での目視確認・専門機関による分析調査が義務づけられており、もしアスベスト含有建材が発見されたら、適切な処置が求められています。
アスベスト調査の具体的な流れ

アスベスト調査は、主に以下の4ステップで進められます。
- 書面調査
- 目視確認
- 分析調査
- 報告書作成と提出
アスベスト調査の流れを正しく理解することで、漏れのない適切な調査を実施できます。それぞれの内容についてみていきましょう。
ステップ1:書面調査
調査の第一段階として、建築物の設計図書や施工図面などの文書をもとに事前調査が行われます。書面調査では、以下の内容を確認します。
- 建築年次(アスベスト含有吹付け材が規制された年代との照合)
- 使用建材の仕様
- 過去の改修・補修履歴
- アスベスト含有建材の使用記載
書面がない場合や記載が不明な場合でも、建築年次から使用の可能性を考慮することが可能です。ただし、書面の記載のみで判断せず、目視確認なども必ず実施する必要があります。
ステップ2:目視確認
書面調査の結果を踏まえ、実際の建築物で行うのが目視確認です。目視確認では、以下の内容を確認します。
- 書面と実際の建物との差異の確認
- 後から改修・補修された箇所の確認
- アスベスト含有が疑われる建材の特定
吹付けアスベストを含め、アスベストの含有建材は天井・壁・鉄骨・配管など、建物の至るところに使用されている可能性があります。調査対象範囲のすべての箇所を漏れなく確認することが大切です。
ステップ3:分析調査
目視確認でアスベスト含有の有無が判断できない場合、建材のサンプルを採取し、専門の分析機関で分析調査を行います。主な分析方法は、以下の2つです。
- 偏光顕微鏡法:アスベストの種類と含有率を測定
- X線回折法:アスベストの結晶構造を分析して同定
分析結果を記した調査票は、報告書の作成に必要となるため、3年間の保存が義務付けられています。
ステップ4:報告書作成と提出
事前調査の結果は、工事開始前に労働基準監督署や地方の自治体の窓口に提出する必要があります。報告は、石綿事前調査結果報告システムを通じて時間を選ばずに行うことも可能です。
アスベスト含有建材が確認された場合の対応

事前調査でアスベスト含有建材が確認された場合、レベル区分に応じた適切な対応が求められます。以下の表は、レベルによる対応策をまとめたものです。
| レベル1 |
- 工事14日前までに届出の提出
- 作業場所の隔離
- 集じん・排気装置の設置
- 作業員は保護具着用
- 薬液などによる湿潤化
- 掲示板の設置 など
|
| レベル2 |
| レベル3 |
- 薬液などによる湿潤化
- 作業員は保護具着用
- 掲示板の設置 など
|
飛散リスクが低いとされるレベル3においても、適切な処置が求められるのが特徴です。また、レベル1に該当する吹付けアスベストは、工事前14日前の届出から採取の方法、作業場所の隔離まで細かく対応が求められています。
信頼できるアスベスト除去業者を見極めるポイント

アスベスト除去業者に事前調査を依頼する場合、信頼できる業者選びが大切です。業者を選ぶ際は、以下のポイントを参考にしてみてください。
- 資格と許可を取得しているか確認する
- 経験や実績は豊富か確認する
- 安全対策は問題ないか確認する
- 料金と見積りの透明性を確認する
ここでは、それぞれのポイントについて詳しく解説します。
ポイント1. 資格と許可を取得しているか確認する
アスベスト調査・除去は法律で厳しく規制されているため、資格や許可を持つ信頼できる業者選びが大切です。
例えば、「石綿作業主任者」は除去作業の指揮監督に必須の国家資格であり、2022年法改正で義務化された事前調査には「建築物石綿含有建材調査者」の資格が求められます。
また、解体・改修工事には都道府県知事による「解体工事業登録」または「建設業許可」が必要です。業者を選ぶ際は、これらの資格・許可をウェブサイトや契約書で確認し、国土交通省のシステムで実在するか調べることをおすすめします。


ポイント2. 経験や実績は豊富か確認する
信頼できる業者を見分けるには、これまでの施工実績を確認することが大切です。特に、依頼を考えている建物と類似した条件(例:住宅、商業施設、工場など)での実績がどのくらい豊富かをチェックしておきましょう。
また実績では、写真を用いて工事の流れが具体的に説明されているかどうかも判断材料になります。実際に依頼した人の口コミ・評判なども確認しておくと安心です。
ポイント3. 安全対策は問題ないか確認する
アスベスト除去作業は非常に危険を伴うため、安全対策の徹底が必要です。業者を選ぶ際は、以下のように適切な防護対策を徹底して作業してもらえるのか、作業中の安全管理がどうなっているかなどを確認しておきましょう。
- 防護服の着用は徹底しているか
- 現場の封じ込め対策は万全に行われるか
- 廃棄物は適切な方法で処理されているか
ポイント4. 料金と見積りの透明性を確認する
見積りを依頼する際は、調査項目や除去方法、廃棄費用まで詳細に記載されているか確認しましょう。
極端に安価な見積もりは、必要な対策が省かれている可能性があります。
過去の施工事例や行政への届出実績なども確認し、信頼性の高い業者を選定してください。
また、見積もりの内訳が詳細で分かりやすいか、項目ごとの単価が明記されているか、追加費用の説明があるかなどを確認しておくと安心です。
アスベスト関連の相談は石綿の窓口がおすすめ!

CIC日本建設情報センターでは、アスベストの調査から報告までを丸ごとお引き受けする「石綿の窓口」を提供しております。ご希望によっては除去工事や産廃、解体工事の「見積り」や「紹介」も無料対応のサービスです。
ここでは、石綿の窓口の特徴や利用の流れについて解説します。
石綿の窓口の特徴
「石綿の窓口」の特徴を大きくまとめると、以下の3つです。
- 面倒な業務を全て丸投げできる
- 施工のプロによる高い品質
- 工事費用の大幅削減が可能
それぞれ詳しく解説します。
特徴1. 面倒な業務を全て丸投げできる
CIC日本建設情報センターの「石綿の窓口」をご利用いただくことで、調査・分析・報告書作成まで全て丸投げ可能です。
書類作成などの難しい業務負担は一切不要になり、本業に専念いただけます。
全国主要エリアで対応可能なため、窓口も一本化できます。建築物だけでなく工作物についてもお気軽にご相談ください。
特徴2. 施工のプロによる高い品質
石綿の窓口は、調査経験が豊富な担当者が窓口になって石綿事前調査結果報告システムの内容を網羅した調査報告書を作成するため、高い品質なのが特徴です。
また、担当者が直接電話対応し、除去工事や産廃などアスベストに関する施工上の疑問や不安なことをお聞きするため安心です。
特徴3. 工事費用の大幅削減が可能
石綿の窓口では、お客様のご希望に応じて、アスベスト除去工事や産廃、解体工事の見積や紹介も無料で行います。そのため、無駄な手間を省きながらトータルの工事費用を削減できます。
石綿の窓口の利用の流れ
「石綿の窓口」を実際にご利用される場合、流れは以下のとおりです。
- お問合せ
- ヒアリング・見積り提示
- 図面・現地調査
- 検体分析・報告書作成
- 報告書の送付
まずはWebまたはお電話でお気軽にご相談ください。CIC日本建設情報センターの担当者が丁寧にご対応させていただきます。お問い合わせ後、現場に関するヒアリングを実施し、図面等も確認したうえで見積りを無料で提示いたします。
その後、改めて書面調査を行い、その内容にもとづいて有資格者スタッフが現地調査を実施。その後、分析調査や報告書の作成まで行います。報告書の作成完了後、PDFにて事前報告書データをご送付いたします。
アスベストの調査でお悩みの場合は、まずお気軽にご相談くださいませ。
まとめ

この記事では、吹付けアスベストについて詳しく解説しました。アスベスト(石綿)は天然の繊維状鉱物で、その優れた耐火性・断熱性から建築材料として使用された歴史を有します。吹付けアスベストは、アスベストにセメントなどの結合材と水を加えて混合し、吹付け機を用いて施工されたもので、吹付け石綿や吹付けロックウールなどが活用されていました。
吹付けアスベストは、アスベスト含有建材の中でも最も飛散リスクが高いとされるレベル1に分類されます。そのため、アスベスト調査はより慎重かつ適切に実施しなければなりません。もし、外部の機関にアスベスト調査を依頼する場合は、本当に信頼できる業者かどうかを事前に見極めておきましょう。
CIC日本建設情報センターでは、アスベストの事前調査から報告までを全てお引き受けする「石綿の窓口」を用意しております。建設業界におけるプロが安全面に徹底し、分かりやすくご説明した上で実施致しますので、ぜひお気軽にご相談ください。
石綿の窓口について詳しくはこちら
お問い合わせ電話:03-6432-4952
