
ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)は特定建築物での選任が義務づけられている国家資格です。特にビル管理会社に勤務する方にとって重要な資格ですが、試験範囲がとても広く、合格するには長期の学習時間を要します。
また、試験は年1回のみの実施であることから、モチベーションが続かず、挫折してしまう方も少なくありません。
そこで本記事ではビル管理士試験合格を目指す方へ向けて、試験の難易度やモチベーションを維持するコツを解説します。おすすめの勉強方法についても触れていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
ビル管理士とは

ビル管理士は正式名称を「建築物環境衛生管理技術者」といいます。建築物における衛生的環境の確保に関する法律(通称ビル管法)により、特定建築物で選任が義務づけられた国家資格です。
特定建築物に選任されたビル管理士は、環境衛生上の維持管理に関わる業務全般を担当し、年間の保守点検業務の計画や管理業務の指揮監督といった仕事を行います。
また、ビル管理士の取得方法は「毎年1回実施される筆記試験に合格する」「講習を受講して修了する」の2種類です。
講習は全7科目101時間にも及ぶだけでなく、費用も高額であるため、どちらかといえば試験での取得が一般的です。このほか、「事務所や店舗など多数の人が利用する建築物で、環境衛生上の維持管理に関する実務を2年以上」という実務経験が受験資格に設けられている点も把握しておきましょう。
ビル管理士の難易度

ビル管理士試験は決して簡単な試験ではありません。とはいえ、どの程度の難しさなのかよくわからないという方もいるのではないでしょうか。
ここでは、ビル管理士の難易度について、過去のデータや合格率、合格基準点などを踏まえて解説します。
合格率は合格率は10~20%台
ビル管理士の試験合格率は年によって変動がありますが、おおよそ10〜20%台で推移しています。以下の表は、過去10年間の受験者数と合格者数、合格率をまとめたものです。
| 年度 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
| 2016年(平成28年) |
10,394人 |
2,956人 |
28.4% |
| 2017年(平成29年) |
10,209人 |
1,387人 |
13.6% |
| 2018年(平成30年) |
11,096人 |
2,339人 |
21.1% |
| 2019年(令和元年) |
10,146人 |
1,245人 |
12.3% |
| 2020年(令和2年) |
9,924人 |
1,933人 |
19.5% |
| 2021年(令和3年) |
9,651人 |
1,707人 |
17.7% |
| 2022年(令和4年) |
9,413人 |
1,681人 |
17.9% |
| 2023年(令和5年) |
8,232人 |
1,819人 |
22.1% |
| 2024年(令和6年) |
7,593人 |
1,759人 |
23.2% |
| 2025年(令和7年) |
7,131人 |
2,180人 |
30.6% |
過去データを見ると、合格率が高かった年の翌年は落ちる傾向にあることがわかります。直近では合格率は増加の傾向にあるものの、過去の「合格率が高い年の翌年は引く可能性がある」点はビル管理士試験の一つの特徴として覚えておくと良いでしょう。
また、受験者数は近年減少傾向にあり、2025年度は7,131人と、かつての約11,000人台と比較して少なくなっています。一方で合格率は2025年度に30.6%と直近では高い水準となりました。受験者数の変動や試験の難易度変化も意識しながら対策を立てることが大切です。
得点率65%以上および科目ごとの得点率40%以上が合格基準
ビル管理士試験に合格するためには、以下の2つの条件をクリアしなければなりません。
- 試験問題全体の得点率が65%以上
- 科目ごとの得点率がすべて40%以上
ビル管理士の試験問題は合計で180問あり、点数配分はすべて1問1点です。したがって、65%以上の得点率をクリアするためには、最低117点を取らなければなりません。
また、以下の7科目が出題されますが、すべての科目の得点率が40%以上でなければなりません。
- 建築物衛生行政概論
- 建築物の構造概論
- 建築物の環境衛生
- 空気環境の調整
- 給水及び排水の管理
- 清掃
- ねずみ、昆虫等の防除
もし試験全体の得点率が65%以上であったとしても、1科目でも40%を下回ってしまうと不合格になります。また、科目合格制度はないため、特定の科目で高得点を取れても翌年以降免除されることはなく、再受験する場合はすべての科目を受けなければなりません。
このように試験全体での得点率と科目ごとの得点率の両方の合格基準を満たす必要がある点が、ビル管理士の難易度を高めている理由の一つです。
ビル管理に係わる資格では難易度が高い
ビル管理の仕事ではビル管理士以外にもさまざまな資格が必要です。
たとえば「ビルメン四点セット」と呼ばれる以下4つの資格が有名です。
- 第二種電気工事士
- 2級ボイラー技士
- 危険物取扱者乙種4類
- 第三種冷凍機械責任者
ビルメン4点セットもそれなりに学習時間を要する資格ではありますが、ビル管理士と比較すると難易度は低めです。2級ボイラー技士と危険物取扱者乙種4類は、年に数回、試験が実施されるので、不合格になった後も再チャレンジしやすいでしょう
『第二種電気工事士』と第三種冷凍機械責任者は年1回のみの試験ですが、ビル管理士のように複数の科目を含んだ資格ではないため、試験範囲は広くなく、短期間の学習でも合格できる試験です。
一方、ビル管理士試験では、建物の構造・設備の仕組み、清掃や害虫駆除などビル管理の仕事に必要な知識問題が幅広く出題されるため、長期間の学習を要します。
モチベーションが続かない3つの理由

ビル管理士試験の学習を始めると、モチベーションの維持に苦慮することがあるでしょう。モチベーションが続かない主な理由を以下にまとめます。
- 問題内容が理解できない
- 勉強仲間がいない
- 試験までの期間が長い
それぞれの内容について詳しく解説します。
問題内容が理解できない
ビル管理士試験の学習は、他の多くの資格試験と同様、テキストを読んだ後、練習問題や過去問を繰り返す方法が効果的です。しかし、ビル管理士試験は7つの科目で構成されており、出題範囲が非常に広いことから、過去問を1周するのにも多くの時間を要します。
また、科目によって得意分野と苦手分野が生じがちです。特に空調や給排水、建築の問題は難解な内容も多く、問題が理解できず挫折してしまう方が多い傾向にあります。そのため、苦手分野をどのように攻略していくかも合格するための重要なポイントといえます。
勉強仲間がいない
通信講座などを利用する場合を除き、資格学習をする場合は基本的に一人で勉強しなければなりません。学校の勉強と違って周りに勉強仲間がいないことが、モチベーションを維持できない原因となることもあるでしょう。
すでに資格学習に慣れている方であれば、一人で学習することが問題になるケースはないと思われますが、社会人になってから資格学習をしてこなかった方は、一人で学習することに慣れていく必要があります。「明日から勉強しよう」となりがちな状態を自分で律しなければならない点も難しいポイントです。
試験までの期間が長い
2026年度のビル管理士試験は10月4日(日)に実施され、申込み期間は5月7日(木)〜6月15日(月)となっています。仮に申し込み時点から学習したとしても、試験まで約4ヶ月の時間があります。さらに申込み前から学習を始める方は、半年以上にわたって勉強を続けなければなりあません。
長期にわたって資格学習のモチベーションを保ち続けるのは難しく、合格することに対して強い意志を持っていなければなりません。また、仕事やプライベートとの兼ね合いも重要になってくるでしょう。
モチベーションを維持するには?

ビル管理士試験の学習でモチベーションを維持するためのコツを4つ紹介します。
- 試験計画を立てる
- 過去問を解いて実力を確認する
- 勉強仲間を探す
- 設備機器を実際に見る
長期間の学習が苦手な方はぜひ参考にしてください。
1. 試験計画を立てる
ビル管理士試験の学習はテキストを読んで練習問題や過去問を解くことで実力をつけていくのが基本です。しかし、試験範囲が広いため計画を立てずに学習を始めると、試験日までにすべての科目の学習が完了しない可能性があります。
また、最初からすべての科目に手を付けると、範囲の広さに驚き、モチベーションが下がることも考えられます。そのため、1週間や1ヶ月スパンで、科目ごとの学習期間を決めてから取りかかることをおすすめします。
2. 過去問を解いて実力を確認する
ある程度、学習が進んだところで、実際に試験形式で過去問を解き、実力を確認するようにしましょう。過去問は年度ごとに難易度の違いがあるため、試験日までに8〜10年分は実施しておきたいところです。
一定期間ごとに過去問を解くことで、点数が上がっていけば実力がついたことを実感できるので、モチベーション維持につながります。ただし、過去問を解く時は答えを丸暗記するのではなく、問題の意味を正しく理解することを意識してください。
3. 勉強仲間を探す
勉強仲間がいなくてモチベーションが上がらないという方は、仲間を探す方法を考えてみましょう。ビル管理会社に勤務している方であれば、同じ時期に試験を受ける仲間は見つけやすいと思われますので、同僚や上司などに相談してみることをおすすめします。
また、ネット上やSNSで勉強仲間を探す方法もあります。
最近ではTwitterで勉強用アカウントを作り、日々の学習の進捗具合や悩みなどを発信している方も多いので、そういった方をフォローして励まし合えば、モチベーションアップにつながるでしょう。
4. 設備機器を実際に見る
ビル管理会社をはじめとした設備管理系の会社に勤務している方に限定されますが、ビル管理士試験に出題される空調や給排水の設備機器を現場で実際に見ることは、もっとも効果的な学習になります。
特に空調の問題では実際に設備管理を経験した方でないと、イメージできないような問題が多く出題される傾向にあります。
テキストや過去問を読んでもいまいち頭に入らない方は、現場で積極的に設備点検や工事に携わり、自分の目で設備の仕組みを理解することをおすすめします。
勉強方法や教材の見直しを

色々な方法を試してもモチベーションが維持できない場合、そもそもの勉強方法や教材の見直しを検討することをおすすめします。今の勉強方法や教材が適していない可能性があるためです。
解決策としては、主に以下の3つが挙げられます。
- 通信講座を利用する
- 別の教材を購入する
- 現場で働く先輩の話を聞く
それぞれの内容についてみていきましょう。
通信講座を利用する
テキストと過去問での学習が続かない方は、ビル管理士試験用の通信講座を利用することをおすすめします。
通信講座は市販のテキストより高額になる一方で、専門講師による解説や、より詳しい専門テキスト、厳選問題集などの入手によって勉強の効率を底上げできるのがメリットです。
暗記する事項が多いビル管理士試験ですが、テキストを読むだけでは頭に入らないこともあります。講師の説明を聞けば記憶に定着しやすくなるので、効率的な学習をしたい方は検討してみましょう。
CIC日本建設情報センターでも『ビル管理士』の受験者向けに通信講座を提供しておりますので、ぜひ受講をご検討ください。
別の教材を購入する
ビル管理士のテキストや教材は複数出版されていますので、もし自分に合わないと感じた場合は、他の教材を購入して比較してみるのも良いでしょう。ただし、テキストや問題集を複数購入して、すべて利用しようとしても使いこなせない場合が大半です。
メインのテキストは1~2冊あれば十分なので、使いやすいものが見つかれば、そのテキストに集中して学習することをおすすめします。
もし、テキストや過去問題集をどう選んだら良いか分からない、おすすめのものを購入して勉強したいという方は、CIC日本建設情報センター(CIC出版)のものがおすすめです。
25年以上ある豊富なノウハウをもとに、独学者のためのテキスト・問題集を販売し、多くの人気を集めています。また、毎年発行されているため、常に最新情報の内容で勉強できるのもメリットです。情報量も豊富なので、ぜひ活用をご検討ください。
現場で働く先輩の話を聞く
ビル管理会社に勤務している方に限定されますが、現場で実際に設備管理を行っており、ビル管理士の資格を取得している先輩の話を聞いて教わる方法がおすすめです。
自分で学習して分からなかった問題の解き方や、試験に合格するコツなど、実際に受験した経験のある方の話は参考になることでしょう。
ビル管理士試験の勉強に関してよくある質問

ここでは、ビル管理士試験の勉強に関してよくある質問をまとめました。
Q. ビル管理士試験の勉強時間はどのくらい必要ですか?
一般的に、独学で合格するには300〜900時間程度の学習時間が目安とされています。毎日2時間学習した場合でも半年以上かかる計算になるため、早めに学習を開始することが大切です。
Q. ビル管理士試験は独学で合格できますか?
独学で合格している方も多くいます。ただし、試験範囲が広く難易度も高いため、計画的な学習と良質なテキスト・過去問の活用が不可欠です。理解が難しい科目がある場合は、通信講座の併用もご検討ください。
Q. 試験に落ちた場合、翌年また全科目受け直す必要がありますか?
ビル管理士試験には科目合格制度がありません。一部の科目で高得点を取っていても翌年に免除されることはなく、再受験の際はすべての科目を受験する必要があります。
まとめ

ビル管理士の試験は長期間の学習が必要になる試験です。長い間、モチベーションを維持するには、自分なりに工夫していく必要があります。
まずは学習の計画を立てることから始め、一気にすべての科目をマスターしようとは考えず、毎日コツコツ続けることを意識してみてください。
また、独学での学習が苦手な方は、勉強仲間を探したり、通信講座を利用したり、自分なりに対策を考えることをおすすめします。
CIC日本建設情報センターでは、ビル管理士の受験者向けに通信講座を提供しております。受講者がモチベーションを維持しながら、最短距離で合格を目指せる内容となっておりますので、ぜひ受講をご検討ください。