
「高年齢者労働災害防止教育って何?受講しないといけないの?」と気になる方もいるのではないでしょうか。
令和8年4月より、高年齢者の特性に配慮した労働災害防止対策の実施が事業者の努力義務となりました。「高年齢者労働災害防止教育」は、こうした対策を職場で進めるために、高年齢労働者を管理・指導する立場の方と、高年齢労働者本人の双方を対象として実施される安全衛生教育です。
この記事では、「高年齢者労働災害防止教育」の概要について解説します。受講の対象者や受講タイミング、講習内容、受講方法などもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。


高年齢者労働災害防止教育とは

「高年齢者労働災害防止教育」とは、高年齢労働者の労働災害を防止するために、高年齢者の特性や職場環境の改善、健康確保などについて学ぶ安全衛生教育です。労働安全衛生法第62条の2第2項と、厚生労働省の「高年齢者の労働災害防止のための指針」(令和8年2月10日 公示第1号)に基づいて実施されます。
高年齢労働者は、加齢に伴う筋力やバランス能力、視力・聴力などの身体機能の低下により、転倒や墜落・転落をはじめとする労働災害のリスクが高まる傾向があります。本人は「まだ大丈夫」と感じていても、若いころと同じ感覚で作業を続けることで、思わぬケガにつながることも少なくありません。
そのため、「高年齢者労働災害防止教育」は、管理者向けと作業者向けの2つに分かれています。管理者は職場環境や作業管理の改善を、作業者本人は自身の身体機能の変化とセルフケアを学ぶことで、職場全体で高年齢者の労働災害防止に取り組めるようになります。
高年齢者の労働災害防止のための指針とは
「高年齢者の労働災害防止のための指針」とは、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善や作業管理など、事業者が講ずるよう努めるべき措置をまとめたものです。これまで「エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)」として示されていた内容が、法改正にともない、労働安全衛生法に基づく指針として位置づけられました。
指針では、事業者が取り組むべき事項として、次の5つが示されています。
- 安全衛生管理体制の確立等(経営トップによる方針表明、リスクアセスメントの実施など)
- 職場環境の改善(照度の確保、段差の解消、手すりの設置、作業管理の見直しなど)
- 高年齢者の健康や体力の状況の把握(健康診断、体力チェックなど)
- 高年齢者の健康や体力の状況に応じた対応(就業上の措置、業務のマッチングなど)
- 安全衛生教育(高年齢者に対する教育、管理監督者等に対する教育)
このうち「安全衛生教育」では、高年齢者本人に対する教育に加え、高年齢者が従事する業務の管理監督者や、事業場内で教育を行う者に対しても、高年齢者の特性と安全衛生対策についての教育を行うことが望ましいとされています。「高年齢者労働災害防止教育」は、まさにこの内容に対応した教育です。
高年齢者労働災害防止教育の受講内容
以下の表は、CIC日本建設情報センターで実施している「高年齢者労働災害防止教育」の講習内容をまとめたものです。
管理者向け
| 講習科目 |
受講時間 |
| 高年齢労働者に配慮した職場環境 |
39分 |
| 具体的な改善事例について |
42分 |
| 腰痛・転倒・熱中症の防止対策について |
1時間12分 |
| 健康確保について |
39分 |
| 合計 |
3時間12分 |

作業者向け
| 講習科目 |
受講時間 |
| 高年齢労働者に配慮した職場環境 |
37分 |
| 具体的な改善事例について |
38分 |
| 腰痛・転倒・熱中症の防止対策について |
44分 |
| 健康確保について |
26分 |
| 合計 |
2時間25分 |

「高年齢者労働災害防止教育」は、学科のみの講習で実技は実施されません。科目の構成は管理者向け・作業者向けで共通していますが、管理者向けは職場環境の改善や労働災害防止対策を「進める立場」として、作業者向けは加齢に伴う身体機能の変化を理解し「自ら安全に働く立場」として学ぶ内容になっています。
高年齢労働者と周囲の人の安全を守るために重要な内容を学ぶ講習なので、集中して取り組みましょう。自分に適した受講方法でじっくりと理解を深めることが大切です。
高年齢者労働災害防止教育の受講対象者

「高年齢者労働災害防止教育」の受講対象者は、管理者向けと作業者向けで異なります。
| 区分 |
主な受講対象者 |
| 管理者向け |
・高年齢労働者が従事する業務の管理監督者
・高年齢労働者の安全衛生管理・労働災害防止対策を担当する方
・事業場内で高年齢労働者への安全衛生教育を行う方
|
| 作業者向け |
・高年齢労働者本人
・これから高年齢期を迎える労働者
|
受講資格や年齢、役職などの要件は特にありません。なお、国の補助制度などでは、60歳以上の労働者が「高年齢労働者」として扱われていますが、身体機能の低下は60歳を境に急に始まるものではありません。指針でも、事業場の実情に応じて青年・壮年期から体力チェックを行うことが望ましいとされているため、50代の労働者が早めに受講するのも有効です。
また、管理者・作業者のどちらか一方だけが学ぶのではなく、両方の教育を組み合わせることで、職場全体として高い労働災害防止効果が期待できます。
高年齢者労働災害防止教育の受講タイミング

「高年齢者労働災害防止教育」は、法令で受講時期が定められている教育ではありません。そのため、事業場の状況に応じて計画的に受講することが大切です。受講を検討したいタイミングとしては、次のようなケースが挙げられます。
- 高年齢労働者が従事する業務の管理監督者や、安全衛生の担当者に就いたとき
- 定年後の再雇用や再就職で、高年齢者が新しい業種・業務に就くとき
- 職場で高年齢者の転倒やヒヤリハットが発生したとき
- 事業場で高年齢者労働災害防止対策の取り組みを始めるとき
特に、再雇用や再就職によって経験のない業務に従事する高年齢者には、指針でも特に丁寧な教育訓練を行うことが求められています。令和8年4月から事業者の努力義務となったことを踏まえ、まだ取り組みを始めていない事業場は、早めに管理者・作業者への教育を進めることをおすすめします。


高年齢者労働災害防止教育の重要性

厚生労働省の「令和6年の労働災害発生状況」によると、休業4日以上の死傷者数に占める60歳以上の労働者の割合は、初めて3割に達しました。働く高年齢者が増える中で、高年齢者の労働災害は年々増加しています。
また、労働災害の発生率を見ると、60歳以上は30代と比べて男性で約2倍、女性で約4倍と高い水準にあります。事故の型別では、つまずきや滑りによる「転倒」や「墜落・転落」が多く、休業期間が長期化しやすいのも高年齢者の労働災害の特徴です。
こうした状況を受け、労働安全衛生法の改正により、令和8年4月から高年齢者の特性に配慮した労働災害防止対策の実施が事業者の努力義務となりました。教育の受講自体は法令上の義務ではありませんが、適切な対策を講じていない場合、事故が起きた際に企業の安全配慮のあり方が問われたり、行政から指導を受けたりする可能性があります。
「長年の経験があるベテランだから大丈夫」と油断していると、わずかな段差でのつまずきが重大なケガにつながる恐れがあります。管理者と作業者がそれぞれの立場で高年齢者の特性を正しく理解し、安心して働き続けられる職場づくりに努めましょう。
高年齢者労働災害防止教育の修了証
「高年齢者労働災害防止教育」の修了後、受講者に対して修了証が発行されます。修了証は主に、「PDF版」と「カード版」の2種類です。なお、CICで発行する修了証に有効期限はありません。
PDF版は、Web講座の修了後すぐにダウンロードできるため、すぐに証明書を取得できます。一方、カード版はコンパクトで携帯しやすいため、現場や社内で受講歴の確認を求められた際にもすぐに対応できます。
カード型修了証の発行に義務はありませんが、携帯・提示のしやすさを踏まえると、カード版で携帯するのがおすすめです。CIC日本建設情報センターでは、カード版の修了証の発行に対応しております。修了証の取り扱いにもこだわりたい方は、ぜひご検討ください。
CIC日本建設情報センターの高年齢者労働災害防止教育

CIC日本建設情報センターでは、「高年齢者労働災害防止教育(管理者向け)」・「高年齢者労働災害防止教育(作業者向け)」の2つのWeb(オンライン)講座を提供しています。必要なポイントをコンパクトにまとめた講義資料と、労働安全コンサルタントによるわかりやすい動画講義を通じて、短期間で効率よく知識を身につけることが可能です。
CIC日本建設情報センターのWeb講座は、以下の手順で受講できます。
- CIC日本建設情報センターのWeb講座に申し込む
- 入金確認後、メールでログイン情報が送付される
- 受講(視聴)が開始する
- 受講完了後、自分が選択した修了証を受け取る
Web講座で受講するメリットやデメリット、受講の流れについて詳しく知りたい方は、以下の「高年齢者労働災害防止教育のオンライン受講とは?受講内容やメリットを解説」を参考にしてみてください。
指針でも、勤務シフトなどの都合で集合研修が難しい事業場では、Web(オンライン)講座が有効です。Web講座なら、24時間好きな時間にPCやスマホから受講できるため、シフト勤務や短時間勤務の高年齢労働者も無理なく受講できます。
一方で、「受講者が実際に画面の前で学んでいるのか分からないから不安…」と感じる事業者の方もいらっしゃるかもしれません。
CICの講座では顔認証システムを採用しており、受講者が画面の前にいない場合は学習が進まない仕組みです。このため、講座を修了した時点で「受講者本人がしっかりと受講を終えた」ことの証明にもつながります。
「高年齢者労働災害防止教育(管理者向け)」・「高年齢者労働災害防止教育(作業者向け)」をあわせて受講すれば、管理者・作業者の双方から高年齢労働者の労働災害防止に取り組めます。受講方法でお悩みの場合は、ぜひCIC日本建設情報センターの講座をご検討ください。

