
「解体用の特別教育は、整地用と何が違うのか」「ブレーカを付けて作業させるのに、どの資格が必要なのか」など、解体用の特別教育について、このようなお悩みや疑問をお持ちの事業者・担当者の方も多いのではないでしょうか。
解体作業は、既存構造物の状態が一件ごとに異なり、倒壊や飛来・落下といった重大災害につながりやすい作業です。しかもベースマシンは油圧ショベルと同じであるため、「バックホーの特別教育を修了しているから運転できる」という誤解が起こりやすく、気づかないうちに無資格作業となっている例も見られます。
この記事では、「小型車両系建設機械運転業務特別教育(解体用)」について詳しく解説しますので、ぜひ自社の安全管理の参考にしてください。

小型車両系建設機械運転業務特別教育(解体用)とは

まずは、小型車両系建設機械運転業務特別教育(解体用)がどのような教育なのか、その概要と対象機械を確認していきましょう。
小型車両系建設機械運転業務特別教育(解体用)の概要
「小型車両系建設機械運転業務特別教育(解体用)」とは、機体質量3トン未満の解体用機械を運転する業務に労働者を就かせる際に、事業者が実施しなければならない法定の安全衛生教育です。
根拠となるのは労働安全衛生法第59条第3項および労働安全衛生規則第36条第9号で、カリキュラムは安全衛生特別教育規程第11条の3に定められています。「整地・運搬・積込み用及び掘削用」は同規程第11条に規定されており、科目も時間数も異なる別の教育です。
なお機体質量とは、作業装置を取り外した本体の乾燥質量を指し、燃料・作動油・運転者の質量は含みません。車両総重量や運転質量とは異なるため、機械本体の銘板やカタログの表示を必ず確認してください。3トン以上の解体用機械を運転する場合は、車両系建設機械(解体用)運転技能講習の修了が必要です。
対象となる解体用機械4種類
対象となるのは、労働安全衛生法施行令別表第7第6号に掲げられた解体用機械で、動力を用い、かつ不特定の場所に自走できるものです。次の4種類があり、いずれも油圧ショベルのアーム先端にアタッチメントとして装着して使用します。
ブレーカ

先端に取り付けたのみ(チゼル)を油圧で打撃し、コンクリートを砕く機械です。
基礎や土間コンクリートの解体、岩盤の破砕などに使われます。
鉄骨切断機

はさみ状の刃で鉄骨や鋼材を切断する機械です。
鉄骨造の建物を解体する際に、柱や梁を搬出できる長さに切り分けます。
コンクリート圧砕機

上下の刃でコンクリートをはさみ込み、圧し潰して壊す機械です。
鉄筋コンクリート造の壁や柱を、振動や騒音を抑えながら解体できます。
解体用つかみ機

複数の爪で対象物をつかむ機械です。
解体材のつかみ取りや積込みのほか、木くず・鉄くずなどの分別作業にも使われます。
小型車両系建設機械運転業務特別教育(解体用)の目的
本教育の目的は、解体用機械の構造・取扱い方法と、解体作業に特有の危険性を正しく理解し、災害を防ぎながら作業を進められる知識と技能を身につけることにあります。
解体作業では、構造物の倒壊、破砕材の飛来・落下、機械の転倒といった災害が起こり得ます。掘削作業と違い、相手は強度や内部構造が分からない既存の構造物であり、どこから壊せば安全に倒れるのか、どの姿勢で力を加えれば機械が不安定にならないのかという判断が常に求められます。
また、教育を実施していない場合は労働安全衛生法違反となり、両罰規定により事業者に「6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」、労働者にも「50万円以下の罰金」が科される可能性があります。
※2025年6月1日施行の刑法改正により、従来の「懲役」は「拘禁刑」へ一本化されています。
アタッチメントを替えると必要な資格も変わる
解体用の特別教育をめぐって現場で最も誤解が多いのが、車両系建設機械の区分は「車体」ではなく「装着している作業装置(アタッチメント)」で決まるという点です。
同じ油圧ショベルでも、バケットを付けていれば掘削用機械、ブレーカやコンクリート圧砕機を付ければ解体用機械として扱われます。車体は1台でも、アタッチメントを交換した時点で区分が切り替わり、必要な資格も変わるということです。
つまり、整地・運搬・積込み用及び掘削用の特別教育しか修了していない作業員が、ブレーカを装着した機械を運転すれば無資格作業となります。次のような場面で起こりがちです。
- 掘削作業の合間に、同じ機械の先端を圧砕機へ交換して基礎を壊してもらった
- レンタル機の入替えで、これまでバケットだった機械にブレーカが付いてきた
- 分別作業のためにつかみ機を装着し、片付け作業として運転させていた
いずれも掘削作業の延長のように見えますが、法令上はすべて解体用機械の運転業務にあたります。解体用機械を扱う可能性がある事業場では、整地等と解体用の両方の修了者をそろえておくことが実務上の基本といえるでしょう。
小型車両系建設機械運転業務特別教育(解体用)の受講方法と講習内容

ここまで、教育の概要や安全管理における位置づけを解説しました。ここからは、具体的な受講スタイルと、CIC日本建設情報センターの受講カリキュラムについて説明していきます。
小型車両系建設機械運転業務特別教育(解体用)の受講方法
受講する方法は、大きく分けて以下の3つのスタイルがあります。本教育は学科と実技で構成されており、実技は講師と受講者が同一の場所で、実際の機械を用いて実施する必要があります。どの方法を選ぶ場合も、実技をどこで行うかをあわせて確認しておきましょう。
1. 会場での集合講習
研修機関などが開催する講習会場で受講する方法です。学科と実技をまとめて修了できますが、14時間のカリキュラムのため2日間の日程確保が必要で、開催日や会場に合わせた調整が求められます。
2. 出張講習(社内開催)
講師を自社に招き、複数の受講者がまとめて受講する方法です。自社の機械を使って実技を行えますが、一定の受講人数や会場・機械の確保、講師の交通費などが必要になる場合があります。
3. Web(オンライン)講座
パソコンやスマートフォンで学科を受講する方法です。移動が不要で受講者ごとに都合のよい時間に進められるため、現場を止めずに教育を完了できるのが利点です。実技は各事業場で実施し、十分な知識と経験を有する方を実技実施責任者として選任します。
※受講の手順やオンラインならではのメリット・デメリットは、下記の記事で詳しく解説しています。
小型車両系建設機械運転業務特別教育(解体用)の講習内容
CIC日本建設情報センターの「小型車両系建設機械運転業務特別教育(解体用)」は、安全衛生特別教育規程第11条の3に示された教育カリキュラムに基づいて実施されます。
※実際の収録時間はCICの講座ページをご確認ください。
学科では、走行装置の構造から入り、アタッチメントごとの構造・取扱い・作業方法へと進みます。時間が厚く配分されているのが「作業に関する装置」で、ブレーカの打撃姿勢や圧砕機の噛み込ませ方といった、機種ごとに異なる操作の考え方を学びます。実技は走行の操作4時間、作業のための装置の操作3時間で、整地等(実技6時間)より1時間長い構成です。
受講対象者
受講にあたって、学歴、実務経験、保有免許などの資格要件は設けられていません。
主な受講対象者は、機体質量3トン未満の解体用機械を運転する業務に従事する方、または今後従事する予定の方です。解体工事業のほか、建設・土木工事業、産業廃棄物処理業、リース・レンタル業などで必要とされます。
※年少者労働基準規則により、18歳未満の方は動力で駆動される土木建築用機械の運転業務に就くことができません。
※公道走行のみであれば特別教育の対象外ですが、大型特殊免許など道路交通法上の運転免許が別途必要です。
CIC日本建設情報センターの小型車両系建設機械運転業務特別教育(解体用)

CIC日本建設情報センターでは、安全衛生特別教育規程に基づいた「小型車両系建設機械運転業務特別教育(解体用)」のWeb(オンライン)講座をご用意しています。
学科をパソコンやスマートフォンで受講できるため、会場の手配や講師の確保が不要で、工事のスケジュールを調整しながら教育を実施できます。実技は各事業場で実施いただけるよう、実施方法のポイントをまとめたサポート教材をご用意しています。
修了証に有効期限はありませんが、事業者には特別教育の受講者・科目等の記録を作成し、3年間保存する義務がありますので、あわせて管理してください。
※受講の流れや教材、顔認証システムなどWeb講座の詳細は、下記の記事をご覧ください。
まとめ

「小型車両系建設機械運転業務特別教育(解体用)」は、機体質量3トン未満の解体用機械を運転する方を対象とした法定の安全衛生教育です。学科7時間・実技7時間の計14時間で、機械の構造や取扱い、解体作業特有の危険性と安全な作業方法を学びます
特に注意したいのが、整地・運搬・積込み用及び掘削用の特別教育とは別の資格であるという点です。ベースマシンが同じでも、ブレーカや圧砕機を装着した時点で解体用機械となり、解体用の特別教育が必要になります。
CIC日本建設情報センターでは、オンラインで受講できる「小型車両系建設機械運転業務特別教育(解体用)」を実施しています。業務と両立しながら計画的に有資格者を育成したい事業者様は、受講をご検討ください。