
統括安全衛生責任者は、複数の会社が入り混じって作業する現場で元請が選任する現場全体の安全の責任者のことです。名前の似た役職が多く混同されがちですが、選任を怠れば法令違反となるだけでなく、大きな労働災害にもつながりかねません。
また、2026年4月施行の改正労働安全衛生法により、選任の人数カウントに一人親方などの個人事業者が加わります。これまで基準を下回っていた現場が新たに対象となるケースも出てくるため、情報の確認が大切です。
この記事では、統括安全衛生責任者の職務・選任要件について詳しく解説します。必要になる教育部分まで触れていきますので、ぜひ参考にしてみてください。

統括安全衛生責任者とは

統括安全衛生責任者とは、労働安全衛生法第15条にもとづき、特定元方事業者が選任する責任者のことです。特定元方事業者とは、仕事の一部を下請に請け負わせている建設業・造船業の元請を指します。
同じ場所で元請と関係請負人(下請)の労働者が作業するとき、元請は統括安全衛生責任者を選任し、元方安全衛生管理者を指揮させるとともに、法第30条第1項に定める事項を統括管理させなければなりません。狙いは、会社の枠を越えて発生する混在作業による労働災害を防ぐことにあります。
なぜ「統括」が必要なのか(混在作業のリスク)
建設現場では、鉄骨・設備・電気・内装といった複数の下請会社が、同じ建物の中で同時に作業を進めます。各社がそれぞれ自社の安全管理を徹底していても、それだけでは防ぎきれない事故があります。
たとえば、上階で揚重作業を行っている真下で別会社が資材を搬入しており、落下物によって起こり得る労働災害などです。クレーンの旋回範囲に他社の作業員が立ち入るケースも起こりやすいケースといえます。
このような、会社と会社のすき間で発生する労働災害を防止するためには、現場全体を見渡して各社の作業を調整する立場の人間が欠かせません。その役割を担うのが統括安全衛生責任者です。
統括安全衛生責任者の選任要件(人数・業種・期限)
選任義務の有無は、その場所で作業する元請と下請の労働者を合計した人数で判断します。自社の労働者だけで数えるのではない点に注意してください。
以下の表は、仕事の区分と選任が必要な人数の関係についてまとめたものです。
| 仕事の区分 |
選任が必要な人数 |
| ずい道等の建設、一定の橋梁の建設、圧気工法による作業 |
常時30人以上 |
| 上記以外の建設業・造船業の仕事 |
常時50人以上 |
建築工事における「常時50人」は、初期の準備工事や終期の手直し工事などを除いた期間の、平均1日当たりの人数で判断します。工期の一時期だけ人数が跳ね上がる現場もあるため、施工計画の段階で確認しておくと良いでしょう。
統括安全衛生責任者の仕事内容

統括安全衛生責任者の仕事内容は、主に次のとおりです。労働安全衛生法第30条第1項に定められた次の事項です。
- 協議組織(安全衛生協議会)の設置および運営
- 作業間の連絡および調整
- 作業場所の巡視
- 関係請負人が行う労働者の安全衛生教育に対する指導および援助
- 仕事の工程に関する計画、作業場所における機械・設備等の配置に関する計画の作成と、それらを使用する関係請負人への指導
- その他、労働災害を防止するために必要な事項
参考:厚生労働省 職場のあんぜんサイト|統括安全衛生責任者
統括安全衛生責任者は元方安全衛生管理者を指揮する立場です。技術的な実務は元方安全衛生管理者が担い、統括安全衛生責任者が全体を統括するといった役割の分担が安全衛生管理体制の基本となります。
【2026年4月から】統括安全衛生責任者の選任基準の拡大

ストレスチェックは、2025年5月の労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部改正により、2026年(令和8年)4月1日から選任基準が拡大されます。
参考:労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)
主な改正点は、労働者と同じ場所で働く個人事業者等を法の保護対象に位置づけたことです。これに伴い、法第15条の規定は「労働者」から「作業従事者」に改められました。作業従事者には、労働者だけでなく一人親方などの個人事業者等も含まれます。
| 区分 |
人数カウントの対象 |
| 改正前 |
元請の労働者 + 下請の労働者 |
| 改正後 |
元請の労働者 + 下請の労働者 + 一人親方などの個人事業者等 |
一人親方の活用が多い現場ほど影響を受けやすい改正です。自社の現場が新たに対象となるかどうか、早めに洗い出しておきましょう。
統括安全衛生責任者になるには?

ここまで、統括安全衛生責任者の概要を解説してきました。では、統括安全衛生責任者になるためにはどうすればいいのでしょうか?
結論として、統括安全衛生責任者になるために特別な国家資格や免許は必要ありません。労働安全衛生法第15条第2項では「その事業の実施を統括管理するもの」をもって充てると定められており、実務上は現場所長や作業所長が担うのが一般的です。
ただし、資格が不要だから知識が必要ないというわけではありません。統括管理の進め方や関係法令を理解していなければ、事業場・組織の改善につながらないためです。
そこで厚生労働省は「安全衛生教育等推進要綱」において、統括安全衛生責任者を教育の対象者に位置づけています。法定資格ではありませんが、選任前に受講しておくべき教育です。
CIC日本建設情報センターの統括安全衛生責任者教育

CIC日本建設情報センターでは、統括安全衛生責任者教育をWeb(オンライン)講座で提供しております。元請として現場管理を担う方や統括安全衛生責任者に選任予定の方、下請を指導・監督する立場の方が対象です。
講習の内容に関しては、以下のとおりです。
| 科目 |
講習時間 |
| 統括管理と事業者責任 |
2時間30分 |
| 統括管理の具体的進め方 |
2時間45分 |
| 労働衛生管理 |
41分 |
| 工事施工に伴う近隣対策 |
38分 |
| リスクアセスメント |
54分 |
| 合計 |
7時間28分 |
CIC日本建設情報センターのWeb講座は、以下の手順で受講できます。
- CIC日本建設情報センターのWeb講座に申し込む
- 入金確認後、メールでログイン情報が送付される
- 受講(視聴)が開始する
- 受講完了後、修了証を受け取る
CICの講座では顔認証システムを採用しており、受講者が画面の前にいない場合は学習が進まない仕組みです。このため、講座を修了した時点で「受講者本人がしっかりと受講を終えた」ことを証明できます。
現場を止めずにWeb講座の受講で済ませたいとお考えの方は、ぜひご検討ください。
統括安全衛生責任者に関するよくある質問

ここでは、統括安全衛生責任者に関するよくある質問についてまとめました。
Q. 統括安全衛生責任者になるのに資格は必要?
国家資格や免許は不要です。ただし職務の性質上、統括安全衛生責任者教育を受講した方から選任するのが一般的です。
Q. 選任は何人以上の現場から必要?
ずい道等の建設、一定の橋梁の建設、圧気工法による作業は常時30人以上、それ以外の建設業・造船業は常時50人以上です。元請と下請の合計で数え、2026年4月からは一人親方などの個人事業者等も加算されます。
Q. 教育(講習)に有効期限はある?
修了証そのものに有効期限は設けられていません。ただし「安全衛生教育等推進要綱」では、おおむね5年ごとの再教育が推奨されています。法改正が続いている分野でもあるため、定期的な知識の更新をおすすめします。
Q. 総括安全衛生管理者と兼任できますか。
「統括安全衛生管理者」と「総括安全衛生管理者」は別の制度です。総括安全衛生管理者は事業場単位で選任するもので、建設業では常時100人以上の労働者を使用する事業場が対象となり、見るのは自社の労働者です。一方の統括安全衛生責任者は現場単位で元請が選任し、下請を含む混在作業を対象とします。
まとめ

この記事では、統括安全衛生責任者の概要について解説しました。統括安全衛生責任者は、労働安全衛生法第15条にもとづき特定元方事業者が選任し、混在作業による労働災害を防ぐために現場全体を統括管理する役割です。選任義務は、ずい道等・一定の橋梁・圧気工法の仕事で常時30人以上、その他の建設業・造船業で常時50人以上の現場に生じます。
2026年4月からは人数カウントに一人親方などの個人事業者等が加わるため、これまで対象外だった現場でも体制の見直しが必要になります。国家資格は不要ですが、統括安全衛生責任者教育で職務に必要な知識を身につけておくことが、現場の安全を守るために必要です。
CIC日本建設情報センターでは、「統括安全衛生責任者教育」講座をはじめ、安全衛生に関するWeb講座を数多く提供しております。受講者がモチベーションを維持しながら修了できる内容となっておりますので、ぜひご検討ください。