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【法務・実務担当者向け】改正下請法(取適法)の要点とは?企業が取るべき5つの対応を徹底解説

公開日:2026年6月18日 更新日:2026年6月22日

【法務・実務担当者向け】改正下請法(取適法)の要点とは?企業が取るべき5つの対応を徹底解説

【法務・実務担当者向け】改正下請法(取適法)の要点とは?企業が取るべき5つの対応を徹底解説

2026年1月1日、「下請法」が大きく改正され、「中小受託取引適正化法(通称:取適法)」として新たに施行されました。改正に伴う名称変更だけでなく、適用対象の拡大・新たな禁止行為の追加・執行体制の強化など、発注側の実務に直結する変更が盛り込まれています。

「うちは関係ないだろう」と思っていた企業が新たに対象になるケースも増えているため、建設業界で外注・委託取引を行っている企業においても早めの確認が大切です。

この記事では、取適法の概要や改正の背景・主な変更点などを解説します。企業が取るべき実務対応まで触れていきますので、ぜひ参考にしてみてください。


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目次

取適法(旧:下請法)とは?改正の背景と目的

取適法(旧:下請法)とは?改正の背景と目的

取適法の正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。「中小受託取引適正化法」の略称として「取適法」と呼ばれています。

まずは、取適法の元となった「下請法」の概要や改正の背景をみていきましょう。

そもそも下請法とは

取適法に改正される前の「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」は、昭和31年(1956年)に独占禁止法を補完する法律として制定されました。立場が強い発注側(親事業者)から、立場が弱い受注側(下請事業者)を守ることを目的に、独占禁止法よりも簡易な手続きで、迅速かつ効率的な保護を実現するための法律です。

取適法では「下請」という言葉は廃止されており、「下請」の言葉が持つ上下関係のイメージを払拭して、委託側と受託側が対等なパートナーであることを明確にしています。

取適法へと改正された背景

改正の背景には、近年の急激なコスト上昇があります。労務費・原材料費・エネルギーコストが上昇する中、サプライチェーンの末端にいる中小企業がコスト増加分を価格に転嫁できず、利益を圧迫されるケースが度々みられていました。

これを背景に、立場の弱い企業の保護に加えて、発注条件を明確化や協議・記録に基づく価格形成のプロセス整理によって双方が対等なパートナーシップを築くことを目的に、下請法を取適法へと改正、2026年1月1日から施行されています。

「取適法」への改正に伴う名称・用語の変更

「取適法」への改正に伴う名称・用語の変更

取適法では、「下請」の言葉が持つ上下関係のイメージを払拭するため、法律名をはじめ関連用語が一新されています。以下の表は、旧称・新称をまとめたものです。

旧称(下請法) 新称(取適法)
下請代金支払遅延等防止法 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律
親事業者 委託事業者
下請事業者 中小受託事業者
下請代金 製造委託等代金

取適法の改正に伴う4つの主なポイント

取適法の改正に伴う4つの主なポイント

取適法の改正に伴う主なポイントは、以下の4つです。

  • 適用対象の拡大
  • 新たな禁止行為の追加
  • 執行体制の強化
  • 書面交付の電子化対応

それぞれの内容について詳しく解説します。

1. 適用対象の拡大

取適法では、適用の対象が拡大されています。下請法と比較して、新たに設けられた対象は以下の2つです。

  • 従業員数基準の新設(規模要件の追加)
  • 対象取引に「特定運送委託」を追加

従業員数基準の新設(規模要件の追加)

これまでの下請法では、資本金の区分のみで適用対象を判定していました。取適法では、これに加えて従業員数基準が新設されています。

区分 詳細
製造委託など 常時使用する従業員数が300人
役務提供委託など 常時使用する従業員数が100人

委託事業者・中小受託事業者が資本金基準または従業員基準のいずれかを満たせば、取適法の適用対象となります。「これまで対象外だった」という企業も、新たに対象になるケースがあるため、改めて確認しておくことが大切です。

※注意:フリーランス新法の基準は『従業員がいるか・いないか(1人以上か)』ですが、取適法の基準は『従業員300人超・100人超』です。両者を混同しないよう注意が必要です。

対象取引に「特定運送委託」を追加

下請け法の対象取引は、製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託の4類型でした。取適法では、発荷主が運送事業者に物品の運送を委託する取引である「特定運送委託」が新たに追加されています。

建設現場への資材輸送など、運送業者への委託を行っている企業も注意が必要です。

2. 新たな禁止行為の追加

取適法では、新たな禁止行為の追加もされています。下請法と比較して新たに追加されたのは以下の2つです。

  • 「協議に応じない一方的な代金決定」の禁止
  • 手形払いの原則禁止

「協議に応じない一方的な代金決定」の禁止

中小受託事業者から価格協議の申し入れがあったにもかかわらず、協議に応じない・必要な説明をしないことによる一方的な代金決定が禁止されました。これは今回の改正の中でも、かなり注目すべき点です。

コスト上昇局面での「価格据え置き」に対応した規定で、既存の「買いたたき」とは別の独立した禁止行為として新設されています。値上げ要請に必ず応じる義務はありませんが、協議のテーブルについて判断の理由を説明できる状態にしておくことが求められます。

手形払いの原則禁止

取適法では、手形払い自体が原則禁止(支払遅延に該当するものとして規定)となりました。電子記録債権なども、「支払期日までに代金相当額の手数料(割引料等)を負担せずに、満額の現金を受け取れないもの」は禁止されています。

また、振込手数料を中小受託事業者に負担させて代金から差し引く行為も同様に、禁止されたため注意しましょう。

禁止行為に該当する11項目

以下の表は、取適法における委託事業者の禁止行為11項目をまとめたものです。

禁止行為 詳細
受領拒否 正当な理由なく納品物の受領を拒む行為
製造委託等代金の支払遅延 受領日から60日以内の支払期日までに代金を支払わない行為(手形払い禁止を含む)
製造委託等代金の減額 名目・方法・金額にかかわらず、発注後に代金を減額するあらゆる行為
返品 正当な理由なく、受領後に発注品を返品する行為
買いたたき 市場価格より著しく低い代金を不当に設定する行為
購入・利用強制 委託事業者が指定する製品・サービスの購入・利用を強制する行為
報復措置 通報・申告を理由とした取引停止や不利益な取扱い
有償支給原材料等の対価の早期決済 製品代金の支払日より早く原材料等の代金を支払わせる行為
不当な経済上の利益の提供要請 協賛金や従業員派遣など、不当な利益提供を要求する行為
不当な給付内容の変更・やり直し 費用を負担せずに追加作業・やり直しを要求する行為
協議に応じない一方的な代金決定 価格協議の求めを無視・先延ばしにして単価を一方的に決定する行為

3. 執行体制の強化(面的執行)

これまでは公正取引委員会・中小企業庁が主な執行機関でしたが、取適法では事業所管省庁の主務大臣にも指導・助言権限が付与されました。省庁間の相互情報提供に係る規定も新設され、複数の省庁が連携して違反行為に対応する「面的執行」が強化されています。

4. 書面交付の電子化対応

取適法への改正により、中小受託事業者の承諾がなくても電子メール等の電磁的方法で交付できるようになりました。書面か電子系での発行かは委託事業者が選択できます。

電子化対応によって実務上の書面管理の電子化も進みやすくなり、クラウドサービスを活用した一元管理との相性が向上しています。

取適法への改正後における委託事業者に求められる4つの義務

取適法への改正後における委託事業者に求められる4つの義務

取適法では、委託事業者に対して以下の4つの義務が課されています。

義務 内容
発注内容等の明示 給付の内容・代金額・支払期日・支払方法などを書面または電子メール等で明示する
取引記録の作成・保存 取引完了後、発注内容・受領日・支払状況・変更履歴等を書類または電磁的記録として2年間保存する
支払期日の設定 物品等の受領日から60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を設定する
遅延利息の支払い 支払遅延が生じた場合、受領日から60日経過した日から実際に支払う日まで年率14.6%の遅延利息を支払う。正当な理由なき減額についても、減額分に対して遅延利息が発生する

※今回の改正で、『減額』に対する遅延利息の支払いが新たに義務化されました

形式的な対応ではなく、発注から検収・支払までの業務フローそのものを整え、透明性を確保することが求められています。発注の確定タイミングや変更管理・検収の運用など、組織全体でルールを整備することが大切です。

企業側が改正に伴って取るべき5つの対応

企業側が改正に伴って取るべき5つの対応

取適法への改正に伴って企業側が取るべき対応は、主に以下の5つです。

  • 自社が「委託事業者」に該当するか確認
  • 価格協議のプロセスを整備する
  • 支払手段を見直す
  • 運送委託を行っている企業は特に注意
  • 相談窓口を活用する

それぞれの内容についてみていきましょう。

1. 自社が「委託事業者」に該当するか確認

まずは、資本金・従業員数の両基準で適用対象かどうかを改めて確認しましょう。従業員数基準の新設により、従来は対象外だった企業が新たに対象になるケースがあります。

特に、支店・工場・部門ごとの小口発注や、子会社・関連会社との内部取引も含めて棚卸ししておくことが大切です、

2. 価格協議のプロセスを整備する

中小受託事業者からの価格交渉申し入れには、必ず協議に応じる仕組みを社内で構築しなければなりません。値上げに応じる義務はないものの、「協議に応じた」という記録・保存が重要になるためです。

価格協議の参加者(購買・現場の同席など)や決裁ルート、協議記録の残し方をあらかじめ決めておくと良いでしょう。

3. 支払手段を見直す

現在、手形払いを行っている場合は、現金払いへの切り替えを検討してください。電子記録債権等を使用している場合も、支払期日までの換金可否の確認が必要です。

また、振込手数料を受託側に負担させている場合も禁止行為にあたるため、経理システムの設定も含めて見直ししてください。

4. 運送委託を行っている企業は特に注意

発荷主として運送事業者に委託している場合、新たに取適法の規制対象となります。荷役・荷待ちの無償要求なども違反にあたる可能性があるため、物流担当部署との連携を含めた対応が必要です。

5. 相談窓口を活用する

取引に迷った場合は、公正取引委員会・中小企業庁の相談窓口を活用してください。委託側・受託側どちらも相談可能です。運用を誤った解釈のまま固定化することを防ぐためにも、早めの確認をおすすめします。

公正取引委員会 相談窓口 TEL:0120-060-110
受付時間:平日10:00〜17:00

取適法に関するよくある質問

取適法に関するよくある質問

ここでは、取適法に関するよくある質問についてまとめました。

取適法に違反したら罰則は適用される?

買いたたきなどの禁止行為をした場合は、行政からの『勧告・社名公表』の対象になります。一方で、書面(四条書面)の交付義務違反や、虚偽の報告・立ち入り検査の拒否などをした場合には、最高50万円の罰金(刑事罰)が科される可能性があります。

ただし、金銭的ペナルティ以上に、企業名の公表による信用低下・取引先離れが実務上の大きなリスクといえるでしょう。

取適法の対象かどうかはどう確認する?

対象かどうかは、「取引の種類」と「会社の規模(資本金または従業員数)」の2点で判断するのが良いでしょう。今回の改正で従業員数基準が新設され、これまで対象外だった企業が新たに対象になるケースも増えているためです。

公正取引委員会の特設ページを参照しながら進めるのが確実で良いでしょう。

下請法と取適法で最も変わった部分はどこ?

最も大きな変化は、「価格協議への応答が義務化」されたことです。受託側から値上げの申し入れがあった際に、協議のテーブルにつかずに価格を据え置く行為が禁止されました。

「必ず値上げに応じなければならない」わけではありませんが、協議を行い・説明できる状態にしておくことが求められます。このほか、手形払いの原則禁止・従業員数基準の追加・特定運送委託の対象追加なども主な変更です。

まとめ

まとめ

この記事では、取適法への改正について詳しく解説しました。改めて、改正のポイントを整理すると、以下のとおりです。

  • 適用対象の拡大:従業員数基準の新設・特定運送委託の追加
  • 新たな禁止行為:「協議に応じない一方的な代金決定」「手形払い」の禁止
  • 執行体制の強化:事業所管省庁も加わる「面的執行」へ
  • 電子化対応:承諾なしでの電磁的方法による発注書面交付が可能に

取適法への対応は、形式を整えるだけでなく、自社の取引プロセスを透明化・説明可能な状態にアップデートする取り組みでもあります。この機会に社内ルールや業務フローを見直すことで、取引トラブルの削減や調達品質の安定にもつながるでしょう。


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