しかし、それ以前の建物にはアスベストを使用している可能性が高く、建築物を取り壊す場合にはアスベストの有無を確認する必要があります。
以前から作業をする際に資格は必要でしたが、2023年10月以降は建築物の事前調査でも資格が必要になり、さらに2026年1月からは工作物の事前調査にも資格が求められるようになりました。今回はアスベストに関する資格の種類や講習内容、資格取得の難易度に加えて、受講が必要な理由と、資格を取らずに作業した場合のリスクについても解説します。
更新日:2026年9月10日
石綿(アスベスト)関連建築物石綿含有建材調査者講習工作物石綿事前調査者

しかし、それ以前の建物にはアスベストを使用している可能性が高く、建築物を取り壊す場合にはアスベストの有無を確認する必要があります。
以前から作業をする際に資格は必要でしたが、2023年10月以降は建築物の事前調査でも資格が必要になり、さらに2026年1月からは工作物の事前調査にも資格が求められるようになりました。今回はアスベストに関する資格の種類や講習内容、資格取得の難易度に加えて、受講が必要な理由と、資格を取らずに作業した場合のリスクについても解説します。

かつてアスベスト(石綿)は奇跡の鉱物と言われ、建築材料をはじめ自動車や電化製品、家庭用品など幅広い分野で活躍していました。ところが空中に飛散したアスベストを吸引すると肺癌や中皮腫の要因になることが判明し、使用が禁止されました。
建物のアスベスト除去作業は、アスベストの危険性もあることから原則として資格が必要です。

かつて多くの建築物にアスベストを使用していたため、解体時にアスベストが拡散して大気汚染の原因になることが指摘されており、2021年から順次法律が改正されています。
従来は建材の種類としてレベル1「吹き付け石綿」レベル2「石綿が含まれる保温材、断熱材、耐火被覆材」までが規制対象でしたが、新たにレベル3「石綿が含まれる形成板等、仕上げ塗材」も規制対象となりました。
次にアスベストを使用した建築の解体や補修、改造を行う場合は種類ごとに作業基準が定められており、元請け業者は遵守しなければなりませんでした。従来は下請け業者対象外でしたが、下請け業者も順守義務の対象です。
さらに大気汚染防止法によって定められた、特定工事を請け負う元請け業者は、特定粉塵排出等作業の完了後に、作業結果を発注者に報告して「写し」の保存が義務付けられました。
床面積が80平方メートル以上の建築物の解体工事、請負金額が100万円以上(税込)の建築物や工作物の改修・解体工事については、原則として電子システムの報告が義務付けられました。
建築物のアスベストの使用について事前調査を行う際に、資格を持っている者による調査が義務付けられるようになりました。

現在、アスベスト作業に必須な資格は5つあります。それぞれの資格の詳細と、難易度を交えて説明します。
石綿作業主任者とは2006年に導入された国家資格で、アスベストの除去作業を現場で指揮監督したり、作業の計画立案をしたりするために必要な資格で、アスベストの取り扱いを行う事業者で最低1人選任する必要があります。
石綿作業主任者の資格を得るためには、10時間程度の石綿作業主任者技能講習を終了し、試験を受けて合格する必要があります。とくに実務経験は必要なく誰でも受けられますが、業務に就けるのは18歳以上です。
石綿作業主任者技能講習は通常2日間で開催されます。
1日目は健康障害及び予防措置に関する知識(2時間)作業環境の改善方法に関する知識(4時間)を学びます。
2日目は保護具に関する知識(2時間)関係法令(2時間)を学んだあとガイダンスと修了試験(1時間)を行い、修了者の発表で終了です。
1時間の試験は各科目の得点が40%以上、合計が60%以上で合格となります。合格率は9割以上となっており、難易度は高くありません。ひっかけ問題や難しい問題もほとんどないと言われており、技能講習を真剣に受講し、内容を理解していれば合格することが可能な資格です。
また不合格の場合は補習講義を受講した上で、追試験が受けられますが、追試験も不合格の場合は新規で申し込みを行わなければなりません。
石綿作業従事者の資格はアスベスト入り建材を運搬するなど、実際にアスベストに関わる仕事をする際に資格の取得が義務付けられています。違反をすると事業者が罰則の対象になります。
受験資格は18歳以上で実務経験などは不要です。特別教育講習を受講すれば資格を取ることができます。
特別教育は合計で4.5時間の講習のため、1日で修了できます。学科の講習のみで実技や試験もないためオンラインでの受講も可能で、カリキュラムは次の通りです。
石綿作業主任者の技能講習を受けた方は、石綿取扱作業従事者講習が免除されます。そのため石綿作業主任者の資格を取れば、どちらの資格も所持していることなので、現場の作業だけでなく将来的に指揮監督の業務を行う可能性のある方は、石綿作業主任者の資格を目指しましょう。
2023年10月から義務付けられた資格制度です。アスベストが含まれている可能性のある建築物を、改修・解体工事する際は事前調査を行う必要があります。事前調査を行う際に、石綿含有建材調査者の資格を持つ者だけが行えるようになりました。
石綿取扱主任者や石綿取扱作業従事者は資格条件が多くあり、以下の条件に該当する必要があります。
すべての建築物に対して調査が行えます。資格を取得するためには、建築物石綿含有建材調査者講習(11時間)の講義を受講したあと、終了考査として筆記試験を受けて合格すれば資格が取得できます。
試験の難易度は受講する機関や実施年度に差はあるものの6割〜9割の合格率なので、真剣に講習を受けて事前準備を怠らなければそれほど難しくはありません。
一般建築物石綿含有友建材調査者講習のカリキュラムは次の通りです。
筆記試験はマークシート形式の試験で30問出題され、そのうちの6割(18問以上の正解)で合格です。
すべての建築物に対して石綿含有建材の調査ができます。2026年9月現在では、特定と一般の調査者で行える業務は同じです。区分がわかれているので将来的に変更が起こる可能性はあります。
特定の場合は終了考査が一般よりも多く筆記試験(1時間)のほかに口述試験(20分)調査票試験(1時間)を受けなければなりません。一般より試験が多くなるため、難易度は少し高いといえるでしょう。
口述試験は面接形式による調査票の説明能力や調査者としての適性、アスベストに関する総合的理解で評価されます。調査票試験は架空の建物について複数の写真を参考に、石綿含有建材調査者として必要とされる知識を判断材料として能力が評価されます。
一戸建ての住宅と共同住宅の住戸内部と、範囲が限定されています。共同住宅の場合、ベランダや廊下などの事前調査は認められていません。講習時間は8時間の講義で、合格率は一般とあまり変わりません。
カリキュラムは次の内容です。
2023年10月からアスベストの事前調査を行なう際も資格が必要になりました。しかし2023年9月30日より前に日本アスベスト調査診断協会に登録されている方は、アスベストの事前調査の資格を有している者とみなされ、新たに資格を取る必要はありません。
2026年1月1日に石綿障害予防規則が改正され、厚生労働大臣が定める石綿等が使用されているおそれの高い一定の工作物について、「工作物石綿事前調査者」による事前調査が義務化されました。反応槽やボイラー、配管設備、発電設備などが対象に含まれます。
工作物は建築物と構造が大きく異なり、設備に応じた専門的な知識が求められることが、資格を別途設けた背景です。同日以降に着工する対象工事では、建築物石綿含有建材調査者の資格だけでは事前調査を行えません。資格を取得するには、都道府県労働局に登録された講習機関で「工作物石綿事前調査者講習」を修了する必要があります。
詳しくは講座ページをご確認ください。

「アスベストを扱う作業になぜここまで資格が求められるのか」と感じる方もいるかもしれません。しかし、資格や講習の受講には、法令上の理由だけでなく、作業者の健康と事業の継続を守るうえでの明確な必要性があります。こちらでは、受講が必要とされる4つの理由を解説します。
もっとも大きな理由は、アスベストに関わる主要な作業が、法令で有資格者の配置・受講を義務付けられているからです。具体的には次のとおり定められています。
いずれも「推奨」ではなく法令上の義務であり、無資格者が行った調査や作業は、それ自体が法令違反となります。とくに事前調査は、石綿の有無にかかわらず実施と報告が必要な点に注意しましょう。
アスベストによる健康被害の最大の特徴は、ばく露から発症までに30〜40年前後の潜伏期間があることです。作業した本人も、その場では異常を感じません。危険が目に見えないからこそ、正しい知識にもとづく防護が不可欠になります。
厚生労働省の人口動態統計によると、2024年(令和6年)の中皮腫による死亡者数は1,562人で、依然として年間1,500人を超える水準が続いています。また、令和6年度に石綿による疾病(肺がん、中皮腫、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚)で労災保険給付が請求された件数は1,529件、うち支給が決定した件数は1,139件でした。
アスベストの使用は2006年9月に原則禁止されましたが、被害の多くは、それ以前に建てられた建物の解体・改修が本格化している「これから」に関わるものです。講習で学ぶ石綿の有害性、ばく露を抑制する措置、保護具の正しい使用方法は、数十年後の自分と仲間の健康を守るための知識といえます。
アスベストの規制は年々厳しくなっています。飛散性の高いレベル1・2だけでなくレベル3(成形板、仕上げ塗材)も規制対象となり、遵守義務は元請だけでなく下請にも広がりました。さらに調査対象は建築物から工作物へと拡大しています。
つまり、「うちはレベル3だけだから」「建物ではなく設備だから」といった理由で資格が不要になる場面は、ほとんど残っていません。有資格者を確保できていない事業者は、受けられる工事の範囲そのものが狭まっていくことになります。
一定規模以上の解体・改修工事では、着工前に石綿事前調査結果報告システムを通じて労働基準監督署と地方公共団体へ報告する必要があります。この報告には調査を行った有資格者の情報を記載するため、資格者がいなければ報告そのものが成立しません。
加えて、元請から安全書類の提出時に修了証の写しを求められるケースも一般的です。資格の有無が、見積り段階での失注や現場入場の可否に直結するため、受講は作業者本人だけでなく、事業者にとっても事業機会を確保するための投資といえるでしょう。

必要な資格を持たないままアスベスト関連の調査や作業を行った場合、罰則をはじめとするさまざまなリスクが生じます。こちらでは、無資格のまま作業を進めた場合に起こり得ることを4つの観点から解説します。
アスベストに関する違反には、労働安全衛生法系と大気汚染防止法系の2系統の罰則があります。おもな内容は次のとおりです。
| 根拠法令 | 違反の内容 | 罰則 |
|---|---|---|
| 労働安全衛生法・石綿障害予防規則 | 事前調査の不実施、作業主任者の未選任、特別教育の未実施 など | 6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 大気汚染防止法 | 事前調査結果の報告義務違反、虚偽報告 | 30万円以下の罰金 |
| 大気汚染防止法 | 作業基準違反 | 3か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
| 大気汚染防止法 | 改善命令・作業基準適合命令への違反 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
ここで押さえておきたいのは、罰則の対象となるのは原則として「事業者」であるという点です。資格を持たずに作業した本人だけでなく、資格者を配置しなかった会社と代表者が責任を問われます。実際に、事前調査を行わないまま解体作業に作業員を従事させたとして、法人と代表取締役がともに書類送検された事例も報じられています。
なお、2025年6月1日施行の刑法改正により、従来の「懲役」は「拘禁刑」に一本化されています。古い資料では「懲役」と記載されている場合がありますが、現在の表記は「拘禁刑」です。
罰則以前の実務的な問題として、無資格者が行った事前調査は法令上有効な調査として認められません。着工後に発覚すれば、工事を止めたうえで有資格者による調査からやり直すことになります。
調査のやり直しには費用と日数がかかり、その間の工事はストップします。工期の遅延によって発注者への違約金や現場経費の増加が発生すれば、講習の受講費用とは比較にならない損失につながります。着工前に資格者を確保しておくことが、結果的にもっとも安く済む選択です。
労働基準監督署の臨検監督や自治体の立入検査で違反が判明した場合、まず是正勧告や改善命令が出されます。従わない場合や悪質な場合には、書類送検に至ることもあります。
労働局が公表する送検事例には企業名が掲載されるため、社会的信用の低下という形でも損失が生じます。公共工事では指名停止措置の対象となる可能性もあり、影響は罰金額にとどまりません。厚生労働省は事前調査を行っていない事業者を特定して指導する方針も示しており、「気づかれない」ことを前提にした運用はもはや成り立たないと考えるべきでしょう。
もっとも重いのが、健康被害が生じた場合の責任です。アスベストによる疾病は潜伏期間が長いため、当時の作業記録や防護措置の有無が、数十年後になって問われることになります。
必要な資格者を配置せず、特別教育も実施していなかったという事実は、安全配慮義務違反を裏づける事情として扱われます。石綿をめぐる健康被害では、国や建材メーカーの責任を認めた建設アスベスト訴訟をはじめ、長期にわたる訴訟が現実に続いてきました。目の前の一件の工事のために、会社が数十年先まで抱えるリスクを作ってしまうことになりかねません。
石綿作業主任者技能講習は2日間、石綿取扱作業従事者特別教育は4.5時間で修了できます。対象となる作業に関わる予定があるなら、早めに受講を済ませておきましょう。

アスベスト作業には、このほかにも役立つ資格がいくつかあります。
一般社団法人
JATI協会が定めた資格で、2023年9月30日までにアスベスト診断士を取得し、日本アスベスト調査診断協会に登録していれば事前調査等が行えました。しかし2023年10月以降に取得した場合は、厚生労働省が認定した一定の要件を満たす必要があるので注意しましょう。
講座の内容は「基礎編」「調査・診断編」「石綿処理編」の3日間行われ、講義終了後に試験があります。試験はいずれの講義も60%以上の得点を取る必要があり、さらに3講座の総得点は70%以上必要です。
作業環境測定士は国家資格で一種と二種があります。二種の資格があればアスベストの粉塵発生の可能性がある作業場で作業環境測定が可能で、一種の資格があれば特定化学物質に関する分析ができます。合格率は一種が6割で二種が4割のため、他の資格と比べると少し難易度が高いといえるでしょう。

アスベスト関係の作業は基本的に資格が必要ですが、資格がなくても業務に携われるものも一部あります。
現場ではなく書面のみで建築物にアスベストが使用されているか確認できる場合、資格は必要ありません。2006年9月1日以降はアスベストの使用が全面禁止されているため、この日以降に設置された建築物であればアスベストが含まれていないと判断できるため、資格保持者による調査は不要です。
事前調査を資格保持者が行い、その結果を踏まえて報告する場合は資格不要です。資格保持者に検体の分析や事前調査の依頼を行い、その結果を報告する場合は資格がなくてもできます。

アスベストを取り扱う場合は年々制度が厳しくなっており、2023年10月以降は建築物の事前調査に有資格者が必要となり、さらに2026年1月からは工作物石綿事前調査者による事前調査も必要になりました。
アスベストを取り扱う場合資格取得が前提となるため、どの資格が必要なのか、どのような講義があるのかを理解し、必要に応じて資格を取得するようにしましょう。
無資格のまま調査や作業を行えば、事業者が罰則の対象となるだけでなく、調査のやり直しによる工期遅延や、数十年後の健康被害をめぐる責任にもつながります。数時間から2日間の受講で回避できるリスクを、そのままにしておく理由はありません。
なお、アスベストに関する資格はおおむね難易度がそこまで高くはなく、講義をしっかりと受けて理解することができれば合格することは可能ですので安心してください。

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