解体やリフォームの現場で、アスベスト含有スレートの扱いに頭を悩ませる方は少なくないでしょう。かつて日本の高度経済成長を支え、多くの建物の屋根や外壁を覆ったスレート材は、今や改修時期を迎え、アスベスト関連業務に従事する方々には、正しい知識と厳格な対応が求められています。
本稿では、アスベストスレートの基礎知識から、法的に遵守すべき見分け方と注意すべき劣化状態への警告、そして適正な撤去・処分方法までを解説していきます。
公開日:2025年12月1日 更新日:2025年12月1日

解体やリフォームの現場で、アスベスト含有スレートの扱いに頭を悩ませる方は少なくないでしょう。かつて日本の高度経済成長を支え、多くの建物の屋根や外壁を覆ったスレート材は、今や改修時期を迎え、アスベスト関連業務に従事する方々には、正しい知識と厳格な対応が求められています。
本稿では、アスベストスレートの基礎知識から、法的に遵守すべき見分け方と注意すべき劣化状態への警告、そして適正な撤去・処分方法までを解説していきます。

まず、現場で扱う建材の基本情報を再確認しましょう。
耐熱性や耐久性に優れた天然の鉱物繊維です。しかし、その極めて微細な繊維を吸い込むと、肺がんや悪性中皮腫など、数十年後に深刻な健康被害を引き起こすことが確認されています。
セメントを主成分とする板状の建材で、補強材としてアスベストが混入されていました。用途は多岐にわたります。
アスベスト含有建材は、飛散のしやすさで3つのレベルに分類されます。スレートは、アスベストがセメントで固められているため、通常の状態では飛散しにくい「レベル3」に該当します。しかし、切断や破砕によって容易に飛散するため、取り扱いには厳重な注意が必要です。また、数十年たった今、その劣化はもはや看過できないリスクとなっています。
アスベストを含有した第一世代のスレートは耐久性が高く、その耐用年数は20年~30年です。そして現在、改修時期を迎えている多くの建物は、この耐用年数を超過し、劣化によってアスベストの飛散リスクが高まっている状態と言えます。

施主への説明責任を果たすためにも、正確な見分け方等の知識は不可欠です。
最初に行うべきは、設計図書等を確認し、建物の建築年を確認することです。2006年9月1日以降に着工された建物(増改築部分を含む)は、法令に基づき石綿(アスベスト)が使用されていないことが明らかなため、事前調査の対象外とすることができます。一方、それより前に着工されていれば、アスベストを含有している可能性があると判断すべきです。
次に、使用された建材の商品名や製造メーカーを特定します。特定できた製品情報は、国土交通省と経済産業省が共同で公開している「石綿(アスベスト)含有建材データベース」で照合することが有効です。
(注意:上記データベースは全ての建材を網羅しているわけではないため、検索結果にないからといって「アスベスト不使用」の証明にはならない点に留意すること。)
参考として、以下に代表的なアスベスト含有スレートの商品名を列挙します。
本来比較的安全であるとされているアスベストスレートも、経年劣化によって内部のアスベスト繊維が露出・飛散しやすくなっていることがあります。
以下の状態が確認されたら、専門家に相談することを検討してください。(なお、以下の状況を確認しても、絶対に触らないでください。また、確認のために建材を破損等させる行為も絶対にやめてください。)
目視での判断はあくまで初期段階です。法律を遵守するためには、以下の手続きが必須となります。

アスベストスレートへの対処法は、根本的な解決策である「葺き替え(除去)」と、一時的な措置である「塗装(封じ込め)」「カバー工法(囲い込み)」に大別されます。
解体・撤去
葺き替えが予算的に困難な場合、塗装やカバー工法が選択肢となります。
注意:一時的措置も法規制の対象
塗装やカバー工法は、石綿障害予防規則や大気汚染防止法において、それぞれ「封じ込め」「囲い込み」として定義される「解体等作業」に該当します。したがって、これらの工事を行う場合でも、有資格者による事前調査と行政への報告義務は発生します。また、工法はアスベスト飛散防止対策を施したものになります。
塗装(封じ込め)
カバー工法(囲い込み)

アスベスト対策のために、どの工法も費用は通常より必要となります。
各工法の費用相場は、本記事執筆時点の目安です。
| 工法 | 概要 | 総額費用の目安(100㎡) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 塗装(封じ込め) | 既存スレート表面を塗膜で固める | 30万円~80万円 | 最も安価だが、あくまで延命措置。定期的な再塗装が必要。 |
| カバー工法(囲い込み) | 既存スレートの上に新しい建材を被せる | 80万円~180万円 | 初期費用は抑えられるが、アスベストは残存。将来の解体費用増のリスク。 |
| 葺き替え(除去) | 既存スレートを完全に撤去し、新設する | 140万円~260万円 | 最も高額だが、アスベストを根本的に解決可能。資産価値向上に繋がる。 |
「アスベスト調査・除去」名目の補助金は、レベル1(吹付け材)が対象のものがほとんどで、レベル3のスレートに適用できる自治体は稀です。しかし、リフォームであれば、発想を転換することで、負担を軽減できる可能性があります。
これらの補助金は、工事契約前の申請が必須です。計画段階で自治体の制度を調査することが重要です。

アスベスト含有スレートの撤去等工事も、他のアスベスト含有建材と同様に、安全確保と法規制の遵守が求められる専門性の高いプロジェクトです。
実施の際は、一時的な措置から恒久的な除去まで、各工法の利点・欠点を長期的な視点を考慮に入れ、最善の意思決定をすることが求められます。法改正への対応や現場での判断に不安がある場合は、専門家への相談が不可欠です。
私たち「石綿の窓口」では、調査から届出、工法選定まで、法令遵守を前提としたワンストップサポートを提供しています。
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お問い合わせ電話:03-6432-4952