実務経験はいらない?第三種電気主任技術者(電験三種)の認定取得方法や実務経験の積み方について
電験三種を取得する方法としては、試験に合格する方法と資格認定による取得の2つあります。
それぞれでメリット・デメリットがあるため、自分にあった方法を選びましょう。
本記事では、第三種電気主任技術者の認定取得方法や実務経験の積み方について解説します。試験合格による取得のポイントについてもあわせてご覧ください。
第三種電気主任技術者(電験三種)における「実務経験」とは?
電験三種の実務経験は「電圧500V以上の電気工作物の維持、工事または運用」に関係する作業が該当します。
電圧500V以上の業務として該当するものは、具体的に次の設備に関する保安監督です。
- 発電設備
- 変電設備
- 送配電設備
- 給電・遠隔制御設備
- 需要設備
基本的に上記の設備に関する保安監督であれば実務経験に該当します。
具体的に認められる業務と認められない業務については、後述しますのでぜひご覧ください。
第三種電気主任技術者(電験三種)になるには?
第三種電気主任技術者になるには、次の2つ方法があります。
- 電験三種に合格する
- 資格認定により電験三種を取得する
どちらの方法もメリットとデメリットがあるため、情報を確認しておきましょう。
ここでは、2つの方法について詳しく解説します。
電験三種に合格する
まず1つ目の方法が年に2回(令和4年度より2回に変更)実施される電験三種の試験に合格するといった方法です。
電験三種の試験は、理論・電力・機械・法規の4科目あり、4科目全ての合格基準を満たすことで合格できます。
ここからは、電験三種を試験合格で取得する場合のメリットとデメリットを解説します。
試験合格による取得のメリット
電験三種を試験合格することで取得する際のメリットは、以下の3点あります。
- 認定取得と違い実務経験を積む必要がない
- 学歴や年齢に関係なく誰でも受験できる
- 科目合格制度を用いて複数回受験での合格を狙える
電験三種の試験に臨む場合、受験資格等はありません。学歴や年齢に関係なく、誰でも受験可能です。
そのため、0から電験三種を始めるといった方にとっては最短1年での資格取得を狙える方法といえます。
試験合格による取得のデメリット
一方で、電験三種を試験合格することで取得する際のデメリットは、以下の3点あります。
- 試験の難易度が高い
- 試験の出題範囲が広い
- 全科目合格できなければ受験を繰り返すことになる
電験三種は、各科目で広い範囲の内容が出題されるため、試験難易度がほかの電気資格と比較して数段階アップします。
そのため、計画的な勉強を継続できない方であれば、何度も受験を繰り返すことになるでしょう。
実務経験が必要ない反面、難しい試験に合格する必要があるといった点だけ把握してください。
資格認定により電験三種を取得する
2つ目の方法が資格認定により電験三種を取得する方法です。認定による具体的な流れとしては、次の通りです。
- 認定校を卒業する
- 実務経験を積む
- 認定取得の申請を行う
資格認定により電験三種を取得する場合は、試験に受ける必要がない反面、実務経験が必要です。
ここからは、資格認定により電験三種を取得するメリットとデメリットを解説します。
認定取得のメリット
電験三種を認定取得するメリットは、以下の3点あります。
- 受験する必要がないため、勉強が苦手な方でも取得できる
- 認定校を既に卒業している方は実務経験と審査のみなので手軽に免状を取得できる
- 実務経験を豊富に積んでいる方は、試験の勉強をし直す必要がない
上記が電験三種を認定取得するメリットです。
認定取得では実務経験が必要な反面、試験の合格が必要ありません。
そのため、既に認定校を卒業しており実務経験も積んでいるといった方は、電験三種に合格するよりも認定の方が手軽に免状を取得できる手段となります。
認定取得のデメリット
一方で、電験三種を認定取得するデメリットは、以下の3点あります。
- 認定校に通う必要があるため、0から始める社会人向けではない
- 認定校を卒業していない方は時間がかかる
- 実務経験として認められない業務に従事している方は時間がかかる
デメリットとしては、認定校と実務経験をこれから始めるといった方にとって時間がかかる方法であるといった点です。
認定校で数年、実務経験でも1~3年はかかるため、0から始める方向けとはいえません。業界未経験の社会人であれば、試験勉強による取得を目指した方がよいでしょう。
認定取得に必要な実務経験と学歴
実務経験年数
電験三種の認定取得には実務経験が必要ですが、具体的な年数は学歴によって異なります。学歴と実務経験年数については、以下の表の通りです。
学歴 | 実務経験年数 |
---|---|
大学 | 1年 |
短大・高専 | 2年 |
高校 | 3年 |
学校卒業後は、実務経験年数をストレートに計算しますが、卒業前の実務経験の年数は半分として計上されるため注意しましょう。
なお、電験三種の学歴に該当する認定校について詳しく知りたい方は、「電気主任技術者認定校一覧」をご覧ください。
学歴(履修内容)
電験三種の認定取得する際には、卒業証明書のほかに単位取得証明書が必要です。具体的な履修内容については、次の表をご確認ください。
分野 | 履修すべき内容 |
---|---|
理論 | 電気理論・電子理論・電気計測および電子計測に関するもの |
電力 | 発電所および変電所の設計および運転、送電線路および配電線路(屋内配線を含む。以下同じ)の設計および運用ならびに電気材料に関するもの |
機械 | 電気機器・パワーエレクトロニクス・電動機応用・照明・電熱・電気化学・電気加工・自動制御・メカエレクトロニクスならびに電力システムに関する情報伝送および処理に関するもの |
法規 | 電気法規(保安に関するものに限る)および電気施設管理に関するもの |
参照:中部近畿産業保安監督部北陸産業保安監督署「電気主任技術者免状の交付申請に必要な書類の作り方」
電力・機械・法規のうち、1~2分野で履修した科目や単位の不足がある場合は、その分野のみ電験三種の試験に合格すれば学歴の条件を満たせます。
ただし、電力と機械の両方とも単位取得できていない場合は、電験三種の認定取得ができなくなるため注意しましょう。
電験三種の実務経験が積める職場・業務
電験三種の実務経験に関しては、電気の作業であれば全て該当するわけではありません。
実務経験として認められる業務と認められない業務が存在します。
ここからは、電験三種の実務経験が積める業務と積めない業務についてみていきましょう。
実務経験として認められる職場・業務
電験三種の実務経験は「電圧500V以上の電気工作物の維持、工事または運用」に関係する作業が該当する点については前の項目でお話ししました。
具体的な内容としては、次の業務です。
- 屋内外配線工事
- 機器調整および性能検査
- 設備を安定的・経済的に運転するための検査業務
- 定期点検・修理・試験・測定など設備の機能を維持するための保安管理業務
- 新設・増設・取替え・改修などの工事における電気設備の設計業務
参照:中部近畿産業保安監督部北陸産業保安監督署「電気主任技術者免状の交付申請に必要な書類の作り方」
上記の業務が実務経験に該当します。
電気主任技術者としての仕事である月次点検・年次点検といった電気設備の定期点検や保安管理に該当する業務が実務経験を積める仕事です。
該当する業務をメインに扱っている職場に就き、技術者としてのレベルも上げながら実務経験を積みましょう。
実務経験として認められない職場・業務
電気工作物に関係ない設備に従事する業務や電気設備に関するものであっても、知識や経験が必要ない簡易な作業は実務経験として認められていません。
具体的に認められていないものとしては、次の通りです。
- 電力会社から100・200Vで受電する一般電気工作物での業務
- 電気工作物に関する知識を要さない監査や記録
- 受電設備を含まない需要設備、負荷設備のみの維持、運用業務
- 学校、研究所の実験設備、試験設備に係る業務
- 二次側だけに高電圧を発生させる機械器具(X線発生装置やネオン変圧器など)に係る業務
- 電気機械器具、計器類の製造に係る業務 など
参照:中部近畿産業保安監督部北陸産業保安監督署「電気主任技術者免状の交付申請に必要な書類の作り方」
実務経験として認められない業務に従事し続けても電験三種の認定取得はできません。
そのため、試験による合格または経験が積める職場への転職など別の方法をご検討ください。
実務経験がなくても電気主任技術者になれる?
「実務経験が全くない状態だけど電気主任技術者になれる?」といった疑問をお持ちの方にお答えすると、電験三種の試験に合格することで電気主任技術者に従事できます。
電験三種を資格認定により取得する場合は、実務経験が1~3年必要ですが、試験合格により取得する場合は実務経験年数や学歴が問われません。
電験三種の試験に数年の期間を要する場合もありますが、効率のよい勉強を継続することで合格する力は必ず身につきます。
電験三種の取得後は、電気主任技術者の仕事などに従事して自身の技術者としてのレベルアップを狙ってください。
実務経験0の方が電験三種合格に必要な3ステップ
実務経験0の状態の方が電験三種の試験合格を狙う場合、必要なステップとしては全部で3つあります。
- 参考書で基礎を固める
- 過去問を解いて試験の傾向を掴む
- 過去問10年分を2~3周して応用力を身につける
ここでは、それぞれのポイントについて詳しくみていきましょう。
ステップ①参考書で基礎を固める
勉強をゼロから始める場合、まずは参考書で基礎を固めましょう。
各科目の試験範囲における基礎的な内容を勉強しながら基本的な公式や現象を覚えてください。
参考書によっては、例題問題や実践問題なども掲載されているため、それらもあわせて解きながら必要な知識を身につけましょう。
ただし、参考書のみで応用能力は身につけられません。
この後、解説する過去問の勉強が必須となるため、参考書の勉強で期間をあまり使いすぎないよう注意してください。
具体的には1科目あたり1~3週間で参考書1周を目安に勉強しましょう。
ステップ②過去問を解いて試験の傾向を掴む
参考書で基礎的な知識を身につけた後は、過去問などの実践的な問題を解きましょう。
電験三種の合格には応用能力が必要不可欠であるため、過去問対策は絶対に必要です。
まずは、過去問3年分程度を解き進めながら、電験三種ではどういった問題が出題されるのか傾向を把握してください。
また、傾向を把握しながら、自身の得意分野と苦手分野についても確かめましょう。
得意な分野は更に伸ばし、苦手分野は最低限まで克服するといった勉強が大切です。
ステップ③過去問10年分を2~3周して応用力を身につける
ステップ2まで実践できた後は、過去問10年分を2~3周して実践的な応用能力を身につけましょう。
電験三種では、類似した問題は出題されたとしても全く同じ問題は出ません。
そのため、さまざまな主題パターンに対して柔軟に対応する力が必要です。
これらは、過去問を繰り返し解くことで身につけられます。
具体的には、解答の正答率よりも自分が1から解答を説明できるほどに理解しているかが大切なポイントです。
解答だけ正解したとしても説明できないのであれば、応用能力が完全に身についているとはいえません。
過去問10年分をただ解き進めるのではなく、自分が理解している分野と本番で出題されたら不安な分野を把握し、苦手分野を全体的になくすよう対策してください。
試験を受けるのと認定取得どちらが良い?
ここまでで、電験三種を試験合格によって取得する方法や資格認定により取得する方法の概要やメリット・デメリット、そのほかの情報について詳しく解説しました。
結論としては、今の自分自身に適した方法で電験三種を取得しましょう。
人によって、試験合格・認定取得のどちらがよいかは異なります。
次の表を目安に、自分自身がどちらの方法に適しているか判断してください。
試験合格が適している人 | 認定取得が適している人 |
---|---|
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また、電験三種の試験合格によって取得を狙っている方で、日中仕事が忙しく勉強時間を確保できないといった場合は、CICの通信講座の受講をご検討ください。
CICの通信講座は、全科目の受講だけでなく科目に絞った受講も可能であるため、自身が苦手とする分野だけ受講するなど、電験三種をコスパ良く対策できるのが特徴です。
加えて、受講生のアンケートで選ばれた人気講師の動画講義をスマホやタブレットで場所を選ばず閲覧できるため、独学よりも遥かに効率をアップできます。
電験三種を効率よく対策したいといった方は、ぜひ受講をご検討ください。
まとめ
本記事では、第三種電気主任技術者の認定取得方法や実務経験の積み方について、試験合格による取得のポイントとあわせて解説しました。
認定取得は、試験に合格する必要がない反面で実務経験や認定校の卒業が必要な方法です。
そのため、誰にでも適している取得方法ではありません。
また、実務経験として認められている業務と認められていない業務もあるため、本記事で書いてある内容を参考に自分に適した方法を選びましょう。
認定取得が難しいと感じた方は、試験合格による取得を狙ってください。
通信講座などを活用しつつ効率的に勉強することで合格する力は身につきます。