アスベスト対策は、近年の法改正により新たな時代を迎えました。
有資格者による事前調査や国への電子報告が義務化され、初期調査から最終処分までの全工程が追跡可能となる「トレーサビリティ」が確保されたのです。 これは、石綿に関わる業務を行う全ての方々にとって、より高い専門性と法的責任が求められることを意味します。
本稿では、この厳格化された新時代に対応するため、専門家が知るべき知識をレベル別の対策を中心に分かりやすく解説します。
公開日:2025年11月27日 更新日:2025年11月27日

アスベスト対策は、近年の法改正により新たな時代を迎えました。
有資格者による事前調査や国への電子報告が義務化され、初期調査から最終処分までの全工程が追跡可能となる「トレーサビリティ」が確保されたのです。 これは、石綿に関わる業務を行う全ての方々にとって、より高い専門性と法的責任が求められることを意味します。
本稿では、この厳格化された新時代に対応するため、専門家が知るべき知識をレベル別の対策を中心に分かりやすく解説します。

アスベスト(石綿)は、繊維状の天然鉱物です。繊維は目視が不可能なほど細かくほぐれやすく、そしてそれらを吸い込むと、体内に長く残留し、10年から50年という長い潜伏期間を経て、石綿肺、肺がん、悪性中皮腫といった回復が困難で深刻な健康被害を引き起こします。
この高い危険性から、現在ではアスベストを0.1%を超えて含有する製品の製造、輸入、使用等は例外を除いて全面的に禁止されています。
しかし、過去に建てられた建築物には今なお多くのアスベスト含有建材が残存しており、解体・改修工事における適切な取り扱いが極めて重要な課題となっています。
アスベスト含有建材のリスク管理における最も重要な指標が「発じん性」です。これは、建材が物理的な衝撃や劣化によって、どれだけ繊維を空気中に飛散させやすいかの指標です。この指標に基づき、アスベスト含有建材は以下の3つのレベルに分類され、それぞれに作業基準が定められています。
建物の解体・改修工事には、その工事の規模や金額に関わらず、アスベストの事前調査を行うこと、およびその調査を国家資格である「建築物石綿含有建材調査者」等が実施することが義務化されました。
調査は以下の3ステップで進められます。
また、以下の規模を超える工事では、アスベストの有無にかかわらず、事前調査の結果を「石綿事前調査結果報告システム」を通じて報告する義務があります。

レベル1は、綿状で非常に脆く、わずかな衝撃でも大量の繊維を飛散させる最も危険なカテゴリーです。
吹付け石綿 (鉄骨造の建物や駐車場の柱や梁、天井の断熱や結露防止、機械室やボイラー室の防音)
【計画と事前届出】
【現場準備(負圧隔離)】
【除去作業】
【事後処理】
レベル2は、板状や筒状に成形されていますが、密度が低く脆いため、劣化時や除去時に繊維が飛散しやすい建材です。
【計画と事前届出】: レベル1と同じ
【現場準備】:レベル2の現場準備は、工法によって内容が異なります。
A.隔離工法の場合:大規模な除去や、建材の損傷が激しく飛散リスクが高い場合に選択されます。
B.グローブバッグ工法の場合:配管保温材など、局所的な除去に適した工法です。
【除去作業】
| グローブバッグ工法 | 配管保温材など小規模な除去に採用されます。対象部分をグローブ付きのビニール袋で覆い、内部を湿潤化しながら除去。 |
|---|---|
| 隔離工法 | 大規模な除去では、レベル1に準じた隔離措置を実施。 |
【事後処理】: レベル1と同じ。
レベル3は、繊維がセメント等で固められた硬質の建材がほとんどで、通常では飛散性は低い状態です。しかし、セメント成分の劣化による剥落や、切断・破砕によって繊維が飛散します。
【知識の再確認】法改正で明確化された調査対象
2020年の大気汚染防止法改正により、「建築物」の定義に「電気の供給」「給水」等の建築設備が含まれ、これまで曖昧だった分電盤内部の部品や配管のパッキンなどが、明確に調査対象となりました。
【計画と報告】: レベル1と同様。ただし、作業届は原則不要。
【現場準備】
【除去作業】
【事後処理】

アスベスト規制は、主に2つの法律によって成り立っています。
これらの法律に加え、「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」などの技術指針が、具体的な作業手順の拠り所となります。

アスベストに関わる作業は、事前調査から廃棄物処理まで、一つ一つの工程が責任の重い「法的プロセス」です。見落としや手順の誤りは、作業員や周辺住民の健康を脅かすだけでなく、厳しい罰則や将来的な損害賠償といった深刻な経営リスクに直結します。
この複雑で責任の重いアスベスト対策を、安全かつ確実に乗り切るには、信頼できる専門家のサポートが不可欠です。
「石綿の窓口」は、有資格者による精度の高い調査から、法令を遵守した除去計画の策定、信頼できる専門業者の選定まで、ワンストップでサポートします。
アスベストに関するご相談やお見積りは無料です。是非お問い合わせください。
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お問い合わせ電話:03-6432-4952

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