
私たちの生活や社会基盤に欠かせない電気を取り扱う仕事は、常に安定した需要があり、資格を保有することでキャリアを大きく広げられます。しかし、「電気工事士」や「電気主任技術者(電験)」、「工事担任者」など、その種類は多岐にわたり、それぞれ活躍できる分野や取得の難易度も大きく異なります。
本記事では、主要な電気系資格を国家資格と民間資格に分類し、活かせる仕事、取得の難易度、そして将来性まで徹底的に比較解説します。未経験の方が最初に目指すべき資格から、年収アップやキャリアアップにつながる難関資格までご紹介しますので、ご自身に合った資格を見つけるための参考として、ぜひご一読ください。
電気系資格一覧

電気系の資格は、その業務の特性や法的な位置づけにより分類されます。特に、法律によって特定の作業が独占されている国家資格は、安定したキャリアを築く上でも重要です。
ここでは、主要な資格を一覧表で比較し、その概要を解説します。
難易度に関しては、5段階評価で表しています。
| 区分 |
資格名 |
活かせる仕事の分野 |
独占業務 |
取得難易度 |
| 主要な国家資格 |
電気工事士(第二種) |
一般住宅、店舗、小規模事業所の電気工事 |
あり |
2 |
| 電気工事士(第一種) |
大規模施設、工場、高圧受電設備の工事 |
あり |
3 |
| 電気主任技術者(電験三種) |
変電所、ビル、工場などの電気保安・管理 |
あり |
5 |
| 電気通信主任技術者 |
事業用電気通信設備の工事、維持及び運用に関する監督責任者 |
あり |
4 |
| 工事担任者 |
電話・LAN・光回線などの通信回線の接続工事 |
あり |
3 |
| 電気工事施工管理技士 |
電気工事現場の施工管理(監督) |
あり
(選任独占)
|
4 |
| 電気通信工事施工管理技士 |
電気通信工事現場の施工管理(監督) |
あり |
4 |
| その他の国家資格 |
消防設備士(甲種・乙種) |
消防設備の工事(甲種)と点検・整備(乙種) |
あり |
3 |
| エネルギー管理士 |
大規模施設におけるエネルギー使用の監視・管理 |
あり |
3 |
| 公的認定・民間資格 |
認定電気工事従事者 |
自家用電気工作物の簡易な工事 |
なし |
1 |
| 特種電気工事資格者 |
ネオン工事、非常用予備発電装置工事 |
あり |
2 |
| 計装士 |
計測機器、制御システムの設計・施工・保守 |
なし |
3 |
主要な国家資格
電気系の国家資格は、電気の専門知識と安全技術を公的に証明するもので、法律に基づいて特定の業務を独占して行えます。
- 電気工事士(第一種・第二種):一般住宅から大規模施設まで、電気設備を設置したり修理したりする工事の専門家。
- 電気主任技術者(電験):発電所や変電所、大規模なビルなどの電気設備の保安と管理を行う責任者。
- 工事担任者:インターネットや電話などの通信回線を、建物内の端末設備へ接続する工事を行う専門家。
- 電気工事施工管理技士:電気工事現場全体の工程、安全、品質などを管理・監督する専門家。
その他の関連資格
主要国家資格以外にも、特定の専門分野に特化した資格や認定制度があり、キャリアアップや業務の幅を広げるのに役立ちます。独占業務がないケースもありますが、実務での業務範囲の拡張や専門性の証明に役立ちます。
- 認定電気工事従事者:第一種・第二種電気工事士の資格と組み合わせて、自家用電気工作物(最大電力500kW未満)の簡易な電気工事に従事するための公的認定。
- 特種電気工事資格者:ネオン設備や非常用予備発電装置といった、特定の特殊な電気工事を行うための公的認定。
- 計装士: 工場やプラントにおける、計測・制御システムの設計、施工、保守に関する技術力を証明する民間資格。
電気系資格の将来性
電気系資格の需要は、今後も数十年間にわたって減ることはないと考えられています。その最大の理由は、電気そのものが社会の基幹インフラであり、人々の生活から産業まであらゆる活動に必須であるためです。
加えて、多くの国家資格は法律によって独占業務が定められているため、資格保有者の市場価値は法的に保証されています。業界全体で技術者の高齢化と人手不足が深刻化していることから、資格保有者へのニーズは高まる一方です。
また、近年は再生可能エネルギーへの転換やEV化、DXの進展など、新しい技術分野が急速に拡大しています。資格を持つ技術者はこうした成長分野でも活躍の場を広げられるため、将来性は極めて明るいと言えるでしょう。
国家資格と民間資格の違い

資格を選ぶ上で、国家資格と民間資格の違いを理解しておくことは重要です。両者の違いが、その資格の社会的評価や業務の制限に直結します。
国家資格は「法律で認められた業務の証明」
国家資格は、国が法律に基づいて認定する資格です。資格がないと特定の業務ができない「独占業務」が定められていることが多く、その専門性と信頼性は社会的に広く認められています。
例えば、一般の住宅や店舗などの電気工事を行うためには「電気工事士」の資格が必須です。電気主任技術者のように、特定の事業所にはその資格保有者の選任が義務付けられている場合もあります。
民間資格は「知識・技能の証明」
民間資格は、民間の団体や企業が独自の基準で認定する資格です。法律による独占業務はありませんが、特定の分野における専門的な知識やスキルを証明するために役立ちます。
例えば、「計装士」は計測機器や制御システムの技術者としてのスキルを証明しますが、この資格がなければ仕事ができないわけではありません。しかし、取得していることで信頼性が増し、仕事の獲得やキャリアアップにつながります。
キャリアの土台を築き、安定した業務に就くためには、まずは国家資格の取得を優先するのが賢明です。
主要な電気系国家資格と独占業務

ここでは、電気業界で特に重要度の高い主要な国家資格について、その独占業務と特徴を詳しく解説します。
電気工事士(第二種・第一種)
電気設備を工事するために、電気工事士法によって定められた最も基本的な国家資格です。
| 種類 |
活かせる主な場所 |
独占できる業務範囲 |
難易度(合格率の目安) |
| 第二種電気工事士 |
一般住宅、小規模店舗、事務所など |
電圧600V以下で受電する一般用電気工作物の工事 |
比較的易しい(約60〜70%) |
| 第一種電気工事士 |
大規模工場、ビル、商業施設など |
600Vを超える高圧受電設備など、ほとんどの電気工事 |
やや難しい(約35〜45%) |
第二種は、電気工事の入門資格として最適です。受験資格の制限がなく、合格率も比較的高い(例年60%〜70%程度)ため、未経験者も挑戦しやすいのが特徴です。第一種は第二種の上位資格で、より大規模で責任の重い工事を担当でき、取得できれば技術者としての市場価値が大きく向上します。

電気主任技術者(電験三種・二種・一種)
電気事業法に基づき、発電所や変電所、そしてビルや工場などの電気設備を保安監督するために、事業所に選任が義務付けられている極めて重要な国家資格です。「電験(でんけん)」とも呼ばれます。
| 種類 |
対応可能な電圧範囲 |
難易度・特徴 |
| 電験三種 |
5万V未満の事業用電気工作物 |
受験資格なし。合格率10%前後の難関資格。 |
| 電験二種 |
17万V未満の事業用電気工作物 |
一次・二次試験があり、極めて難易度が高い。 |
| 電験一種 |
すべての事業用電気工作物 |
電験の最高峰。最も難しく、希少価値が高い。 |
最も初級の電験三種であっても合格率は例年低く、難関資格のトップクラスに位置します。しかし、取得すれば電気設備の保安管理という高度な独占業務に従事でき、就職や年収アップに非常に有利です。
電気通信主任技術者
電気通信事業者が設置する事業用電気通信設備の工事、維持、運用の監督責任者となるための国家資格です。
| 種類 |
活かせる主な仕事 |
難易度 |
| 伝送交換主任技術者 |
無線設備、伝送設備、交換設備の監督・管理 |
合格率10〜20%台 |
| 線路主任技術者 |
電話回線、海底ケーブルなどの線路設備の監督・管理 |
合格率10〜20%台 |
光回線やモバイル通信網など、大規模な通信インフラ全体を管理・監督する立場に就くことができ、通信事業者でのキャリアアップに必須の資格です。
工事担任者
電気通信事業法に基づき、電気通信回線と建物内の端末設備(ルーター、電話機、LANなど)を接続する工事を行うために必要な国家資格です。
| 種類 |
扱える主な回線 |
難易度・特徴 |
| アナログ通信 |
アナログ電話回線、ISDN回線 |
第二級は比較的易しく、入門におすすめ。 |
| デジタル通信 |
インターネット回線、光ファイバーなど |
第二級は比較的易しく、インターネット関連に強い。 |
| 総合通信 |
アナログ・デジタルの全範囲 |
範囲が最も広く、通信工事の現場で重宝される。 |
現代社会で不可欠な情報通信インフラを支える重要な役割を担います。特に総合通信を取得すれば、あらゆる種類の通信回線工事に対応できるため、通信インフラ企業やLAN工事を行う会社でのキャリアに直結します。

電気工事施工管理技士(2級・1級)
建設業法に基づき、電気工事の現場において施工計画書の作成、工程管理、品質管理、安全管理など、一連の管理業務を行うために必要な国家資格です。
| 種類 |
独占業務の主な権限 |
難易度・特徴 |
| 2級施工管理技士 |
主任技術者として、比較的小規模な電気工事の現場管理に従事できる |
第一次検定(旧学科)は合格しやすい傾向にある |
| 1級施工管理技士 |
監理技術者として、特定建設業が請け負う大規模工事の現場管理に従事できる |
高度な管理能力が求められ、難易度は高い |
現場の技術者から管理者へのキャリアアップに欠かせない資格で、電気工事の知識に加え、法律・契約・安全衛生など幅広い管理知識が問われます。近年は受験資格が緩和され、第一次検定(旧学科試験)は比較的挑戦しやすくなりましたが、第二次検定(旧実地試験)を受験するためには所定の実務経験を満たす必要があります。

電気通信工事施工管理技士(2級・1級)
建設業法に基づき、モバイル通信基地局の設置、光ファイバー網の敷設、LAN工事など、電気通信工事全般の現場において、施工計画書の作成、工程管理、品質管理、安全管理などの管理業務を行うために必要な国家資格です。
| 種類 |
独占業務の主な権限 |
難易度・特徴 |
| 2級施工管理技士 |
主任技術者として、比較的小規模な電気通信工事の現場管理に従事できる |
第一次検定(旧学科)は合格しやすい傾向にある |
| 1級施工管理技士 |
監理技術者として、特定建設業が請け負う大規模工事の現場管理に従事できる |
高度な管理能力が求められ、難易度は高い |
通信インフラの整備が進む現代では、通信工事の現場を統括する上で必須の資格であり、現場管理職へのキャリアアップに直結します。

エネルギー管理士
省エネルギー法に基づき、大量のエネルギーを使用する工場や事業所(特定事業者)に、エネルギー使用の合理化を推進するために選任が義務付けられている国家資格です。
| 特徴 |
活かせる主な仕事 |
難易度 |
| エネルギー消費の効率化、監視、管理を行う専門家 |
製造業、鉱業、電気供給業など、大規模エネルギー使用施設 |
20%〜30%台で、実務経験者にも人気 |
電気設備や熱設備に関する幅広い知識が求められ、特に環境意識の高まりとともに、企業のコスト削減と持続可能性に貢献できるため、需要が増加しています。
未経験者にもおすすめの電気系資格

「電気業界でキャリアをスタートさせたい」「異業種から転職したい」という未経験の方には、以下の資格が最初のステップとして適しています。
これらは受験資格に制限がなく比較的合格しやすいため、電気分野の知識と技能を効率よく習得するのに役立ちます。
第二種電気工事士
第二種電気工事士は、電気工事の入門資格としておすすめです。受験資格に制限がなく、誰でも挑戦できるため、キャリアの第一歩として選ばれています。取得すれば、一般住宅や小規模な店舗など、身近な電気工事の低圧部分に従事できるようになり、需要も高いため就職や転職に圧倒的に有利です。
また、資格取得に向けて勉強する中で、電気の基礎知識を網羅的に習得できます。国家資格の中でも合格率は比較的高く、近年は最終合格率も55〜65%程度で推移しているため、計画的に学習すれば未経験からでも十分に手が届く水準です。
効率よく第二種電気工事士の資格取得を目指す方は、CIC日本建設情報センターの第二種電気工事士対策講座をチェックしてみてください。

工事担任者(第二級デジタル通信・第二級アナログ通信)
通信分野に興味がある未経験者には、工事担任者の第二級の取得がおすすめです。受験資格に制限がなく、特に第二級は合格しやすい傾向があるため、電気通信分野の基礎を学ぶのに適しています。
現代社会で必須のインターネットや、電話などの通信回線と端末設備との接続工事を行うための資格で、この分野の知識は今後も需要が見込まれます。第二級から挑戦することで、将来の総合通信や電気通信主任技術者といった上位資格へのステップアップの足がかりとなるでしょう。

消防設備士(乙種)
消防設備士の乙種は、ビルメンテナンス業界でのキャリアを目指す未経験者に人気の高い国家資格です。乙種には受験資格の制限がほとんどありません。特に乙種4類(自動火災報知設備)は、電気設備と関連が深く、点検・整備業務の独占資格となるため、ビル管理業務で重宝されます。
電気工事士と並行して取得することで、設備管理技術者としての価値を大きく高められ、就職の際の強力な武器となります。

年収アップやキャリアアップにおすすめの電気系資格

すでに電気工事士などの基本資格を持っている方が、さらなる年収アップや管理職へのキャリアアップを目指すなら、以下の資格に挑戦しましょう。ここでは、より高度な業務や責任ある立場を独占できる希少価値の高い国家資格をご紹介します。
電気主任技術者(電験三種以上)
電気主任技術者(電験)は、高待遇・好条件のキャリアにつながる資格です。法律により大規模な電気設備の保安監督という、責任が重く替えのきかない業務が独占されており、その希少性から取得者の市場価値は極めて高い資格の一つです。選任が義務付けられているため、求人の需要が常に安定しており、資格手当や高年収に直結します。
最も初級の電験三種であっても、難易度は国家資格の中でもトップクラスですが、取得できれば電気技術者としての地位は確立され、将来にわたって安定したキャリアを築けます。上位資格である電験二種、電験一種へ進むことで、電力会社や大規模な工場の中枢で活躍することも可能です。
第一種電気工事士
第二種電気工事士を取得した後の王道ルートが第一種電気工事士です。第二種では扱えない高圧受電設備など、最大500kW未満の自家用電気工作物を含めたほとんどすべての電気工事に従事できるようになり、業務範囲が大幅に広がります。
現場での実務経験が必須となる免状交付要件があるため、実務経験を積みながら取得を目指すことで、技術的なスキルと業務範囲を確実にステップアップできます。活躍の場が大規模工場や公共施設に広がり、技術者としての能力を最大限に活かせるでしょう。

1級電気工事施工管理技士
1級電気工事施工管理技士は、電気工事の現場における管理の最高責任者となるために必須の資格です。特定建設業が請け負う大規模工事において、監理技術者として現場の総括責任者(工程・品質・安全)を担えます。
現場のリーダーとして活躍するため、給与水準は高く、会社内での昇進にも直結します。第二次検定を受験するためには所定の実務経験が必須となるため、現場経験を積みながら挑戦することが求められますが、技術者から管理職へのキャリアアップを確実にできるでしょう。
超難関資格である電験の合格を目指す方は、CIC日本建設情報センターの電気工事施工管理技士対策講座がおすすめです。

1級電気通信工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士は、現代社会で急速に需要が拡大している通信インフラ工事の現場管理を担う専門資格です。取得すれば、光ファイバー網の敷設やモバイル基地局の建設など、大規模な電気通信工事において監理技術者として責任ある立場に就けます。
電気工事とは異なる専門的な知識が必要とされ、特に情報通信技術(ICT)の進化に伴い、1級電気通信工事施工管理技士の市場価値は高まっています。管理能力と専門知識を両立する証明となるため、通信インフラ企業や大規模IT企業のインフラ部門でのキャリアアップに有利です。
最短ルートで第一種電気工事士の資格取得を目指す方は、CIC日本建設情報センターの電気通信工事施工管理技士対策講座をご検討ください。

まとめ

電気系資格は、社会インフラの安定性や法的な独占業務によって市場価値が保証されており、将来にわたって安定したキャリアと高待遇が期待できます。未経験者の方には「第二種電気工事士」が、経験者やキャリアアップを目指す方には電験三種や「1級電気工事施工管理技士」などがおすすめです。難易度は高いものの希少価値の高い資格に挑戦することで、年収やキャリアを大きく飛躍させられます。
CIC日本建設情報センターでは、「電気工事士」や「電気工事施工管理技士」、「電気通信工事施工管理技士」といった、電気業界でのキャリアアップに直結する主要な国家資格の受験対策講座を開講しています。最新の出題傾向を徹底分析したカリキュラムと、無理なく学習を継続できるサポート体制で、最短ルートの合格を目指しましょう。
