
建設業許可は、大きく「一般建設業」と「特定建設業」の2つが運用されています。いわゆる「軽微な工事」の範囲を超える規模の施工を請け負うのであれば、発注者が官公庁か民間企業かに関わらず、必ずこのいずれかの許可を取得しなければなりません。
しかし、現場や経営の最前線では「許可が必要なのは分かっているが、自社にどちらが適しているのか」「特定を取るためのハードルがどこにあるのか」という判断に迷うケースも多いのではないでしょうか。特に近年は物価高騰に伴う法改正もあり、基準となる数字も動いています。
本記事では、許可区分の違いを実務レベルで整理し、事業拡大の足かせとなりやすい「財務要件」や「技術者不足」をどう乗り越えるべきか、具体的に解説していきます。

特定建設業と一般建設業の主な違い

「特定」と「一般」の2つを分ける最大の違いは、元請として工事を受けた際に「下請け業者にどれだけの金額を発注できるか」という点にあります。この制度が設けられている背景には、元請の経営難や倒産から、立場の弱い下請け業者を守るという「下請保護」の精神が流れています。
まずは、実務で重要となるポイントを比較表で確認してみましょう。
| 比較項目 |
特定建設業許可 |
一般建設業許可 |
| 下請契約の制限 |
制限なし(高額な外注が可能) |
合計5,000万円未満(建築一式は8,000万円未満) |
| 目的 |
下請業者の連鎖倒産を防ぐ |
施工の適正化を担保する |
| 財産的基礎 |
極めて厳しい(資本金や自己資本の基準あり) |
比較的緩やか(500万円の調達能力など) |
| 専任技術者 |
原則、1級の国家資格が必要 |
2級資格や10年の実務経験など |
上記のように、特定建設業は「大きな工事を請け負える」というだけでなく、「下請けへの支払いを最後まで完遂できる財務基盤がある」という社会的信用の証といえます。
関連記事:【2025年版】特定建設業許可とは?一般建設業との違いや要件、取得するメリットまで徹底解説
下請けへの発注金額

許可区分を判断する際の基準は、受注した工事の総額ではなく、元請として「一次下請けに出す契約金額の合計」にあります。一般建設業の許可で対応できる下請契約の上限額は、工事の種類によって以下のように定められています(金額はいずれも税込)。
- 建築一式工事の場合:下請への発注合計が8,000万円未満
- その他の工事(土木、電気、管など):下請への発注合計が5,000万円未満
上記を超える金額で下請契約を締結する場合には、必ず特定建設業の許可を取得していなければなりません。
留意すべきは、この金額が1社あたりの発注額ではなく、「全下請け業者との契約総額」を指すという点です。大型案件では、多くの専門工事業者が介在するため、見積もり段階で合計額が基準を上回らないか精査する必要があります。
2023年の法改正

昨今の物価高騰や人件費の上昇を背景に、特定建設業許可が必要となる金額基準は段階的に引き上げられています。
かつては「3,000万円(建築一式4,500万円)」という基準が長年運用されてきましたが、2023年(令和5年)1月の改正を経て、現在は5,000万円(建築一式8,000万円)が適用されています。
この改正は、工事費が高騰する中で、これまで特定許可が必要だった規模の案件でも一般許可で柔軟に施工できるよう配慮されたものです。ただし、依然として金額の管理を誤れば建設業法違反となるリスクがあるため、見積もり段階での慎重な予算管理がこれまで以上に重要とされています。
特定建設業に求められる財産的基礎

特定建設業の取得において、多くの企業が直面するのが厳しい「財務基準」です。下請けへの支払いを確実に履行できることを示すため、直近の決算で以下の4条件をすべて満たす必要があります。
- 資本金が2,000万円以上
- 自己資本(純資産額)が4,000万円以上
- 流動比率が75%以上
- 欠損比率が20%を超えないこと
これらの基準は、許可の更新時(5年ごと)にも審査されます。一度取得しても、経営状況が悪化して純資産が4,000万円を下回るなど、特定許可を維持できなくなるケースもあるため、長期的な利益の確保と健全な財務運営が常に求められます。
専任技術者の要件

財務面と並んで大きな壁となるのが、営業所ごとに配置する「専任技術者」の要件です。「特定建設業」と「一般建設業」の許可区分によって、求められる技術力の証明方法が異なります。
特定建設業で求められる主な国家資格
特定建設業の許可を得るには、指導監督的な実務経験を裏付けるために、原則として1級の国家資格者を置く必要があります。特に土木、建築・電気・電気通信・管・鋼構造物・舗装・造園の「指定建設業」8業種においては、実務経験による代用が認められず、資格保有が絶対条件です。
CIC日本建設情報センターでは、最短ルートで合格を目指せる効率的なカリキュラムをご用意しています。限られた学習時間で特定許可取得を実現したい方は、以下の講座をチェックしてみてください。
建築施工管理技士(1級・2級)
土木施工管理技士(1級・2級)
電気工事施工管理技士(1級・2級)
管工事施工管理技士(1級・2級)
造園施工管理技士(1級)
一般建設業で求められる資格や実務経験
一般建設業の許可であれば、2級の国家資格や、一定期間(原則10年以上)の実務経験があれば専任技術者としての要件を満たすことが可能です。
将来的な特定許可への切り替えを視野に入れるのであれば、まずは現場を知る自社社員に1級を取得させ、社内の有資格者層を厚くしておくことが受注体制の強化につながります。
孫請けに発注する場合

特定建設業の許可が義務付けられているのは、あくまで「発注者から直接工事を請け負う元請業者」のみです。例えば、一次下請けとして入った現場において、さらに下の業者(孫請け)に多額の発注をする場合であっても、自社が特定許可を保有している必要はありません。
一次下請け、二次下請けといった立場であれば、再下請契約の合計金額が5,000万円(建築一式は8,000万円)を超えていても一般許可で施工できます。これは、下請代金の支払いや施工管理に直接的な法的責任を負うのが、発注者と契約を結ぶ元請業者であるためです。

専任技術者要件を満たす従業員がいない場合

特定許可への切り替えを検討していても、社内に専任技術者要件を満たす従業員がいないケースは少なくありません。この課題を解決するには、主に2つの方法があります。
従業員に資格を取得してもらう
最も着実な解決策は、社風や現場の状況を熟知している既存の社員に1級資格を取得してもらうことです。 多忙な業務と並行しての学習は負担が大きいものの、会社側が受講費用の補助や学習時間の確保といったバックアップを行うことで、取得の可能性を高められます。
自社で技術者を育成する体制が整えば、特定許可の要件を維持しやすくなるだけでなく、現場の施工管理能力そのものの向上も見込めます。
有資格者を採用する
即戦力を求める場合は、すでに1級資格を保有している人材を新たに採用する方法があります。 ただし、建設業界全体で有資格者のニーズは非常に高く、採用コストの高騰や人材のミスマッチといったリスクも考慮しなければなりません。
そのため、採用活動と並行して、前述の「社内育成」を継続的に進めておくことをおすすめします。
