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保護具着用管理責任者教育の重要性と、災害事例から学ぶ作業環境と安全意識

公開日:2025年10月31日 更新日:2025年10月31日

保護具着用管理責任者教育の重要性と、災害事例から学ぶ作業環境と安全意識

保護具着用管理責任者教育の重要性と、災害事例から学ぶ作業環境と安全意識

近年、保護具を正しく着用しなかったことによる労働災害が後を絶ちません。災害の結果、健康障害や、死に至るケースもあるため、これまで努力義務であった保護具の着用が、2024年4月から原則として義務化されました。

これにより事業者は、労働者に保護具を使用させるときは、「保護具着用管理責任者」を選任し、有効な保護具の選択、保護具の保守管理、その他保護具に係る業務を担当させなければならないこととなりました。

今回は保護具に関わる過去の労働災害事例をご紹介します。最後まで読めば保護具着用管理責任者の重要性が理解できるでしょう。特に受講を考えている事業者の方は必見です。


CIC保護具着用管理責任者教育Web

目次

保護具着用管理責任者教育の重要性

保護具着用管理責任者教育の重要性

2024年4月から、化学物質のリスクアセスメントの結果に基づく措置として、事業者が労働者に保護具を使用させる時は「保護具着用管理責任者」の選任が必要となりました。

保護具着用管理責任者の選任要件として、「保護具に関する知識及び経験を有すると認められる者のうちから選任すること」が定められています。

選任された保護具着用管理責任者の職務は下記のとおりです。

  • 保護具の適正な選択に関すること
  • 労働者の保護具の適正な使用に関すること
  • 保護具の保守管理に関すること

参考:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」

保護具の着用義務に違反した場合、事業者に対して罰則が科される可能性があります。

罰則を受けるだけでなく、労働災害が発生した場合の社会的信用失墜や損害賠償責任なども考慮すると、保護具の着用義務の遵守は事業者にとって非常に重要な責務と言えます。

保護具着用管理責任者についての詳しい内容はこちらをご覧ください。

保護具着用管理責任者とは?|2024年4月から義務化

保護具着用管理責任者教育に関する代表的な災害事例

保護具着用管理責任者教育に関する代表的な災害事例

事例1:フロンガス等を吸引して酸素欠乏症になる

 

発生状況 木造2階建新築工事において、硬質ウレタンフォームの吹き付けによる断熱工事中に発生。

被災者Aがミキシングガンでウレタンフォームを吹き付け、被災者Bが吹き付け場所の外で段取りや作業補助を行ったが、換気装置及び空気呼吸器は使用しなかったため、発生するフロンガス等を吸引して被災者2名が酸素欠乏症となった。

事故の原因 作業場所に発泡用のフロンおよび代替フロンが充満したが、作業場所を換気せず、また、呼吸用保護具を着用せず作業した。
結果(けが・死亡・周囲への影響) 被災者は2名とも死亡した。
防げたポイント 作業者は空気呼吸器等の呼吸用保護具を着用して作業すること。

換気装置を用いて作業場所の換気を行うこと。

安全衛生教育を適切に実施すること。

参考:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」

事例2:蛍光灯を増設する工事中に感電する

 

発生状況 製麺会社の蛍光灯増設工事において発生。

被災者は、作業床の下に取り付けた蛍光灯に電源コードを接続するため、電源コードに絶縁スリーブを取り付け圧着ペンチで挟んだときに、圧着ペンチの歯が絶縁スリーブを突き抜け、電源コードの充電部分にまで達して感電した。

被災時の被災者の服装は、作業服、布製の作業帽および運動靴であった。

被災者の会社は当日の作業で絶縁用ゴム手袋、絶縁靴等の絶縁用保護具を用意していなかった。

また、被災者が使用していた圧着ペンチは、通常の作業で用いられているもので、活線作業用に絶縁された工具ではなかった。

事故の原因 絶縁用保護具を使用せず、絶縁されていない工具を使用していた。

感電防止についての指示や安全衛生教育が行われなかった。

結果(けが・死亡・周囲への影響) 被災者は死亡した。
防げたポイント 絶縁用保護具等を使用させる。

感電防止に係る安全衛生教育を実施する。

作業方法について発注者と十分な打合せを行い、対策を検討した上で作業を行う。

参考:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」

事例3:有機溶剤が作業服に浸透し、化学熱傷を負う

 

発生状況 橋梁塗装の剥離作業中に、被災者2名が作業床に背中または腕をつけて作業を行っていたところ、意識混濁となり、また付着した液体剥離剤が作業着を浸透し、化学熱傷を負った。

被災者2名は全面形電動ファン付呼吸用保護具、防じん機能付き有機ガス用吸収缶を着用していたが、作業着は耐液体性能を有していなかった。

事故の原因 作業に適した性能を有する化学防護服を着用させていなかった。

被災者がつり足場内の床に背中または腕をつけて作業を行っていた。

結果(けが・死亡・周囲への影響) 被災者は2名とも休業した。
防げたポイント 皮膚に障害を与えるものを取り扱う業務に適した保護具(不浸透性の保護衣、保護手袋及び保護長靴)を作業者に着用させる。

事前に剥離剤の危険有害性に関する教育等を実施した上で作業に従事させる。

参考:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」

事例4:必要な換気をせず、有機溶剤中毒になる

 

発生状況 マンション建築工事で、塗装業の被災者らが地下室の壁に下地塗りをしていた時に地下室に充満した有機溶剤により全員が中毒にかかった。

被災者らは、有機溶剤の入った結露防止用下地塗料を使用し、地下室5室の外周壁の塗装作業を行った。16時30分頃から有機溶剤の臭気が強くなったが、そのまま作業を続けた。

帰りが遅いので事業者が真夜中に現場に行ったところ、地下室に倒れている3名を午前0時に発見し、ただちに救急車により救助され、病院にて有機溶剤中毒及び化学熱傷と診断された。

事故の原因 この地下室には換気装置は無く、また、一室の出入り口は一つしか設けられていなかったため、有機溶剤含有の塗料による塗装作業により有機溶剤の空気中の濃度が高くなった。

必要な休憩を取らずに作業を続けたため、有機溶剤による中毒を起こした。

結果(けが・死亡・周囲への影響) 被災者3名は、休業14日から60日の治療を受けた。
防げたポイント 呼吸用保護具については、電動式送気マスク又はエアラインマスクを用いる。

地下室における換気装置の設置については、送気・排気を考慮した装置とする。

有機溶剤の危険有害性について、特別な安全・衛生教育を実施する。

報連相を実施し、事業者も確認を徹底する。

参考:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」

事故の背景・原因分析

事故の背景・原因分析

4つの事例をご紹介しました。

事故の背景には共通して、保護具を適切に着用していなかったという点が挙げられます。仮に着用していても、該当の作業に適していなければ意味がありません。

また、管理者は作業者に保護具の着用徹底まで指示する必要があるにもかかわらず、怠っていたことも原因の一つでしょう。

災害を防ぐための現場対策と教育

災害を防ぐための現場対策と教育

保護具の着用義務を遵守するだけでなく、作業者が安全かつ効果的に保護具を使用するためには、適切な管理と教育が不可欠です。

化学物質による労働災害が発生してしまうと、精神・神経障害や身体・臓器の障害などが後遺症として残ってしまうケースがあり、一度発生すると回復が難しい場合もあります。現場では保護具着用の徹底、KY活動を通して、危険を周知する必要があります。

保護具着用管理責任者は、以下を遵守しましょう。

  • 適切な保護具を選定する
  • 保護具のメンテナンスをする
  • 保護具を正しい着用方法を指導する
  • 保護具着用の徹底

まとめ

まとめ

保護具を適切に着用する・着用させることが、いかに重要かお分かりいただけたでしょうか。

「保護具着用管理責任者教育」は、保護具の使用が必須の事業場において、保護具の適切な使用・管理を行うために必要な、知識と技能を習得するための重要な講習です。

CIC日本建設情報総合センターでは、便利なWeb(オンライン)講習をご用意しています。AIによる顔認証システムで受講されますので、事業者は受講中の監視人を用意する必要がなく、また、時間や場所を選ばないので効率的に受講できます。ぜひ受講をご検討ください。

「保護具着用管理責任者教育」は、労働者の安全と健康を確保するための重要な取り組みです。保護具着用管理責任者の育成と活躍が、化学物質を取り扱う事業場の安全衛生水準の向上につながることが期待されます。

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