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石膏ボードのアスベストの見分け方から安全な調査・処分まで、専門家が徹底ガイド

公開日:2025年11月20日 更新日:2025年11月20日

石膏ボードのアスベストの見分け方から安全な調査・処分まで、専門家が徹底ガイド

石膏ボードのアスベストの見分け方から安全な調査・処分まで、専門家が徹底ガイド

石膏ボードにアスベスト(石綿)のリスクが潜むことや、2023年10月からの調査の資格者義務化は、日々アスベスト関連の業務に携わる皆様には周知の事実かと存じます。

しかし、その知識は最新のものにアップデートされ、現場の複雑なリスクに万全に対応できているでしょうか?

本記事では、石綿業務に携わる皆様が、複雑化する法規制を遵守し、現場の安全を確実なものにするため、アスベスト含有石膏ボードの「見分け方」から「安全な撤去・処分方法」までを、体系的かつ実践的に解説します。


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目次

石膏ボードとアスベストの歴史【基礎知識編】

石膏ボードとアスベストの歴史【基礎知識編】

ここでは、石膏ボードとアスベストの関係について基礎的な知識を整理し、特にアスベストが含有されていた石膏ボードの歴史的背景や使用目的、流通状況について解説します。また、流通量が少なく使用範囲が限定的であることによる過信のリスクや、現在も注意すべき点についても触れ、正確な理解と対応の重要性をお伝えします。

アスベスト含有石膏ボードの歴史的背景

アスベスト含有石膏ボードの歴史的背景や、利用されていた理由などについても解説します。

含有の目的と時期

アスベストが石膏ボードに使用された主な理由は、その優れた耐火性です。建築基準法で定められた耐火基準を満たすため、特に防火性能が求められる特殊な製品に添加されました。主な製造期間は1970年(昭和45年)から1986年(昭和61年)までです。

流通量と使用箇所

上記期間に製造された全石膏ボードのうち、アスベスト含有材は全体の1%弱と推定されています。また、これらの特殊製品は、一般住宅で使われることは稀であったと報告されています。

「低頻度・限定的」という情報に潜む罠

一見するとリスクが低いように思える事実こそが、安易な判断につながる罠となります。

流通時期だけで判断してはならない

かつて、流通時期をアスベスト不含有の指標にしていた時代がありました。しかし現在、2006年9月1日より前に着工された建物は、原則として調査を行う義務があります。その背景には、1986年に製造が中止された後も市場在庫が使用された可能性や、近年の再生石膏ボードのリスクが挙げられます。再生石膏ボードは、解体現場での分別不徹底などにより、微量のアスベストがコアに混入するリスクが指摘されているためです。

「1%未満」「使用場所が限定されている」だから大丈夫、ではない

流通量が少なく使用場所も限られている、という事実は、「この現場は大丈夫」という安易な判断を生む危険性があります。しかし、一度見落としが発生した場合の健康被害や法的責任の重さは、他のアスベスト建材と何ら変わりません。

以上の理由から、法律に則った有資格者による事前調査が絶対的に必要なのです。

アスベスト含有石膏ボードの危険性

次は、アスベスト含有石膏ボードの危険性についてです。

健康リスク

アスベスト繊維は極めて細かく、吸い込むと肺がんや中皮腫といった深刻な病気を、数十年という長い潜伏期間を経て引き起こす可能性があります。

危険性レベル

石膏ボードは、非飛散性の「レベル3」に分類されます。通常の状態では飛散しにくいですが、解体や改修作業で切断・破砕すると、途端に危険な繊維が空気中に飛散します。

含有箇所

アスベストは、主にボードの表面と裏面を覆う「板紙」に含有しています。しかし、一部製品では石膏コア自体に直接含有されているケースも存在するため、建材全体に注意を払う必要があります。

見落としがちな複合汚染

石膏ボードの調査で忘れてはならないのが、それに付随する塗料や壁紙、接着剤や捨て貼り(二重張り)等の他の建材です。石膏ボード自体が不含有でも、これらの建材にアスベストが含まれているケースは少なくありません。調査は、壁や天井を構成する全ての部材を評価する視点が不可欠です。

アスベスト含有石膏ボードの見分け方【実践調査編】

アスベスト含有石膏ボードの見分け方【実践調査編】

調査は必ず有資格者で

これから紹介する知識は、あくまで専門家が確認しているポイントを参考に、ご自身の作業のあたりをつけるためのものです。本記事の情報を基に、無資格者が自己判断で調査や工事を行うことは極めて危険であり、法律違反です。必ず「建築物石綿含有建材調査者」等の資格を持つ専門家に調査を依頼してください 。

ステップ1:書類でアタリをつける(書面調査)

調査の第一歩は、設計図書や仕様書といった書類の確認です。

築年数からリスクを判断する

まずは竣工年を確認します。前述の通り、1970年~1986年は特にリスクが高い期間です。

設計図書や仕様書から製品名を探す

書類に使用された建材の製品名やメーカー名が記載されていれば、後の目視調査やデータベース照合の強力な手がかりとなります。

ステップ2:現物を見て特定する(目視調査)

書類で得た情報を基に、現場で現物を確認します。この時、石膏ボードの裏面に印字された情報は、アスベスト含有の有無を判断する重要な鍵となります。

防火材料認定番号による識別

【安全シグナル】認定番号の頭文字が「NM-」や「QM-」で始まる製品は、2002年5月17日以降に認定されたものであり、アスベスト不含有と判断できます。

【要注意シグナル】 上記以外の番号(例:「不燃 第XXXX号」など)が表示されている場合は、アスベスト含有の可能性があります。

JISマークによる識別

【安全シグナル】 現行のJISマークが表示されている製品は、アスベスト規制後の2008年4月1日以降に表示が義務化されたものであり、アスベスト不含有と判断できます。

【要注意シグナル】 旧JISマークが表示されている製品は、アスベストが使用されていた期間に製造された可能性があります。石膏ボードの規格である「JIS A 6901」の表示と共に旧マークがある場合は、要注意と判断します。

製品情報からの識別

メーカー名、製品名および厚みなどから、アスベスト含有の有無を推測します。

【早見表】アスベスト含有が確認されている主な石膏ボード製品

製造会社 製品名 製造期間 防火材料認定番号 含有箇所 含有率(重量%)
吉野石膏㈱ 準不燃タイガートーン(不燃紙張り) 1970-1984 第2006号, 第2019号 裏打ち紙 約 1%
吉野石膏㈱ ニュータイガートーン(不燃紙張り) 1975-1984 第2010号, 第2014号 裏打ち紙 約 1%
吉野石膏㈱ 15mm厚ガラス繊維網入り石膏ボード 1976-1986 なし コア 約 4.5%
吉野石膏㈱, チヨダウーテ㈱, 日東石膏ボード㈱ 9mm厚アスベスト石膏積層板 1972-1979 第1013号 表面紙 約 1.5%
9mm厚不燃石膏積層板 1979-1986 第1004号 表面紙 約 1.5%
チヨダウーテ㈱ エースボード (エースウォール) 1977-1981 (個)第1425号 表面紙 約 1.5%

出典: 一般社団法人石膏ボード工業会等の公表資料、国立環境研究所「廃石膏ボードの取り扱いについて」

ステップ3:判断できないときは、みなしか科学の目(分析調査)

書面や目視調査で含有の有無が明確に判断できない場合は、「含有あり」とみなして対策を講じるか、分析して「含有なし」を科学的に証明するかの二択となります。


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安全な撤去と処分の進め方【対策編】

安全な撤去と処分の進め方【対策編】

安全な撤去作業のルール

飛散させないための基本原則作業前に除去対象を水や飛散防止剤で十分に湿潤化し、手作業で丁寧に取り外すことが基本です 。電動工具による切断などは原則として禁止されています。

作業の流れ:撤去作業は、以下の流れで行います。

  1. 計画・報告: 作業手順、飛散防止措置等を定めた計画を作成します。一定規模以上の工事では、電子システムでの事前調査結果報告が義務付けられています 。
  2. 体制構築: 作業者への特別教育を実施し、「石綿作業主任者」を選任します 。
  3. 隔離・表示: 作業区域をシート等で隔離し、事前調査結果を掲示します。
  4. 湿潤化: 散水等による建材の湿潤化を行います。
  5. 手ばらしによる除去: 釘やビスを手作業で外し、原形のまま除去します。
  6. 梱包: 他の廃棄物と区別し、梱包の上「石綿含有産業廃棄物」等の表示をします 。
  7. 確認: 除去が完全に行われたことを確認します。
  8. 清掃: HEPAフィルター付き掃除機等で作業場所を清掃します。

法律に沿った適正な処分

排出事業者(元請業者)は、許可を持つ業者に処理を委託し、産業廃棄物管理票(マニフェスト)で最終処分までの一連の流れを管理します 。マニフェストは適正処理を証明する重要な書類であり、5年間の保存義務があります。

まとめ

まとめ

石膏ボードのアスベスト問題は、存在の可能性の低さから軽視されがちですが、一度飛散すれば重大な健康被害につながる深刻なリスクです。これに対応するため、以下のポイントを心がけましょう。

「かもしれない」と多角的に疑う意識を持つ: 流通時期だけで安易に判断せず、法に基づいた調査を行う。また、石膏ボードだけでなく、接着剤や二重張りの内側など、複合的なリスクを常に念頭に置く。

自己判断をせず、専門家のプロセスを理解する: 調査は必ず有資格者に依頼する。そして、その調査やサンプリングが、なぜそのように行われるのか(層構造の維持など)を理解し、自身の作業に活かす。

法令を遵守し、安全を最優先する: 除去から処分、マニフェスト管理まで、法に定められた手順を最後まで遵守する。

アスベスト対策は、関わるすべての人々が正しい知識と責任を果たすことで成り立ちます。もし現場で判断に迷う場合は、安易な判断を下す前に専門家へ相談することが賢明です。安全な未来のために、確実な知識と行動を心がけましょう。

なお、「石綿の窓口」では、知識が豊富な専門家がこれらの問題にスピーディーに対応します。まずは無料見積りをご利用ください。

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