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自由研削といしの取替え等の業務に係る特別教育の重要性と災害事例から学ぶ 作業環境と安全意識

公開日:2025年8月27日 更新日:2025年8月27日

自由研削といしの取替え等の業務に係る特別教育の重要性と災害事例から学ぶ 作業環境と安全意識

自由研削といしの取替え等の業務に係る特別教育の重要性と災害事例から学ぶ 作業環境と安全意識

自由研削といし(グラインダー砥石)は、金属加工や建設現場で欠かせない工具ですが、高速回転する危険な機械です。砥石の破裂による死亡事故や重傷事故が生じており、労働災害の中でも特に危険を伴う作業のひとつです。

労働安全衛生法では、自由研削といしの取替えや試運転の業務を担う場合、事業者は労働者に対して特別教育を実施することが義務付けられています。ただし、なぜこの特別教育が必要なのか、その重要性を十分に理解している方は少ないのではないでしょうか。

この記事では、自由研削といしの取替え等の業務に係る特別教育の重要性について詳しく解説します。実際に発生した災害事例から原因を分析し、労働災害を防止するために必要な対策もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。


CIC自由研削といしの取替え等の業務に係る特別教育

目次

自由研削といしの取替え等の業務に係る特別教育の重要性

自由研削といしの取替え等の業務に係る特別教育の重要性

自由研削といしは、金属のバリ取りや溶接部の仕上げなど、製造業や建設業の現場で幅広く使用されています。ハンドグラインダーや床上用研削盤など、様々な形態の研削機械で使用され、その回転数は毎分数千回転から1万回転を超えるものまであります。

高速で回転する砥石は、わずかな亀裂や取付不良があると遠心力によって破裂し、その破片は弾丸のような速度で飛散するため非常に危険です。具体的には後述しますが、実際に災害事例も発生・報告されています。

労働安全衛生規則第36条第1号では、研削といしの取替え又は取替え時の試運転の業務を特別教育の対象として定めています。事業者が特別教育を実施せずに労働者を従事させた場合、罰則が適用される恐れがあります。

自由研削といしの取替え等の業務に係る特別教育は、自由研削用といしに関する安全作業で必要な知識と技術力を学ぶ講習です。労働災害を防止するためにも、事業者は必ず作業に着手する労働者に受講してもらいましょう。

自由研削といしの取替え等の業務に関する代表的な災害事例

自由研削といしの取替え等の業務に関する代表的な災害事例

ここからは、自由研削といしに関連する代表的な災害事例を4つご紹介します。

  • 床上用研削盤でといしが破裂して作業者が死亡
  • 規格に合わない砥石を使用したハンドグラインダーで砥石が破裂
  • 手持ち式グラインダーで鋼板切断面のバリ取り作業中、回転中の研削といしが当たり死亡
  • CNC円筒研削盤での砥石が破裂して作業者が負傷

過去の事例から学び、同様の事故を防ぐための対策を考えていきましょう。

事例1:床上用研削盤でといしが破裂して作業者が死亡

最初の事例は、床上用研削盤でといしが破裂して作業者が死亡した事故です。

項目 詳細内容
発生状況 被災者は、鋳物製品を、床上用研削盤を使って研削加工していたところ、といしが破裂し、といしの破片が被災者の胸部を直撃した。破裂音を聞いた同僚が、音が発生した方を見ると、被災者が倒れており、直ちに救急搬送されたものの、搬送先病院にて胸腔内出血等のため死亡した。
事故の原因 ・研削盤の最高限度の周速度以下の最高使用周速度の研削といしを使用していたこと
・研削盤を用いた研削作業において、覆いに調整片が取り付けられていない不安全な状態で、作業を行わせたこと
・当該作業に関する安全作業標準を作成せず、作業を行わせたこと
・といしの交換業務に関する特別教育を行っていなかったこと
・研削盤について、作動不良が発生した場合には修理・補修を行っていたものの、定期的な点検、及び研削といしの回転数の測定等を行っていなかったこと
結果 砥石の破片が胸部を直撃し、胸腔内出血により作業者が死亡した。
学べるポイント ・研削盤の最高限度の周速度以上の最高使用周速度の研削といしを使用すること
・研削盤に調整片が取り付けられた覆いを設け、研削に必要な部分におけるといしの両面と覆いとの間隔を10㎜以下に調整し、常に有効な状態で使用させること
・研磨作業に関する安全作業標準を作成し、関係する労働者に周知・徹底させたうえで作業を行わせること
・研削といしの交換に関する業務は、特別教育修了者に行わせること
・研削といしについては、作業開始前及びといし交換後には、法令で定められた試運転を行うこと
・研削盤については、定期的点検を行うと共に、研削といしの回転数の測定等を行うこと

参考:職場のあんぜんサイト:労働災害統計

事例2:規格に合わない砥石を使用したハンドグラインダーで砥石が破裂

次は、液面警報フランジ内側の研磨作業中、規格に合わない砥石を使用したハンドグラインダーで砥石が破裂した事例です。

項目 詳細内容
発生状況 被災者は内径95ミリのフランジ研磨のため、直径38ミリ用ハンドグラインダーに直径65ミリの砥石を取り付けた。砥石交換後の試運転は行わず、覆いも設けていなかった。作業終了後、スイッチを切った際に砥石が4つに破裂し、破片の1つがくるぶしに飛来して負傷した。
事故の原因 ・覆いを設けなければならなかったにもかかわらず、砥石に覆いが設けられていなかった
・「研削といしを取り替えたときには3分間以上試運転をしなければならない」旨定められているが、作業開始前の試運転は行われていなかった
・当該ハンドグラインダー規格に合わない砥石を使用した結果、砥石の最高使用周速度を大きく超え、砥石に過剰な負荷がかかったこと
結果 破裂した砥石の破片が作業者のくるぶしに当たり負傷。幸い軽傷で済んだが、部位によっては重大な事故につながる可能性があった。
学べるポイント ・ハンドグラインダーを使用する際は、規格に合わない砥石を使用しないこと。また、ハンドグラインダーの規格に合わない砥石を使用することがないようにチェック体制を確立すること
・ハンドグラインダー、研削砥石等に関する知識、危険性等に関する安全衛生教育を再度行うこと

参考:職場のあんぜんサイト:労働災害統計

事例3:手持ち式グラインダーで鋼板切断面のバリ取り作業中、回転中の研削といしが当たり死亡

3つ目は、鋼板の切断面のバリ取り作業中に手持ち式グラインダーが跳ね、回転中の研削といしが作業者に接触し死亡した事例です。

項目 詳細内容
発生状況 作業者Aは一人で鋼板(6m×2m、厚さ4cm)のバリ取り作業を行っていました。グラインダーが跳ねた拍子に回転中の研削といしが体に当たり、病院搬送後、数日後に死亡した。
被災時、作業服と安全靴、軍手は着用していましたが、保護めがねなどその他の保護具は使用していなかった。作業台周囲には材料や工具が積み上げられ、作業スペースは最も狭い箇所で幅70cm程度しかなく、グラインダーが跳ねた際に回避できなかった。また、この工場では安全衛生教育を実施していなかった。
事故の原因 ・作業場所が狭かったこと
・回転中の研削といしとの接触を防ぐ個人用保護具を使用していなかったこと
・安全衛生教育を行っていなかったこと
結果 回転中の砥石が身体に接触し、作業者が死亡。工場の安全管理体制の見直しが必要となった。
学べるポイント ・作業場所の整理整頓等を実施し、十分な広さの作業場所を確保すること
・安全な作業に必要な個人用保護具を定め、作業者に使用させること
・作業者に安全衛生教育等を実施すること

参考:職場のあんぜんサイト:労働災害統計

事例4:CNC円筒研削盤での砥石が破裂して作業者が負傷

4つ目は、CNC円筒研削盤での砥石が破裂し、作業者が負傷した災害事例です。

項目 詳細内容
発生状況 作業者Aは別の作業者が取り付けた新しい砥石を研削盤に装着し、5分間の試運転を実施後、ドレッシング作業を開始しました。仕上げ研削中に突然砥石が破裂し、飛散した破片により軽傷を負った。
砥石覆いは砥石とダイヤモンド工具の当たりを確認するため開けられており、破片が飛散する原因となりました。作業者Aは特別教育を修了していたが、災害後の調査で、フランジと砥石の間に金属片が挟まっていたこと、フランジ締め付けに規定のトルクレンチではなく六角レンチとハンマーを使用していたことが判明した。
事故の原因 ・フランジと砥石の間に金属片の異物がはさまっており、その部分に集中した負荷が加わり、砥石に集中応力を発生させたこと
・フランジと砥石の締めつけには、作業標準で規定されていたトルクレンチを使用せずに六角レンチとハンマーを使用したため、複数のボルトに加わるトルクにむらを生じ、砥石に部分的に強い圧力が加わったこと
・砥石覆いが開いたままであったこと
結果 破裂した砥石の破片により作業者が軽傷を負った。特別教育を修了していた作業者でも事故は起こることが明らかになった。
学べるポイント ・適切な締め付けなどを行うこと
・砥石の覆いを正しく使用すること

参考:職場のあんぜんサイト:労働災害統計

事故の背景・原因分析

事故の背景・原因分析

自由研削といしによる災害事例で共通するパターンとして、「砥石の危険性に対する認識不足」と「基本的な安全ルールの軽視」が挙げられます。

多くの事故で見られる共通要因は、機械と砥石の不適合です。ハンドグラインダーに規格外の砥石を取り付けたり、最高使用周速度を超える条件で使用したりすることで、砥石に過大な負荷がかかり破裂、労働災害につながっています。

また、労働安全衛生規則で義務付けられている砥石交換後3分間以上の試運転を、作業効率を優先するあまり実施しなかったケースもあります。試運転は砥石の亀裂や取付不良を発見する重要な工程であり、省略するのは極めて危険です。

ヒューマンエラーの観点から見ると、「慣れによる油断」が大きな原因といえるでしょう。経験を積んだ作業者が「今まで大丈夫だった」「自分は経験があるから」と根拠のない経験則に頼り、安全手順を軽視した結果、労働災害につながる恐れがあります。

特に注意すべきは、特別教育を修了していても事故が発生している点です。教育を修了したから大丈夫と安心するのではなく、学んだ知識を日々の作業で意識・実践し、なおかつ定期的な再教育や現場での継続的な安全指導が欠かせないといえるでしょう。

自由研削といしの取替え等での災害を防ぐための現場対策と教育

自由研削といしの取替え等での災害を防ぐための現場対策と教育

自由研削といしによる労働災害を防ぐためには、作業者自身の努力だけでなく、事業者側の積極的な取り組みも必要不可欠です。

改善点として重要となるのは、適切な砥石の選定と管理体制の確立です。使用する機械に適合した砥石を選定し、最高使用周速度を厳守することが基本となります。加えて、作業前の外観検査や打音検査による点検、作業環境の整備も欠かせません。十分な作業スペースの確保や砥石の覆い・調整片の適切な設置、保護具の着用徹底も大切です。

また、管理側の責任として、事業者には労働安全衛生法に基づく安全管理体制の構築が求められます。特に労働安全衛生規則第36条により、研削といしの取替え等の業務に係る特別教育の実施が義務付けられています。教育を受けさせる義務が事業者にあることを認識し、未受講者を作業に従事させないよう徹底しなければなりません。

CIC日本建設情報センターでは、25年以上の実績を持つWeb講座を提供しております。顔認証システムによる確実な受講体制と、PDF版・カード版の修了証発行で現場のニーズに対応した内容となっておりますので、ぜひ利用をご検討ください。

まとめ

まとめ

この記事では、自由研削といしの取替え等の業務に係る特別教育の重要性について、実際の災害事例を踏まえながら解説しました。

自由研削といしは高速回転する危険な工具であり、砥石の破裂による死亡事故や重傷事故が過去にも生じています。事故の原因の多くは、基本的な安全ルールの軽視や知識不足です。

事業者には労働安全衛生法に基づく自由研削といしの取替え等の業務に係る特別教育の実施義務があり、作業者の命と健康を守る責任を伴います。作業者自身も砥石の危険性を正しく理解し、定められた作業手順や保護具の着用を徹底することが大切です。

CIC日本建設情報センターでは、自由研削といしの取替え等の業務に係る特別教育のWeb講座を提供しています。受講者がモチベーションを維持しながら効率的に学習できる内容となっておりますので、ぜひご活用ください。


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