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【アスベスト含有屋根材】見積もり依頼の確認項目とリフォーム方法、健康リスクについて解説

公開日:2025年10月31日 更新日:2025年10月31日

【アスベスト含有屋根材】見積もり依頼の確認項目とリフォーム方法、健康リスクについて解説

【アスベスト含有屋根材】見積もり依頼の確認項目とリフォーム方法、健康リスクについて解説

年々厳格化されるアスベスト(石綿)法規制への正確な対応は、企業の信頼性とコンプライアンスを維持する上で不可欠な要素です。そして現場では、法的要素に加え、経済的に最適な方法の選択が常に求められます。

本稿では、石綿関連業務に携わる皆様が、現場での最適な判断と顧客への最適な提案を行えるよう、アスベスト含有屋根材の具体的な見積もり方から、法規制に準拠した撤去・リフォーム方法などを解説します。


CIC石綿の窓口

目次

アスベスト(石綿)とは何か?

アスベスト(石綿)とは何か?

アスベスト(石綿)は、耐熱性、耐久性に優れた天然の繊維状鉱物です。その優れた特性から、かつて屋根材においては、スレート材やセメント瓦の補強材として広く利用されてきました。

しかし、微細な繊維の吸引による肺がんや悪性中皮腫といった深刻な健康被害が明らかになり、現在では原則として製造・使用が全面的に禁止されています。

アスベスト含有屋根材の見積もり方

アスベスト含有屋根材の見積もり方

解体・改修工事の初期段階でアスベスト含有の可能性をスクリーニング(振るい分け)することは、その後の工程とコストを左右します。以下に、そのポイントを解説します。

ポイント1建てられた年代で見積もる

法律によるアスベスト規制の変遷が、含有の有無を見積もる有力な手がかりとなります。

  • 2006年9月1日以降:石綿の含有量が重量の0.1%を超える製品の製造・使用が原則禁止されたため、この時期以降の建材にアスベストが使用されている可能性は極めて低いと判断できます。
  • 2004年10月1日〜2006年8月31日:石綿を1%超含有する建材の製造・使用が禁止されたため、石綿含有のリスクは低下します。しかし、0.1%超〜1%以下の製品が使用された可能性は残ります。
  • 2004年9月30日以前:アスベスト含有屋根材が広く流通しており、含有の可能性が非常に高いと考えられます。

ポイント2屋根材の種類で見積もる

含有の可能性がある屋根材は限られます。

含有の可能性が高い屋根材

  • 住宅屋根用化粧スレート(「コロニアル」「カラーベスト」など)
  • 波形スレート
  • セメント瓦

原則として含有していない屋根材

  • 粘土瓦(陶器瓦、いぶし瓦など)
  • 金属屋根材(ガルバリウム鋼板など)※ただし下にスレートが隠蔽されている可能性あり

見落としがちな建材

  • 防水シート(アスファルトルーフィング)
  • 接着剤・シーリング材

ポイント3メーカーや製品名で見積もる

設計図書が残っている場合、メーカーや製品名から含有情報を確認できます。

  • メーカーの情報公開:ケイミュー(旧クボタ)やニチハなどの大手メーカーは、ウェブサイトで過去製品のアスベスト含有情報を公開しています。
  • 公的データベースの活用:国土交通省・経済産業省が提供する「石綿(アスベスト)含有建材データベース」は、製品名やメーカー名から含有情報を検索できる有用なツールです 。ただし、このデータベースは「含有が確認された建材」のリストであり、検索でヒットしないことが「非含有の証明」にはならない点に注意が必要です。

専門家による調査の重要性

上記はあくまで初期スクリーニングです。最終的な判断は、法に定められた手順に基づかなければなりません。特に、2023年10月1日以降、建築物の解体・改修工事における事前調査は、「建築物石綿含有建材調査者」などの有資格者が行うことが法的に義務付けられています。

アスベスト屋根のリフォーム方法

アスベスト屋根のリフォーム方法

リフォーム方法には、既存の屋根を覆うカバー工法と、既存の屋根を除去して新たに屋根を構築する葺き替え工法の2種類があります。

カバー工法(重ね葺き)

既存のアスベスト屋根を撤去せず、上から新しい軽量な屋根材を被せる工法です。

メリット

  • 初期コストの抑制:アスベストの撤去・処分費用が不要なため、葺き替えに比べ費用を大幅に抑えられます。
  • 飛散リスクの低減:施工中にアスベスト含有材を直接扱わないため、飛散リスクを最小限にできます。
  • 機能性の向上:屋根が二重になり、断熱性や遮音性が向上します。

デメリット

  • 問題の先送り:アスベストが建物内に残存します。将来の解体・改修時には、より厳格化された法規制や高騰した処分費用に直面する可能性があります。
  • 下地の確認・補修が困難:既存屋根の下にある防水シートや野地板の劣化状態を確認できず、見えない部分で腐食が進行するリスクが残ります。

葺き替え工法

既存のアスベスト屋根材を完全に撤去し、新しい屋根を構築する工法です。

メリット

  • 有害物質の完全な除去:将来にわたる健康リスクと法的責任を解消します。
  • 下地の全面的な点検・補修:野地板や防水シートの状態を完全に確認・補修でき、屋根全体の信頼性を高められます。
  • 資産価値の向上:アスベストフリーの建物として資産価値の維持・向上に繋がります。

デメリット

  • 高額な初期コスト:アスベストの撤去・運搬・処分費用が上乗せされるため、初期投資は高額になります。
  • 施工中の飛散リスク管理:厳格な安全管理と飛散防止措置が不可欠です。

どちらを選ぶべきか?

短期的なコスト抑制を最優先する場合や、近い将来に解体予定がある場合はカバー工法が合理的かもしれません。しかし、長期的な居住を想定し、将来の負債を残さず資産価値を最大化したい場合には、葺き替え工法が最適な選択となります。

アスベスト屋根の撤去と処理方法

アスベスト屋根の撤去と処理方法

屋根材の多くは飛散性が比較的低い「レベル3」に分類されますが、不適切な作業は飛散リスクを高めます。環境省や厚生労働省のマニュアル等に基づき、作業を行う必要があります

なお、以下はレベル3建材の撤去作業の概要です。レベル1および2では、計画届や負圧隔離が必要であるなど、別途手順が必要です。

撤去作業の流れと注意点

  1. 計画・報告:作業手順、飛散防止措置等を定めた計画を作成します。床面積80㎡以上の解体や請負金額100万円以上の改修工事等では、アスベストの有無にかかわらず「事前調査結果報告」の電子報告が義務付けられています。
  2. 体制構築:作業者への特別教育を実施し、「石綿作業主任者」を選任します。
  3. 隔離・表示:作業区域をシート等で隔離し、事前調査結果を見やすい場所に掲示します。
  4. 湿潤化:除去に先立ち、散水等で屋根材を十分に湿らせ、粉じん飛散を抑制します。
  5. 手ばらしによる除去:釘やビスを手作業で外し、屋根材を「原形のまま」取り外します。電動工具による切断や破砕は原則禁止です。
  6. 梱包:除去した屋根材は飛散しないよう梱包し、他の廃棄物と区別します。梱包物への「石綿含有産業廃棄物」表示が望ましいとされています。
  7. 確認:有資格者が、除去が完全に行われたことを確認します。
  8. 清掃:作業終了後、高性能真空掃除機(HEPAフィルター付き)で作業場所を徹底的に清掃します。

適切な処理方法と法規制

除去された屋根材は「石綿含有産業廃棄物」として、廃棄物処理法に基づき適正に処理しなければなりません。

  • 処理方法:管理型最終処分場での埋立処分、または認定施設での溶融・無害化処理を行います。
  • 運搬:「石綿含有産業廃棄物」の収集運搬許可を持つ業者に委託し、排出事業者(元請業者)の責任においてマニフェストを交付し、最終処分まで管理する義務があります。

アスベスト屋根の健康リスクとは?

アスベスト屋根の健康リスクとは?

屋根材に使用されているレベル3の建材は飛散しにくいため、通常の使用状態であれば健康リスクは低いといえます。

しかし、大阪市立環境科学研究センターの研究報告などにより、長年の酸性雨や紫外線によってセメント成分が劣化し、表面にアスベスト繊維が露出することが指摘されています 。また、台風などの災害等による破損、高圧洗浄等によっても石綿が飛散するという報告もあります。

そして、アスベスト繊維の吸入は、20〜50年という長い潜伏期間を経て、悪性中皮腫や肺がんなどの致死性の高い疾患を引き起こす可能性があります。

アスベスト調査から工事まで

アスベスト調査から工事まで

アスベスト調査

調査プロセスは以下の通りです。なお、以下のプロセスは、専門家が行う必要があります。

  1. 書面調査:設計図書等でアスベスト含有の可能性がある建材をリストアップします。
  2. 現地での目視調査:書面情報を基に、現地で実際の建材を確認します。
  3. 検体採取と分析調査:書面・目視で判断できない場合、「アスベスト含有とみなす」か、検体を採取して専門機関で分析します。

調査結果の解釈と次のステップ

  • 含有あり/みなしの場合:本稿の「3. リフォーム方法」「4. 撤去と処理方法」に従い、適切な飛散防止措置を講じて工事を実施します。
  • 含有なしの場合:通常のリフォーム・解体工事として進めることができます。

まとめ

まとめ

アスベスト含有屋根材への対応は、厳格化する法規制と専門知識が交差する複雑な業務領域です。有資格者による正確な事前調査を起点とし、法令に準拠した安全な撤去・処理、そして顧客の将来を見据えたリフォーム工法の提案が不可欠です。コンプライアンスを遵守し、顧客と作業員の安全を確保し、かつ経済合理性のある提案を行うために、本稿で解説した知識をぜひご活用ください。

なお、これらの複雑な業務は、専門的な知見と煩雑な手続きを伴い、担当者にとって大きな負担となり得ます。そのような課題をワンストップで解決するのが、CIC日本建設情報センターの「石綿の窓口」です。有資格者による正確な調査・報告書作成から、解体や除去にかかわる優良業者の紹介まで、様々なニーズに対応可能です 。

相談と見積は無料で行っております。業務の効率化とリスク管理、そして何より安全を確保するために、ぜひ一度ご活用ください。


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