
近年、ニュースやSNSで「環境保全」という言葉を耳にする機会が増えました。地球温暖化・異常気象・生物の絶滅・海洋汚染など、私たちの生活は今、さまざまな環境問題に直面しています。こうした状況に対して、環境保全への関心が高まっている方も多いのではないでしょうか。
環境問題は、遠い国で起こっている出来事ではなく、私たちの身近な暮らしと密接に関わっています。この問題に真剣に向き合い、未来に美しい地球を残すためには、一人ひとりが環境保全の知識を身につけ、行動することが大切です。
この記事では、そもそも環境保全とは何か、環境保護との違い、そして私たちが取り組むべき代表的な環境問題について、分かりやすく解説します。さらに、特に環境に大きな影響を与える建設業界の役割や、環境保全に貢献できる仕事や資格についてもご紹介していますので、ぜひ最後までお読み下さい。

環境保全とは

環境保全とは、人間が自然と共生し、健全な環境を維持していくための活動全般を指します。大気や水、土壌などの汚染を防いだり、森林や動植物といった自然を維持したりすることが代表例として挙げられます。
重要なのは、単に汚染された場所を元に戻すだけでなく、これ以上悪化させないための予防的な取り組みも含まれる点です。私たちの経済活動や生活様式が環境に与える負荷を最小限に抑え、持続可能な社会を築いていくことが、環境保全の最終的な目標といえます。
例えば、省エネルギー機器の導入・再生可能エネルギーの利用・廃棄物の削減・リサイクル推進といった日々の取り組みは、すべて環境保全につながります。
環境保全と環境保護の違い

「環境保全」と「環境保護」はよく似た言葉ですが、ニュアンスに少し違いがあります。
環境保護は、主に「失われつつある自然を元の状態に戻す」という、どちらかというと受動的な意味合いが強い言葉です。絶滅危惧種の保護・汚染された河川の浄化・伐採された森林の再生など、すでに発生した環境破壊を食い止めるための活動を指します。
一方、環境保全は「良好な環境を維持・管理していく」という、より積極的かつ継続的な活動を意味します。未来にわたって健全な自然を維持するために、現状を分析し、予防策を講じるのが主な目的です。
つまり、環境保護は「守る」こと、環境保全は「維持・管理する」ことを重視した言葉といえるでしょう。どちらも大切ですが、持続可能な社会を目指す上では、将来を見据えた「環境保全」の考え方がより重要になってきます。
代表的な環境問題

私たちが直面している環境問題は多岐にわたります。ここでは、特に深刻な影響を及ぼしている代表的な5つの問題を見ていきましょう。
①地球温暖化と気候変動
化石燃料の使用など、人間の活動によって大気中の二酸化炭素(CO2)やメタンなどの温室効果ガスが増加し、地球全体の気温が上昇する現象です。これにより、異常気象・海面の上昇・生態系の破壊といったさまざまな気候変動が引き起こされています。
台風の大型化や、豪雨、干ばつといった災害の頻発は、まさにその一例です。地球温暖化や気候変動の問題は、私たちの暮らしを脅かすだけでなく、食料供給や水資源にも深刻な影響を及ぼしています。
②生物多様性の損失
地球上には、多種多様な生き物が存在し、それぞれが複雑に絡み合いながら生態系を形成しています。しかし、人間活動による森林伐採・開発・乱獲・外来種の持ち込みなどによって、多くの生き物が絶滅の危機に瀕しています。
生物多様性の損失は、生態系のバランスを崩し、最終的には人間の生存そのものを脅かしかねない深刻な問題です。
③海洋プラスチック汚染
適切に処理されなかったプラスチックごみが海に流れ出し、深刻な汚染を引き起こしています。魚や海鳥がプラスチックを誤って食べてしまったり、マイクロプラスチックが食物連鎖に取り込まれたりすることで、生態系全体に影響が及んでいるのです。
海洋プラスチック汚染の問題は、海洋生物だけでなく、最終的には私たちの食卓にも影響を及ぼす可能性があります。
④森林破壊と砂漠化
森林は、地球の酸素供給源であり、CO2を吸収する重要な役割を担っています。しかし、開発や焼き畑、違法伐採などによって、世界中で森林が急速に失われているのが現状です。
森林の減少は、土壌の劣化を引き起こし、土地が乾燥して植物が育たなくなる「砂漠化」を進行させます。これは、地球温暖化を加速させるだけでなく、そこに暮らす人々の生活基盤を奪うことにもつながります。
⑤大気・水・土壌の汚染
工場や自動車から排出される有害物質、農業で使用される化学肥料や農薬、そして生活排水などが、大気や水、土壌を汚染し続けています。こうした汚染は、人々の健康に害を及ぼすだけでなく、植物や動物の生育にも悪影響を及ぼします。
私たちの健全な暮らしを維持するためには、クリーンな大気や水、そして肥沃な土壌を守ることが不可欠です。
環境保全における建設業者の役割

一見すると、建設業は自然を破壊するイメージがあるかもしれません。しかし、現代の建設業は、環境保全に貢献する上で重要な役割を担っています。
環境に配慮した技術の導入
- 省エネルギー技術:建築物の設計段階から、断熱性能を高めたり、自然光や風を効率的に取り入れたりすることで、エネルギー消費を抑える工夫がなされています。
- 再生可能エネルギーの活用:太陽光発電や地熱を利用した建築など、再生可能エネルギーを積極的に取り入れることで、CO2排出量の削減に貢献しています。
- 環境負荷の低い資材の利用:再生材やリサイクル可能な資材を積極的に活用し、廃棄物の削減に努めています。
自然と共生するインフラ整備
生態系保全:河川工事や道路建設においては、動植物の生態系に配慮した工法が採用されています。例えば、魚の遡上を助けるための魚道を設けたり、動物が安全に道路を横断できる橋やトンネルを整備したりするなどです。
緑化事業:公園や街路樹の整備、建築物の屋上緑化などを通じて、ヒートアイランド現象の緩和や生物の生息空間の創出に貢献しています。
建設業は、社会インフラを整備するだけでなく、環境と共存する街づくりを進める上で、なくてはならない存在なのです。
環境保全の知識が活かせる仕事

環境保全の専門知識は、多岐にわたる分野で活かせる強力な武器となります。ここでは、特にその知識が求められる代表的な仕事をご紹介します。
環境コンサルタント
企業や自治体に対し、環境保全に関する専門的な視点からアドバイスを行う仕事です。環境アセスメントの実施・環境マネジメントシステムの構築・省エネルギー化の提案など、その業務内容は多岐にわたります。
企業の環境対応を支援し、持続可能な経営を後押しする、やりがいのある仕事です。
土木技術者・建築家
道路やダム、建物を設計・建設する際に、環境への影響を最小限に抑えるための技術や工法を考案します。環境保全の知識は、自然災害に強い構造物を築く上でも不可欠であり、現代の土木・建築分野における重要なスキルの一つと言えるでしょう。
環境教育専門家
学校や地域社会で、環境問題に関する教育活動を行います。環境保全の重要性を伝え、人々の意識を高め、行動を促す役割を担います。科学的な知識だけでなく、分かりやすく伝えるコミュニケーション能力が求められます。
環境保全の知識が必要になる資格

環境保全に関する知識を体系的に学び、その専門性を証明するための資格も数多くあります。ここでは、特におすすめの資格をいくつかご紹介します。
技術士(環境部門)
環境分野における最高峰の国家資格で、環境問題に関する高度な専門知識と、それを応用する能力があることを国が証明するものです。環境コンサルタントとして活躍する上では、この資格は必須といえるでしょう。

土木施工管理技士
土木工事の現場で、工事全体の指揮・監督を行う国家資格です。環境に配慮した施工計画を立てたり、自然環境を守るための工法を現場で指示したりする上で、環境保全に関する知識は欠かせません。取得すればキャリアアップに直結するだけでなく、環境保全に貢献する技術者としての信頼性を高めます。
環境保全などの専門知識は、ただ覚えるだけでは応用が利きません。独学での勉強に不安を感じているなら、効率的な学習が可能な「CIC日本建設情報センターの対策講座」がおすすめです。

公害防止管理者
工場などから排出される大気・水・騒音・振動などの公害物質を管理するための国家資格です。企業が環境関連の法令を遵守し、公害を未然に防ぐために、公害防止管理者の資格保有者が重宝されています。
おすすめの勉強方法

環境保全に関する知識は幅広く、独学ですべてを網羅するのは難しいと感じるかもしれません。しかし、ポイントを押さえて勉強すれば、効率的に知識を身につけられます。
過去問題を徹底的に解く
資格試験合格を目指すなら、過去問題の分析が最も効果的な方法です。過去問を解くことで、出題傾向を正確に把握し、試験で問われる頻度が高いテーマを明確にできます。
これにより、学習の優先順位がつけやすくなり、効率が格段に向上するでしょう。何度も繰り返して解くことで、問題のパターンや解法が体に染みつき、本番でも自信を持って解答できるようになるはずです。
基礎を固める
環境保全に関する知識は、多くの専門分野にまたがっています。まずは、各分野の基本的な概念を理解することが大切です。
例えば、水質汚染の原因や、大気汚染物質の種類、土壌汚染のメカニズムといった基本原理は、あいまいなままにしないようにしましょう。
オンライン学習を活用する
専門性の高い知識を学ぶ上で、独学は時間と労力がかかりがちです。しかし、オンライン学習を活用すれば、専門の講師から体系的に学ぶことができ、効率的に知識を習得できます。
また、環境問題は常に新しい研究や法改正が行われているため、最新の情報を得るには書籍や資料だけでは心細いでしょう。オンライン学習であれば、最新の内容で学習を進められる上、疑問点があればすぐに解決できるため、忙しい社会人でも無理なくスキルアップを目指せます。
まとめ

この記事では、環境保全の意味から代表的な環境問題、そしてそれらに貢献できる仕事や資格について解説しました。
環境問題は、私たち一人ひとりの日々の行動や選択に深く関わっています。環境保全への意識を高め、学びを深めることは、持続可能な社会を築くための第一歩です。
環境保全に貢献できる仕事や資格は、キャリアを豊かにするだけでなく、地球の未来を守る大きな役割も果たします。特に、「土木施工管理技士」は環境と共生するインフラ整備に不可欠な存在です。環境保全に貢献する専門家を目指すなら、実績豊富な「CIC日本建設情報センターの対策講座」で確かな一歩を踏み出しましょう。
