
2022年度から電験三種の試験が年2回に!変更点と合格する方法を解説
【文系でも大丈夫!】電験三種 法規の学習方法を紹介!
試験の出題傾向と基礎を学ぼう
皆さんこんにちは。CICで講師を務めております、鶴田と申します。
無線資格や電気工事士などの講義で計550回以上登壇し、講師として沢山の経験を積ませていただきました。
また、これまでに70件以上の特許を出願しております。
今回は、電験三種の法規分野を学んでいく上で、文系の方でも合格を目指していただけるような考え方を皆さんに伝授していきたいと思います。
このコラムを読んで、文系の方でも効率よく点数を取れるようになっていただければ幸いです。
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電験三種の電力分野は、理系・文系を問わずに、学習に入りやすい科目になると思います。
一方で、法規は暗記の範囲が他の科目に比較して広いばかりか、実務者に優位な出題も見受けられます(=逆に実務で重要と解釈される法規の問題が出題されます)。
このような背景から、学習を開始しやすい科目でありながら、学習方法を誤ると泥沼化してしまうリスクがある科目になります。
はじめに、電験三種の法規分野の特徴を簡単に整理してみます。
1. | 法規は入りやすいが、範囲が広い | 学習範囲の制限 |
---|---|---|
2. | 実務的な法規が出題 | ニュース報道等のチェック |
3. | 最新の関連法令 | 日頃から関連法令等に興味 |
4. | 計算問題 | 理論のような難解な計算でないので得点源へ |
1.2.3.4.を前提として、関連法令の暗記範囲を限定することが極めて大切になります。
加えて、第二種電気工事士・第一種電気工事士の知識に関しても、電験三種の法規の試験で出題されています。
この観点では、第二種電気工事士・第一種電気工事士から挑戦させている方は、学習量を削減できる可能性が高まります。
4科目について科目別に試験は、マークシートに記入する五肢択一方式になります。
次の表に示す通りに法規は、電気法規(保安に関するものに限る。)及び電気施設管理等の幅広い分野の出題に対応する必要があります。
科目名 | 科目の内容 |
---|---|
理論 | 電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測 |
電力 | 発電所及び変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路(屋内配線を含む。)の設計及び運用並びに電気材料 |
機械 | 電気機器、パワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、電熱、電気化学、電気加工、自動制御、メカトロニクス並びに電力システムに関する情報伝送及び処理 |
法規 | 電気法規(保安に関するものに限る。)及び電気施設管理 |
【出典】第三種電気主任技術者試験 | ECEE 一般財団法人電気技術者試験センター
このように広範の出題に感じられるかもしれません。
電験三種は、”取扱う電圧が5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所を除く)”となっています。
つまり、この電圧・出力の制限は、勉強範囲・出題範囲に限定があることを意味します。
そのために、出題範囲・頻度の高い知識問題に焦点をあてるなど、試験に望む気持ちのハードルを下げる思考法が、合格に近づく効率的な勉強法の獲得につながると思います。
法規分野の学びは、他の科目に比較して、圧倒的に合格率・科目合格率が高い点が下記のグラフから確認できます。
このような試験の性質から、他の分野でひと通りの知識が積み上がった皆様が、最後に取り組む分野とはなにか?
それは、法規分野になります。
なお、2022年から電験三種の試験条件が変更されました。
従来は、1年に1回のみの受験になっていました。
2022年からは、1年に2回の受験のチャンスがあります。
これは、考え方によっては、時間軸で考えた場合の合格の可能性が高まったと理解することができます。
一般財団法人 電気技術者試験センターから公開されている法規分野の過去5年分の過去問を分類・整理すると下表の通りになります。
分類 | 平成29年 | 平成30年 | 平成31年 令和1年 |
令和2年 | 令和3年 | 平均出題数 | 平均出題頻度[%] |
---|---|---|---|---|---|---|---|
電気事業法及び施工令、規則 | 2 | 2 | 2 | 3 | 2 | 2.2 | 16.9 |
電気用品安全法、電気工事士法他 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1.0 | 7.7 | |
電気設備技術基準とその解釈 | 8 | 8 | 7 | 8 | 8 | 7.8 | 60.0 |
設備管理 | 2 | 3 | 3 | 1 | 2 | 2.2 | 16.9 |
(注)分類する上で、複数の知識を融合した問題は、中心になる知識をもとにして分類しています。
この分類・整理された結果から、”電気設備技術基準とその解釈”の出題が圧倒的に多く、60[%]に達することがわかります。
次に、”設備管理”が約17[%]、
続いて”電気事業法及び施工令、規則”が約17[%]の出題になります。
法規分野でありながら、理論分野に比較して取り組みやすく・出題傾向が比較的狭い計算問題で約30%(=約30点)が得点できます。
電気設備技術基準とその解釈は、合格を目指すために避けて通れない学習項目になります。
この電気設備技術基準の出題は、広範囲に渡り、実務従事者であれば解答できる出題もあります。
そのために、受験をためらわれたり、試験会場であきらめたりしてしまうなどマインド(気持ち)のコントロールが難しいかもしれません。
ここで、一つの考え方として、出発点は、”電気事業法”であり、”電気事業法及び施工令、規則”から学習されることをおすすめします。
全ては、電気事業法の第一条からはじまっています。
この法規の知識をベースにして、”電気設備技術基準とその解釈”を確認していただくと頭に残りやすくなると思います。
私は、法規を学習する際に、法規の第一条を大切にしています。
第一条がその他の法令に脈々と考え方が受け継がれていることが理由となります。
第一条 この法律は、電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによって、電気の使用者の利益を保護し、及び電気事業の健全な発達を図るとともに、電気工作物の工事、維持及び運用を規制することによって、公共の安全を確保し、及び環境の保全を図ることを目的とする。
次にお薦めしたいのが、”設備管理”になります。
その理由は、設備管理は、主に計算問題になります。
しかしながら、理論分野を既に学習されている方は、理論分野ほど難易度の高い計算でなく、法規分野の視点での計算問題になるために得点しやすい傾向にあります。
計算問題のみで30%得点が得られます(合格基準60点の約半分)。
お薦めの勉強の進め方は、
の順番で進めることが短時間で高得点につながるものと考えます。
電験三種の法規分野の試験は、基本的に5つの中から解答を1つ選択します。
そのため、サイコロを振ってデタラメに解答を選択しても統計学的には、平均的に20点を獲得できると考えることができます。
このサイコロを振って解答を選択する場合は、完全に知識ゼロの世界でも可能になります。
他方、直感は、”理論的な思考や意識的な観察を介さずに、無意識に意思決定や判断が行われるさま”を指します。
無意識下であるが、過去の知識・経験などが動員されている点が、先のサイコロと大きく異なります。
実際の試験問題では、”多分これだろう”と感じる力になります。
このように意識下で判断できるまで記憶されている知識でなくても、サイコロに比較すると高い確率で解答に到達することができます。
この直感力は、過去問を解けば解くほど、その力が高まってきます。
前述の1.2.の法規分野を学習されたら、過去問10年分を3回程度トライして頂くと直感力が高まってきます(完全な意識下の知識でなくても問題が解けることを体感して下さい)。
勿論、意識下の知識が理想ですが、学習効率を考慮すると無意識下の知識の活用のテクニックも大切になります。
加えて、実際の電験三種の内容にかかわる業務に従事していないと解けない文章問題もあります。
しかし、このような問題が解けなくても合格できますので、ご安心下さい。
法律分野は、範囲が広いために、この無意識下の知識は、私も活用しております(上手くいけば、30点程度の点数の底上げができる場合もあります)。
直感以外の有益なアプローチとして、日常的でも使用されていると思われる”穴埋め”の考え方があります。
この”穴埋め”のアプローチは、皆様がお使いになっている携帯電話・パソコン等の情報通信機器にも広く適用されている誤り訂正技術になります。
例えば、○PPLEという単語があったとします。
○に入る英字はなんでしょうか?AからZの26文字なので、1/26の確率で正解を当てることができます。
しかしながら、この単語は、比較的に身近な単語であるために、意識・無意識を問わずに頭にある可能性があります。
この英単語は、APPLE(りんご)となります。
答えは、○=Aとなります。
この答えに到達するまでに、実はアルファベットAからZまでの文字を○のところに順番に入れていった時に、最もそれらしいアルファベットを選択します。
つまり、高い確率でAPPLEに到達することができます。
このようなアプローチを誤り訂正技術等の技術分野では尤度(ゆうど)と呼ぶ量になります。
この実際の試験では、解答の選択肢を問題文に当てはめて、最も有り得そうな選択肢を選択することは、実は正しい答えを選択した可能性が高まってきます。
この時、どの程度の確率で正しい答えを選択できるかは、過去の経験値等に依存します。
つまり、通信教材によるインプットや過去問のトライした回数や時間(アウトプット)を多くすれば、この尤度の概念を活用した方法が、大きく力となってきます。
電験三種の法律分野は、多くの方に取組みやすい側面がある一方で、暗記すべき範囲が膨大と感じられる方も多くおられると思います。
法律分野は、最初に全体を把握し、特有の言い回しになれることが大切になります。
法体系は、下図の通りになります。三角の上側から下側に向かうに従って具体的な内容になります。
法令を学習する際に最も大切なポイントは、三角形の最上位の法律の”電気事業法”の第一条になります。
なぜならば、”電気事業法”の第一条が、電験三種の法律分野の出題の全ての出発点になるからです。
下記に”電気事業法”の第一条を転記します。
加えて、この第一条は極めて大切な条文であるために、出題される頻度も高くなります(特に大切な部分を赤字に強調しています)。
第一条 この法律は、電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによって、電気の使用者の利益を保護し、及び電気事業の健全な発達を図るとともに、電気工作物の工事、維持及び運用を規制することによって、公共の安全を確保し、及び環境の保全を図ることを目的とする。
【出典】e-GOV法令検索
この条文は、電験三種の法規分野の起点であるばかりでなく、出題もされています。
また、直感で判断する場合のベースになる根本的な方針となると考えられます。
法律分野では、下表の通りに特有の表現が多くあります。
これらの表現に慣れて頂いて正確に条文等を理解して頂くことが大切になります。
用語 | 解説 | 具体的な例 |
---|---|---|
及び、並びに | AND型であり、全て必要になります。 | A、B及びC |
又は、若しくは | OR型であり、どれか1つを含めばよいことをなります。 | A、B又はC |
A以上 | Aを含み、それ以上の数字 | 5以上 整数の場合:5、6、7・・・ |
A以下 | Aを含み、それ以下の数字 | 5以下 整数の場合:・・・3、4、5 |
A未満 | Aを含まず、それ以下の数字 | 5未満 整数の場合:・・・3、4 |
A超える | Aを含まず、それ以上の数字 | 5超える 整数の場合:6、7・・・ |
許可 | 原則、国が禁止している行為等を実施可能なものとする | 例えば、一般送配電事業の送電事業 |
認可 | 国が第三者の行為等に対して、法律の効力を補完する | 例えば、事業用電気工作物の工事計画 |
登録 | 届出後に、国が登録する | 例えば、小売電気事業 |
届出 | 届出を国が受理する | 例えば、発電事業 |
時間 (直ちに、速やかに、遅滞なく) |
法令に基づく対処等の時間間隔 | 直ちに<速やかに<遅滞なく ”直ちに”は、兎に角、間髪入れずに対応し、最も早く対応が求められる。 |
学習範囲が広がる傾向にある電験三種の法規への対策について考えていきます。
如何にして、得点源を確保した最小の労力で合格が勝ち取る戦略が極めて大切になります。
法規分野は、試験に向けた電験三種の学習の前半でなく後半に位置づけられると思います。
この段階では、電気に関する計算力も想像以上に身についています。
そのために、合格点の約半分を確保できる計算問題の力を身に付けることが効率的な戦法になります。
次は、電気事業法関連法令および電気設備技術関連の過去問にトライされることが近道になろうかと考えます。
なぜならば、出題率が高い条文にウェイトを掛けた学習が可能となり、効率的な得点源を確保することが可能になります。
つまり、完全に条文を暗記してから、過去問を解く方法は、法規分野では効率的なアプローチでないと思います。
法規の暗記が、不完全であっても、過去問にトライされながら、法規分野の対策をされる方法が近道と考えます。
学習過程において、できないこと・点数が伸びないことを悲観的に捉えるではなくて、前回より伸びた点・正解できたところを褒めることが学習効果を高めるポイントになろうかと考えます。
電験三種の法規分野は、取り込みやすい分野である反面、上手い学習方法を適用することで効果的な得点源を確保することができます。
意外に感じられるかもしれませんが、まず、計算問題で約30点を確保します。
次に、文章問題で30点以上を確保する戦略が合格への近道になります。
著者も電験三種を受けた際は、法規に関しては未知あるいは記憶にない知識問題が、40%程度ありました。
しかしながら、前述の戦術をフル活用することにより、結果的に合格ラインを大きく上回って合格できました。
最後まで、諦めずに、合格するという気持ちを維持して、先に記載している戦法を参考にして頂ければと思います。
ここまでご一読を頂きましてありがとうございます。
合格されることを祈念しております。